moment 2018年 11/12月号
レクサスを語る

LEXUS ES
レクサスの雄、
待望の日本凱旋

文・渡辺敏史

レクサス唯一のFFセダン車であり、これまで海外専用モデルとして世界で人気を博してきたレクサスES。
静粛性と走りに磨きをかけ、満を持して日本へ——。

上質な快適性と静粛性を極めた新生ES

世界ではRXと並ぶ販売台数を誇るレクサスの筆頭モデル

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さかのぼること約30年前の1989年。レクサスブランドがアメリカでの展開をスタートした際の話だ。

立ち上がりで用意されたのは2種類のセダンで、ひとつはLS、そしてもうひとつがESだった。

車格も内容も価格も、すべてにおいてブランドのフラッグシップとして企画されたLSに対して、ESはひと回り小さい車格ながら、充分な居住性と積載力をもつ。加えて、丁寧に設えた内装や静かで優しい乗り味など、レクサスの世界観を広く伝えるというミッションが課せられたモデルだった。

果たして、その思惑は見事に当たり、ESはSUVブームの最中にあっても、世界中でRXに匹敵する販売台数を誇り、レクサスの数的看板となっている。

7代目となる新型ESは、レクサスの世界戦略の一環として、ハイブリッドへのシフトが勢いづき始めた欧州や、高級車の需要が増え始めた東南アジアなどにも初導入されるなど、レクサスブランドが展開される約90のほぼすべての国で販売されるという。そして日本にも、7代目にして初めて導入される。

レクサス唯一のFFセダン車。日本では高効率のハイブリッドのみで展開

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ESのボディサイズは全長4975ミリ、全幅1865ミリ、全高1445ミリ。GSより少し大きくLSよりはひと回り小さいという佇まいになる。新型LSは全長が伸びたため、駐車場の事情で買い替えが厳しいという話はあると聞くが、何にせよ寸法的には微妙な棲み分けということになるだろう。

が、ここでポイントとなるのはESが前輪駆動=FFを採用するモデルということだ。

後輪駆動=FRに対して、エンジンやミッション、駆動系などのメカものを前方に集中できる分、FFは室内空間を広くとることができる。反面、駆動と操舵を同じ車輪が担う仕組みが仇となって、大パワーを与えづらいという特性的弱点もある。

とあらば、フラッグシップにふさわしいダイナミックなパワーはFRを採るLSに担わせつつ、FFを採るESは上質な車内空間と高効率ハイブリッドとの組み合わせでクレバーなサルーンを目指すことで立ち位置の違いは明確になる……というのがレクサスの意図するところになるだろうか。

GA-Kと呼ばれる最新のアーキテクチャーは、従来型に対して特に剛性向上や低重心化が著しく、それは運動性能だけでなくデザインにも少なからぬ影響を与えている。新型ESの低く構えたそのフォルムは時にLSと見紛うほど迫力があるが、同時にウインドウのレベルも下げられたため、死角の少ない広々とした視界を得られるなど、エンジニアリングが好循環していることは間違いない。

新しいESは仕向地によってはコンベンショナルな4気筒や6気筒のエンジンも用意されるが、日本や欧州などの成熟市場ではハイブリッド1本で展開される予定だ。2.5Lの4気筒と2モーターの組み合わせからなるそれは、システム総合出力で160kWを発揮。車格に対しては充分なパフォーマンスといえるだろう。

7代目ESの乗り味は日本人が待っていた“肌感”かもしれない

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内装のデザインは今日のレクサスのデザインテイストで纏められるが、ダッシュボードからドアインナーにかけて上縁にぐるりと配されるオーナメントは新鮮な印象を与えてくれる。日本刀の研ぎ工程にインスパイアされたというアルミパネルの仕立てなど、自らの国籍を匂わせる演出が加えられているところも好印象だ。ゆとりあるキャビンはESの大きなポイントだが、特に測定値的にはLSと同等以上という後席の広さ、そしてトランクルームの広大さは特筆に値する。

モーターが車体を押し出す走り出しからの静けさはハイブリッドに慣れた身には特段の驚きでもないが、新しいESの静粛性の高さはむしろエンジンが始動してからの方がわかりやすい。始動時のショックはもちろんのこと、加速時もモーターの力を積極的に用いつつ、エンジンの回転数をむやみに高めない制御が施されており、普通に走る限りはエンジンが高々と唸りをあげるという場面が明らかに少なくなった。もちろん遮音性の高さも褒められるべきだが、いかにエンジンの無駄吠えを減らすかという根本的対処が効いている。

新しいバルブシステムを採用したダンパーによって発進~低速域では上位クラスにも勝る上質感を得たという乗り心地は、確かに日常的な乗り方において、時にLSやGSを上回るかというほどのフラットなライド感をみせてくれる。一方でコーナリングは不得手どころか、むしろ持ち前の低重心を活かしてスラスラと山道を駆けるパフォーマンスを有してもいるが、それはこの車にとっては副次的な魅力ということになるだろう。

「積載力」「乗車定員」「航続距離」……と、昔から言われる車が適えるべき三原則を高次元で満たす真面目なサルーンであると同時に、そこにはレクサスならではの華やぎがある。

新しいESは、実は少なからぬユーザーにとって、ピタリと肌に合う車になるかもしれない。

渡辺敏史

わたなべ としふみ

1967年福岡県生まれ。二輪・四輪誌の編集を経て、フリーランスの自動車ジャーナリストに。以来、自動車専門誌にとどまらず幅広いメディアで活躍。その緻密な分析とわかりやすい解説には定評がある。著書に『カーなべ』などがある。

moment 2018年 11/12月号より