Lifestyle

東京の注目レストラン
16年間ミシュランガイド三ツ星に輝く「かんだ」神田裕行氏の世界

2023年、新しくホテルや商業施設のオープンが続き注目の虎ノ門。オフィス街のイメージがある虎ノ門ですが、わざわざ訪れたくなるレストランも数多くあるのをご存知でしょうか。2022年に虎ノ門に移転してきたミシュランガイド三ツ星を16年間取りつづけている日本料理の名店「かんだ」はその筆頭でしょう。現代美術作家・杉本博司氏と手がけたミニマルな店内で繰り広げられる、世界に誇る日本料理店をご紹介します。

Text:Keiko Moriwaki
Edit:Misa Yamaji(B.EAT)

杉本博司氏と考えた現代の料亭の形

世界の美食家が認める日本料理店「かんだ」。ご主人の神田裕行さんが、元麻布で店を構えたのは2004年のこと。

以後、ミシュランガイドの三ツ星を16年連続で取りつづけ、2022年度のミシュランガイドでは、メンターシェフアワードも受賞。これは、後進の育成に力を注ぎ、自身の仕事やキャリアがその手本となる料理人に授与される賞で、指導者としてレストラン業界の発展に貢献していることを称美するというもの。まさに、日本料理を牽引する料理人のひとりといっても過言ではないでしょう。その神田さんが踏み出した新たな挑戦の場がここ。2022年2月、虎ノ門ヒルズレジデンスにオープンした新生「かんだ」です。

ご主人の神田裕行さん、1963年生まれ。徳島県出身。料理店を営む実家で働く父親の姿を見るうち、自然に料理の道へと進んでいたとか。ワインへの造詣も深い。

「端正な日本庭園があって、奥座敷に通されて食事を楽しむといった、しつらえが贅沢な昭和の料亭ではなく、ここでは、現代の料亭、グランメゾンを目指しました。」と神田さん。

彼の目指す現代の料亭とは、より味に重きを置いたスタイルへと進化したものとか。曰く「今は、お刺身にしても、鯛と鮪を盛り合わせにして出すのではなく、鯛なら鯛、鮪なら鮪と別々に提供し、一口、二口と少しずつ楽しんでもらう時代。しかも、熱いものは熱く、冷たいものは冷たく出すという和食の基本を守るには、従来のような座敷と厨房が離れている料亭では無理ですよね。スピード感が必要になってきますから。」それゆえ「かんだ」ではカウンターが最上席。ゲストの目の前で料理を仕立て、出来立ての皿を出すという割烹的要素を組み込みつつ、お客さまの高揚感が高まるよう、しつらえには料亭の贅を取り入れています。それが、神田さんの考える新しい料亭の形なのです。

そして、その“贅”にしても、決して飾り立てたきらびやかなものではなく、「質感を大切にシンプルに仕上げることをよしとする」という確固たる信念が貫かれています。その思いを共有しシャープな美空間を創り出したのは、現代美術作家にして建築家、そして、写真家でもある杉本博司さんです。

入り口からダイニングへと続くアプローチ。床に敷き詰めた玉砂利が露路の風情を漂わせる。

茶室のにじり口を連想させる小さな戸を開ければ、そこは露路。入り口を入ってもなお、石畳のアプローチが続く空間は、店内であって店内ではないような不思議な開放感と静寂さが漂います。待合いで一息つき、ダイニングに進めば、春日杉の銘木を用いたカウンターに思わず目を奪われるはず。床柱には、正倉院伝来の菱形天平古材を配し、すべての家具は特注品と細部にわたり、神田さんと杉本さんの美学が貫かれています。

水打ちをして色の違いが浮き出た石畳の床。春日杉の一枚板のカウンターも清々しく、日本的なスタイリッシュさを感じさせる。

なかでもカウンターチェアは、神田さんのお気に入りだそうで、「椅子の脚の部分は鉄芯に竹を被覆してあり、座面は足袋地。昔から日本人が親しんできた素材を使いました。」とのこと。日本文化のよさを、今一度、振り返り、リスペクトすることで、伝統とモダンが巧みに交錯する独自の世界観を生み出しています。

そのポリシーは、神田さんの料理観ともシンクロしています。23歳で渡仏。若き日、パリの和食店で切磋琢磨するなかで、日本文化の素晴らしさを改めて身に染みて感じた経験が、現在の神田料理の根底には流れています。

“天豆と海老の真薯のお椀“。つなぎはほとんど加えず、天豆と海老の叩き身のみを使用。利尻に比べ、うまみの濃い真昆布を使いつつ、淡麗な味わいに仕上げている。
夏の訪れとともに食膳を飾る“鮎の塩焼き”は、元麻布時代からの名物。徳島県鮎喰川から生きたまま取り寄せている。強火で時間をかけずに焼くのが神田流。

「西洋の料理と違って、日本料理はいわばモノトーンの美味しさだと思うんです。」と語る神田さんが、もっとも大事にしているのは、複雑性を内包したシンプルな料理であること。奥行きのある美味しさです。そのためには上質な食材を用いることが大前提。曰く「料理は、よい食材を見つけだすところから、すでに始まっているんですよ。」最上の食材の特質を見極めその状態に合わせて的確な下ごしらえを施す。目には見えないひと手間をかけることで、よりその味を高める姿勢は、まさに「質感を大切にシンプルに仕上げる」空間とリンクしているといえるでしょう。

〆の白米ご飯のお供のひとつとして提供される“鰻の蒲焼”。鰻は浜松産。「うちでは150〜200gの小ぶりな鰻を使っています。」とは神田さん。ご飯のお供には、鰻のほか桜海老のかき揚げや鮪のづけも選べる。

海外からのVIPも数多い「かんだ」ですが、コロナ禍を経て、やはり、日本人の感性のための日本料理を作っていきたいとの想いを新たにした神田さん。例えば、〆のお食事。「以前は海外の方にもわかりやすいよう丼物を出したりしていましたが、今は炊きたての白いご飯にしています。白米のしみじみとした美味しさは、やはり日本人なればこそ、わかるものでしょう。」

井戸を配した石庭を臨む個室は、ビルの一角とは思えない清閑な趣。個室専用の入り口と化粧室を造ったのも、神田さんのこだわり。グランメゾンの名にふさわしいしつらえだ。
ウェイティングルーム。白い壁に杉本博司さんの代表作「海景」の写真がかけられている。店内にかけられた写真は、全て杉本さんの作品。

70歳を超えたら、杉本さんと今度は料理旅館をやってみたいねーと笑う神田さん。まだまだ夢は尽きることなく、還暦を前にして意気盛ん。しなやかさのなかに円熟味を増してきた神田料理を味わいに訪れてみてはいかがでしょう。

【DATA】
日本料理かんだ

住所:東京都港区愛宕1丁目1-1 虎ノ門ヒルズレジデンシャルタワー 1階
電話番号:03-6459-0176
URL:http://www.nihonryori-kanda.com/
夜予約
ディナーコース:49,500円(税込み・サービス料別)~

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