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LC特別仕様車「PATINA Elegance」

近年、レクサスが重要視する「CRAFTED」というワード。
単なるクラフトマンシップとは異なるらしい、この言葉の意味とは何なのか。
LC特別仕様車に装備されたレザーシートに、その真髄がひそんでいた。
文・渡辺敏史 写真・大井成義

渡辺敏史のレクサス百科
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本誌「レクサスを語る」でおなじみの自動車ジャーナリストが
独自の視点で「レクサスの世界」をレポート。

LC特別仕様車「PATINA Elegance」
  • 国内100台限定販売のLC500h特別仕様車「PATINA Elegance」テレーンマイカメタリック。14,500,000円(税込み)〜。外板色はソニックチタニウム、グラファイトブラックガラスフレークの計3色。

  • テレーンマイカメタリックの外板色と特別仕様車専用内装色「パティーナブラウン」とのコンビネーションがラグジュアリー。革の風合いは、経年変化でより重厚感を増していくことだろう。

最高位の原皮を用いた「L-ANILINE」の魅力

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3万とも4万ともいわれる部品の集合体。大掛かりな工業製品である自動車に、先鋭的なテクノロジーや研ぎ澄まされた匠の技を加えて、工芸的な価値を高めていく。全てはユーザーの驚きや喜びをもった体験のためだ。

このプレミアムブランドならではのプロセスにおいて、レクサスが大切にしているのは、日本ならではの美意識や感性を大切にすることだ。彼らがCRAFTED=クラフテッドと呼ぶこのポリシーは、開発から販売に至るレクサスの全ての現場に貫かれる。
その意向をより鮮明に表現した特別仕様車が、LCとISに設定された。

うち、LCの特別仕様車は「PATINA Elegance」と名付けられる。PATINAには銅の緑青など幾つかの意もあるが、総合的には経年変化の味わい、使い込んで出来る艶みたいなところを指す言葉だと思ってもらえればいいだろう。この特別仕様車において、その艶をもっとも感じさせるポイントとなるのが、L-ANILINE(エル-アニリン)と呼ばれるシート表皮だ。

  • 「こうやって触ると、シートは思いの外硬く感じられると思います。使い込むうちに革が運転者の体型になじみ、しっかり包み込まれるようなホールド感が出てきます。長時間でも運転しやすいと思います」とカラーデザイナーの宍戸恵子さん。

  • L-ANILINEで作られたコースターの断面を例に、L-ANILINEがいかに原皮の風合いを損ねずに塗装がなされているかを説明する宍戸さん(写真右)と興味津々の筆者(写真左)。

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「レクサスで内装用に用いられる原皮の中でも、L-ANILINEに用いられるものは上から1〜2%くらいになります。選定の基準は擦過傷や虫刺され等の跡が少ないこと。跡が大きいと加工時にコートする塗装の厚みがどうしても必要になってしまいます。L-ANILINEはとにかく革のオーガニックな風合いを長く楽しんでいただきたいという想いがありますので、塗装やコートの厚みも可能な限り薄くする。そのためには原皮の品質はとても重要です」

PATINA Eleganceのカラー&マテリアルデザインを担当したレクサスインターナショナルの宍戸恵子さんは、L-ANILINEの魅力をそう語る。目を凝らしてみると、家具業界などでは銀面と呼ばれる表面の風合い、毛穴の表情までもがしっかりと残っていることに気づくだろう。普通の革であれば塗装を厚盛りして均されるのと引き換えに潰れてしまうその表面を引き立てるべく、L-ANILINEでは極限まで塗膜面を薄くしているというわけだ。

  • LC特別仕様車「PATINA Elegance」と、カラーデザイナーの宍戸恵子さん。今回のLCに加え、UXのカラーデザインも担当している。

  • “経年変化を楽しむ”という新しい価値軸を見出す上でインスピレーションの源となった工芸品。左から、銅製の茶筒と茶さじ、北海道の馬具メーカーによるレザートレー。いずれも宍戸さんが実際に愛用しているものだ。

「柔らかさ」と「耐久性」——レクサスが追求する“二律双生”を実現

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「お客さまに一番感じていただける特徴は触感、手触りですね。他の革では味わえないしっとりとした柔らかさを感じていただけるかと。あと、使い込んでいくほどに馴染んで味わいが増していく、革ならではの変化を楽しんでいただけるのではと思います。また、ステアリングは常に人の手に触れる過酷な部位ということでL-ANILINEを使うわけにはいかないんですが、色味や柔らかさを限りなく近づけて世界観を統一するように設えました」

自動車用の革は乗降等の負荷に熱や紫外線、水滴などの厳しい車内条件が加わるため、一般用に比べると別次元ともいえる品質基準が定められる。L-ANILINEはいかに自然の風合いと別格のしなやかさを自動車基準の耐久性と両立するかにこだわり、2年の歳月を費やしてコートの仕様や塗膜の薄さを研究したという。その結果、新品が頂点という価値軸だけでなく、エイジングという新しい価値軸を提案出来るに至ったわけだ。

ちなみにL-ANILINEはLSのトップグレードにもオプションで用意されるが、PATINA Elegance専用に用いられるパティーナブラウンは原皮地との同調と経年変化を引き立てる色として選ばれた。そして、この内装を引き立てるボディカラーとして白羽の矢が立ったのが、UXの発売時に新開発されたテレーンカーキマイカメタリックというわけだ。
「PATINA Eleganceでは人の五感に何を訴えるのかという車づくりの課題において、唯一無二を目指す我々らしい提案が出来たかなと思っています」

と仰る宍戸さん。その背景には、多くの時間を費やし達成した、市販車に求められる耐久性との両立という二律双生がある。それこそが、レクサスの車づくりにおける核心といっても過言ではない。

渡辺敏史

わたなべ としふみ

1967年福岡県生まれ。二輪・四輪誌の編集を経て、フリーランスの自動車ジャーナリストに。以来、自動車専門誌にとどまらず幅広いメディアで活躍。その緻密な分析とわかりやすい解説には定評がある。著書に『カーなべ』などがある。
本誌「レクサスを語る」連載中。
URL:https://moment.lexus-fs.jp/member/interview/

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