moment 2018年7/8月号
海外紀行 オーストラリア

悠久の時に
触れる
オーストラリア旅

文/写真・竹沢うるま

1788年、英国人アーサー・フィリップの入港を機に発展したオーストラリア最大の街、シドニー。郊外には国内最古のワイン産地、ハンター・ヴァレーや、ユーカリの森と渓谷美の世界自然遺産、グレーター・ブルー・マウンテンズ地域がある。希有な自然に包まれた最高級リゾートホテル「エミレーツ・ワン&オンリー・ウォルガン・ヴァレー」にも滞在し、他では得がたい特別な体験を——。

WOLGAN VALLEY憧れの“ワン&オンリー”に滞在

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シドニーから車で西へ約3時間。巨大な砂岩と切り立った崖の間の細い道を抜けると、眼下に両側を数百メートルの崖に挟まれたウォルガン・ヴァレーが広がる。谷底はユーカリの森に埋め尽くされ、細く小さな白い線となってウォルガン川が流れる。その先に、目的地である「エミレーツ・ワン&オンリー・ウォルガン・ヴァレー」がある。

入口のゲートからは専用の車でレセプションまで移動するのだが、なかなか到着しない。それもそのはずで、敷地は7000エーカーと広大で、リゾートが占めるのはその1パーセントに過ぎないという。車窓からはカンガルーやワラビーなどの姿が見られ、到着するまでにオーストラリア固有の野生動物を多く目にすることになるだろう。ウォレマイ国立公園とブルー・マウンテンズ国立公園に挟まれたこの地域は、野生動物の宝庫となっており、1836年にかのチャールズ・ダーウィンが滞在し、固有の生態系に驚いたという逸話が残されているが、高名な生物学者ならずとも、この地を訪れたものは誰しもがその動植物の豊かさを前に「進化論」に思いを馳せずにはいられない。

砂岩で造られた暖炉が自然の安らぎを与えてくれる「ヘリテージ・ヴィラ」、開拓時代に実際に使用されていた農具などをリデザインしたオブジェが人の温もりを醸し出すメインホール、心地よい距離感を保ったホスピタリティ。このリゾートがいかに洗練され、上質を求めた結果として生まれたのかはいくらでも例を挙げることができるが、その名の通りワン&オンリーと呼ぶことができる一番の理由は、ウォレマイ・パインが象られたそのロゴにある。

ウォレマイ・パインと後に名付けられることになる謎の植物が世に知られることになったのは1994年のこと。ウォレマイ国立公園内で偶然、ある植物が発見された。それまでに報告されていた地球上に現存するどの種とも違っており、研究の結果、約2億年前に存在していた植物の化石と近似したDNAを持つ古代植物であることが判明した。

このリゾートが掲げる理念のうちのひとつに、何世代にも亘って持続的に上質のサービスを提供していくというものがある。そのためには現状を維持する自然保護という観点ではなく、より前向きな自然の再生を視野に入れた活動をしていかなければならないと考えており、その象徴がウォレマイ・パインのロゴマークなのである。

施設から少し離れたところに、1832年の開拓時代に建てられた「1832 Homestead」と呼ばれる小屋がある。内部には当時使われていた食器や工具などが展示されており、開拓民の厳しい生活を知ることができる。人々は木々を伐採し、放牧しながら、土地を切り開いていった。この時代の開拓とは「自然の侵略」を意味していた。しかし、200年近くの月日が流れた今、「エミレーツ・ワン&オンリー・ウォルガン・ヴァレー」は「自然の再生」という形で、この地を新たに開拓しようとしている。

ベッドの中で鳥の鳴き声に目覚め、ピクニックランチで谷を駆け抜ける風にユーカリの葉の香りを感じ、乗馬では蹄が大地を蹴る振動を感じる。そうやって雄大な自然とともに過ごしていると、この谷が持つ数億年の時間の流れの中に徐々に馴染んでいき、自然の一部として受け入れられるような感覚が訪れる。すると、日々の生活の中で知らぬ間に身についた余分なものが削ぎ落とされ、本来の自分自身に戻っていく。自身が持つ時間軸が人間のものから、自然のものへと移行する滞在。新たなる開拓は、ゲストの心の内側でも起こるのである。

Emirates One & Only Wolgan Valley

Emirates One & Only Wolgan Valley

世界有数のロケーションに展開する最高級リゾートブランド「ワン&オンリー」。食事や飲み物(一部を除く)、1日ふたつのベーシックなアクティビティなどがオールインクルーシブ。約2億年前の地殻変動で生まれた大渓谷で、野生動物や大自然の営みに寄り添う忘れがたい滞在を。

TEL:61-2-6350-1800
URLhttps://www.oneandonlyresorts.com/one-and-only-wolgan-valley-australia/

BLUE MOUNTAINS太古の姿を留める世界遺産の森へ

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「約2億5000万年前、オーストラリア大陸がプレートにぶつかり隆起。全長3500キロに亘るグレートディバイディング山脈を作り出しました。その後、川が数千万年の長い時間をかけて岩石を侵食してこの渓谷ができました」

シドニーから西へ約85キロに位置するブルー・マウンテンズ国立公園。その成り立ちの説明を聞いていると、気が遠くなるほどの時間の長さとスケールに呆然としてしまう。

かつてこの地は炭鉱として開発され、その際に作られた高低差200メートルの鉄道が現在、観光用として使われ、石炭の代わりに多くの観光客を谷底へ運んでいる。最大傾斜は52度と、世界で最も急斜面を走る鉄道はまるで落下するかのように谷底へと下りていく。それは数億年の時間を内包した渓谷内にダイブするような感覚である。

夕方、展望台から渓谷を眺めると、西日がスリー・シスターズと呼ばれる3本の巨大な石柱を黄金色に染め上げていた。かつては“三姉妹”ではなく“七姉妹”だったそうだが、今は残りの石柱は風化し森に呑み込まれてしまっている。ブルー・マウンテンズは、ユーカリの葉に含まれる油分が揮発して青く見えることから名付けられたというが、靄はまるで谷底に蓄積された膨大な時間の波のようである。それがたゆたい、打ち寄せ、今も大地を侵食し呑み込んでいる。訪れる人々は時の大海の前に、自身の存在の小ささを実感し、言葉を呑み、その光景を眺めることになる。

Lilianfels Blue Mountains Resort & Spa

「ダーレーズ レストラン」は、1889年、当時ニュー・サウス・ウェールズ州裁判官だったフレデリック・ダーレー卿が建てた館をそのまま利用したもので、ホテルのアイコン的存在。館の隣には英国式庭園が広がり、ゲストは自由に散策できる。

Lilianfels Blue Mountains Resort & Spa

ジャミソン渓谷を見下ろす高台に建つ5つ星ホテル。ブルー・マウンテンズ屈指の展望台・エコーポイントまで徒歩約5分と好立地の建物は、英国調でクラシカルな趣。スパやプールで身体をケアしたり、暖炉が備わるラウンジでハイティーをゆったり楽しむ寛ぎのひと時を。

TEL:61-2-4780-1200
URLhttps://www.lilianfels.com.au/

ブルー・マウンテンズ近郊の町ルーラのおすすめ施設

Josophan’s Fine Chocolates

店頭では、常時10種類ほどのフレーバーチョコレートが粒売りされる。香ばしさと甘さがマッチしたヘーゼルナッツや、辛味を利かせたチリ入りが人気。

Josophan’s Fine Chocolates

2005年にオープンした人気のチョコレート店。防腐剤や人工香料を一切使用せず、素材にこだわった上質なチョコレートが並ぶ。店の奥に構えた作業場でのチョコレート作りを見ながら、お土産選びが楽しめる。

TEL:61-2-4784-2031
URLhttps://josophans.com.au/
Leura Garage

150gとボリューム満点のスコッチフィレに、マスタードソースが合うステーキサンドと季節のサラダ。いずれもシェアがおすすめ。車の修理工場をリノベーションしたという店内は、たくさんのタイヤや部品が積まれた遊び心あるデザイン。テラス席もある。

Leura Garage

地元の人も多く訪れるカジュアルレストラン。ピザやサンドイッチのほか、パエリアやクスクスといった地中海料理もある。契約農家から直接仕入れた地元産食材にこだわり、ブルー・マウンテンズ産の蜂蜜なども販売する。

TEL:61-2-4784-3391
URLhttp://www.leuragarage.com.au/
iKou

人気商品のひとつ、オーガニック・スクラブの3点セットはお土産にも最適。このほか、ディフューザーやキャンドルといった商品の品揃えも豊富。

iKou

シドニーにも支店をもち、日本語の「憩う」に由来する店名を冠したオーガニックコスメブランド。ユーカリやレモンマートルなど、乾燥に強いオーストラリア固有の植物成分を使ったスキンケア製品が揃う。

TEL:61-2-4784-1777
URLhttps://ikou.com.au/