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moment 2020年 1/2月号
レクサスを語る

LEXUS LF-30 Electrified
近未来を示唆する
EVコンセプトカー

文・渡辺敏史 写真・川口賢典

2019年10月に開催された東京モーターショーで次世代の電動化ビジョンを象徴するコンセプトカー「LF-30 Electrified」が発表された。
自由度の高い運動性能を実現する4輪インホイールモーターを採用。先進的デザインのコックピットやステアバイワイヤなど実装を見据えた電動化技術の結晶たる近未来のレクサス車がそこにあった——。

レクサスの掲げる電動化ビジョンとは

レクサスが目指す近未来のピュアEVのあり方を車名に込めて

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 さる東京モーターショーでワールドプレミアとなったレクサスのコンセプトカー「LF-30 Electrified(以下LF-30)」。その狙いは、今後パワートレーンの電動化を更に推し進めるというブランドのビジョンを示すことにある。

 「LFはシンプルにLexus Futureの略で、我々の代々のコンセプトカーに与えられてきた称号です。そして30には様々な意味合いが込められています」

 開発を担当した渡辺剛チーフエンジニアによると、大義的にはEV化や自動運転の技術実装が想定される2030年に、レクサスが目指す車のあり方を形とともに車名に込めたということだ。が、一方で30年向こうの2050年に向けてのCO2フリー化への指標となるような存在として、更にはこのモデルが発表された2019年が、レクサスブランドにとって創立30周年の節目であることも無関係ではないという。

 「LF-30はピュアEVを企画の段階から意識した、我々としては初めてのコンセプトカーということになります。まずEVになることでユーザーにはどのようなライフシーンでどういうメリットが生まれるのか。そしてEVによってプロポーションや空間などのパッケージ、キャビンデザインなどにどのような変化が起こるのか。それを踏まえて、レクサスとしてEVを通して世にどのような価値観を提案していくのか。これらをデザイナーたちと色々議論しながら、アウトラインを作り上げていきました」

“運転する歓び”を提供する電動化技術インホイールモーター

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 今日的なコンセプトカーの多くが自動運転化によるメリットを最大に表現する中、LF-30は最高レベルの自動運転技術を搭載する予定でいながら、車両を操るためのインターフェース、それを操作する席が明確に示されている。これはレクサスが未来においてもオーナードライバーズカーを作りつづけるという意思表示とみることもできるだろう。

 「その通りですね。LF-30はお客さまに所有いただいてドライブを楽しんでいただくという、100パーセントドライバーズカー前提で考えられたコンセプトカーです。一方で自動運転のメリットを我々なりに追求した空間作りにも拘っています。リビングのように対座することは考えていませんが、シートのスライド長を広げて乗員のコミュニケーションを妨げないことや、後席乗員向けにルーフを使ってインフォテインメントの表示やコントロールを行うユーザーインターフェースを提案しています」

 広大な室内空間を包み込むLF-30の独特なスタイリング。その基本骨格を決定づけているのが、各車輪に駆動用の電動モーターを収めるインホイールモーター構造の採用だ。重量バランスや駆動制御などの課題もあって、現在この技術を採用する量産EVはない。が、2030年に向けてのスパンでみれば実用化への道筋も見えてくる、そういう前提での採用だ。

“手綱”に着想を得た新設計のコックピットで人と車を繋ぐ

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 「インホイールモーターを採用することによって、車の動的なフィーリングは大きく変わってきます。たとえば曲がることは従来であればステアリングの操作量に応じてシャシー側が車の姿勢を作り、アクセルで前進力を与えるというプロセスがあったわけですが、出力が緻密に制御できる電動モーターを各輪に組み合わせれば、駆動トルクが車体の向きを正確に変えていくという新しい運動性の追求ができます。となると、ドライバーの意思伝達も今までの円型ステアリングではニュアンスが伝えきれなくなるだろうとか、操作系の刷新ということも考えなければならなくなるだろうと思うんですね」

 そこでLF-30では「Tazuna」というコンセプトのもと、新たなコックピットデザインを提案している。これは人が馬と関係を築いてきた歴史に着想を得たもので、大半の車両情報を前方のヘッドアップディスプレイに投影して視点移動を最小限に留めつつ、ドライバーは手元のレバーに手を添えることになる。そして車両側はその力加減などからドライバーの意思を読み取り、バイワイヤで各輪に情報を伝達するというものだ。EV&自動運転化で車の運動性能や快適性が高精細化する時代に、果たしてレクサスらしい人と車の関係とはどのようなものかと考えた上で辿り着いたインターフェースが“手綱”をモチーフとしたものであったことが興味深い。

開発前提は“ドライバーズカーであること”

EVにPHV……未来を彩るラインナップの拡大を見据えて

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 「コーポレートとして20年以上、そしてレクサスとしても15年以上にわたってパワートレーンの電動化を推し進めてきたわけですが、今後レクサスはそのノウハウの蓄積を更なる高効率化へと繋げていきます。直近ではUXのEVモデルの市販を発表しましたが、2020年代前半にも主要モデルのプラグインハイブリッド化、そしてEV専用モデルの発表を予定しています。但しそれは電動化されてさえいればいいというものではありません。その中にどのようなレクサスらしさを盛り込んでいくか……。たとえば静粛性や乗り心地の良さを、走りのエモーションとどう結びつけていくかが大切だと思っています」

 2020年代、環境負荷低減への強い意志と未来を彩る新しい価値をもって電動化を一層加速させる。すなわちLF-30は、その意思を明確化した、レクサスの新しい旗印ということになるだろう。

渡辺 剛

渡辺 剛

1972年群馬県生まれ。93年トヨタ自動車入社。エンジン開発、レクサスFR車製品企画を経て、2017年よりレクサスEVモデルの製品企画に携わり、LF-30 Electrified開発ではその指揮を執る。

渡辺敏史

わたなべ としふみ

1967年福岡県生まれ。二輪・四輪誌の編集を経て、フリーランスの自動車ジャーナリストに。以来、自動車専門誌にとどまらず幅広いメディアで活躍。その緻密な分析とわかりやすい解説には定評がある。著書に『カーなべ』などがある。

moment 2020年 1/2月号より