moment 2018年 5/6月号
日本紀行 三重県 伊勢志摩

伊勢志摩
サンクチュアリーホリデイ

文・坪田三千代 写真・星 武志

内宮・外宮をはじめ125の宮社からなる伊勢神宮。神宮再訪の今回は、内宮から小一時間のドライブで別宮、瀧原宮へ。昨今人気が高まっているというそこは静寂の中、清々しい気が満ちていた。心洗われた後は、風光明媚なこのエリアのドライブを楽しみつつ、伊勢志摩国立公園内にあるリゾートへ。温泉やスパ、絶景、伊勢志摩ならではの食を楽しみ、心身ともに癒される時を過ごす——。

内宮そして瀧原宮で、心洗われる時間

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五十鈴川は、古来、参拝者が心身を清める清流。川にかかる宇治橋は、日常から神聖な世界へのかけ橋と言われている。早朝、宇治橋の鳥居越しに、神域の上に昇る日の出を待った。仄暗い中、まるで何かの儀式であるかのように、太陽が森の端を照らしながら顔を出す。日を拝む、という言葉がすっと腑に落ち、何とも有難い気持ちになる。

宇治橋の端を渡ると、そこは、内宮の神域。玉砂利を敷き詰めた長い参道を歩いて、天照大御神を祀る正宮へと向かう。2013年の式年遷宮で、社殿や神宝などのすべてが新しく造り替えられた内宮は、ひと際、凛とした佇まいを見せている。「常若」の思想のもとに、長年護られてきた神宮の森は、いつ訪れても瑞々しい。ここには、目には見えないながら、何か厳かで、心を動かすものが確かにある。

伊勢神宮の正式名称は、「神宮」。内宮(皇大神宮)と外宮(豊受大神宮)の両正宮を中心として、14の別宮を含めた125の宮社の総称である。これらの宮社は、伊勢だけではなく、松阪、鳥羽、志摩の4つの市、度会(わたらい)、多気(たき)の2郡にわたって鎮座している。

内宮から西南西へ車で約1時間。国道42号から少し入った森にやはり天照大御神の御魂を祀る瀧原宮が鎮座している。

瀧原宮は、別宮の中でも、知る人ぞ知る“気”のよい場所。古くから「遙宮(とおのみや)」として信仰を集め、近隣の人々の氏神としても篤く慕われている。最近は、ソーシャルネットワークの影響もあり、訪れる人が増えていると聞いた。

森を背に、川を前にした丘に立つ瀧原宮は、人々の心づかいにより、常に清浄に保たれている。宮の鎮座の由緒は大変に古く、約2000年前までさかのぼる。すぐ隣には全く同じように瀧原竝宮(たきはらのならびのみや)が鎮座し、こちらは天照大御神の荒御魂(あらみたま)(神のもつ荒々しい側面)が祀られているとも考えられている。この二宮を並べてお祀りするのは、内宮同様に古い形であるらしい。樹齢数百年を超える杉の木立をぬって続く参道。参道と並行して流れる素朴な川が、頓登(とんど)川。古来の祭祀の姿を伝える御船倉(みふなぐら)は、瀧原宮だけに残る建物だという。内宮に比べて規模は小ぶりながら、ここには、大切な神様を自然の中に奉祀するかたちの原点が、今も残されているような気がする。

瀧原宮では、清々しい空気の中、心と体がすっきりと浄化される気持ちになる。確かな美に触れた時に感じるような、満ち足りた気持ちになる。神宮を再訪するのなら、ぜひ一度、訪れてみたい別宮だ。

アマネム伊勢志摩国立公園に佇む絶景のリゾート

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伊勢志摩国立公園内の風光明媚な英虞湾沿岸に位置する「アマネム」。アマン東京に続いて、日本で2軒目に開業したアマンは、日本旅館のもてなしの心や美学を取り入れた本格派リゾートだ。今年で30周年を迎え、世界に31軒あるアマンの中でも、温泉を有する唯一のウェルネスリゾートとして、独自のポジションを誇っている。

リゾートの各施設は、高台に広がる森の中に点在し、24室のスイートと4棟のヴィラからは、英虞湾や国立公園の景観を眺めることができる。黒い瓦屋根や天然杉の外装、障子を思わせる意匠や白木造りの内装など、建築に日本旅館の伝統的な要素を取り入れながらも、あくまでもアマンらしく、落ち着きあるスタイリッシュな雰囲気。これまでもアマンの代表的なプロパティを手がけてきたケリー・ヒル氏による建築デザインは、ここでも、ミニマルかつ優雅な魅力を放っている。すべての部屋で、プライベートに天然温泉を堪能できるのも、素晴らしい。

もてなしぶりにも、アマンのサービスの世界標準に加えて、日本らしいやわらかな温もりが感じられる。「安らぎの空間をご提供し、温かいホスピタリティーでお迎えし、他ではできないような体験をしていただく、というのが、私たちが目指すサービスです。たとえば、日々忙しくご活躍されている方々が、もうひとつの我が家に来たように、気楽にくつろいでいただける場でありたいと思っております」

アマネム総支配人の清水久代氏が、アマンマジックとも称される、アマンのサービスの秘密を語ってくれた。

「アマネムには、お客さまをお迎えするための素晴らしいチームが揃っています。スタッフ全員が、お客さまに気を遣わせないように、お客さまと同じ目線で、お話をよく聞くように心がけています。お目にかかった最初の1分で、お客さまとの程よい距離感を察知するのも大切です」

天井の高い、ゆったりとした客室で、静けさの中、海と緑を眺めながらのんびりと過ごすのもいい。スイミングプールで、朝に夕に、英虞湾の絶景パノラマを見晴らしながらデイベッドでくつろぐ時間も、なんとも贅沢。ライブラリーで、伊勢志摩のアートや文化に関する資料に触れるのも、知的好奇心を刺激してくれる。

食やエクスカーションで、土地の魅力に触れる

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「御食(みけ)つ国」とは、古代から平安時代頃まで、朝廷に海水産物を中心にした食料を貢いだとされる国のことで、伊勢志摩もそのひとつ。今でも、伊勢神宮では、神様への食事(御饌)(みけ)を、神職の方が毎日お供えする儀式が続けられている。

伊勢海老や鮑にフグ。神様も喜ぶであろう、豊かな海の幸をはじめ、全国から選び抜いた旬の食材を用いた日本料理が、アマネムでは楽しめる。総料理長の稲葉正信氏が、その日の気温やゲストの好みなど、料理に関わる時間と空間のすべてに気を配り、ここでも最高のもてなしを提供している。年に8回ほど、季節を取り入れて変わるメニューには、伊勢海老と松阪牛をメインにしたコース、鍋料理または炭火焼きをメインにしたコースなどがあり、選択の幅が広いのがうれしい。アラカルトも多く取り揃えてあり、ひと口トリュフ蕎麦、松阪牛と雲丹の巻き寿司など、ぜひ味わってみたいメニューもずらり。日本料理の伝統に立脚しながら、ほどよくひねりを効かせたクリエイティビティが隠し味だ。

世界各地のアマンでは、その土地の魅力を体感するための、独特のアングルと深さを持ったエクスカーションを用意しているのが、大きな魅力。アマネムでも、伊勢志摩の自然や文化に触れることができる、各種エクスカーションが用意されている。近隣のローカルな町へのツアーから、伊勢神宮や熊野古道へのプライベートツアー、四季の自然を楽しめるハイキングやサイクリングなど、いずれもゲストに合わせてカスタマイズしたエクスカーションをアレンジしてもらえる。開業3年目の今年は、さらに、バージョンアップして、真珠の核入れ取り出し体験や古い町並を巡るお伊勢参りなど、より深く伊勢志摩の自然と歴史の魅力にアプローチするエクスカーションが開発された。

「自然よし、食よし、人よし。伊勢志摩は、本当によいところなので、食やエクスカーションはもちろん、滞在のすべてを通して、ひとりでも多くの方に、伊勢志摩の素晴らしさを発信していきたい。それが、私たちのミッションだと思っています」(清水氏)

アマネムのお勧めエクスカーション

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英虞湾は、日本が誇る美しい真珠の産地。アマネムで今年から始まったのが、英虞湾で自分だけの真珠を育てるエクスカーションだ。真珠養殖を営むファームで、アコヤ貝への核入れを体験。さらに、それを8カ月ほど大切に育ててもらい、自分だけのパールを手に入れることができる。核入れは4〜7月、取り出しは12〜3月を予定。また、歴史好きには、外宮を参拝した後で、二軒茶屋と河崎を巡るエクスカーションもお勧め。小舟に乗って、昔ながらのお伊勢参りの風情をたっぷりと味わえるコース内容だ。

温泉を活用した最新のウェルネス体験を

水着を着用して、一見、浅くて広いプールのようなサーマル・スプリングへと入ってみる。さらりとして肌当たりのよい、心地よい温度の温泉水が、ふんわりと体を包む。季節により、手前部分が41度ほど、奥の方が38度ほどに設定された温泉水は、交互に浸かることで、より体によい効果を期待できるという。青空を眺めながら開放的な気分で温泉に浸かれる昼間はもちろん、きらめく星空の下でぬくぬくの温泉に浸かる夜も、また格別。スパ内には、さらに、ふたつの貸切温泉もあり、たっぷりと温泉を堪能する休暇を楽しみたい。温泉を備えるリゾートは幾つもあるけれど、ここまで温泉をウェルネスの視点から捉え、トリートメントや滞在プログラムに活用できているリゾートは、他にはないだろう。

アマネムのアマン・スパでは、ゲストの好みによって、各種のホリスティックなセラピーを受けることができる。新鮮なわさびや地元産ハーブなどを用いたトリートメントでは、四季折々の自然と溶け合うかのようなリラックスへと導いてくれる。水中でのアクアティックボディワークでは、独特の浮遊感に包まれて、心の芯から解放されるような感覚に身を委ねてみたい。

パッケージでは、ヨガやマクロビオティック食を含むワンデイプログラムの他、昨年からは、日本初の本格的なパーソナルウェルネス集中プログラムを取り入れた3泊4日からの宿泊プランも登場した。

ウェルネスマネージャーの小林千恵子氏が語る。

「伊勢志摩の美しい自然の中で、都会ではできない、お客さまに合わせたセラピーを体験していただき、健康的なライフスタイルのアイディアや気づきを、日常にもお持ち帰りいただきたいと思っています。さまざまなトリートメントやセラピーだけではなく、温泉や食も含めたトータルなウェルネス体験をしていただけるのが、アマネムの特徴です」

アマン・スパでのホリスティックなセラピーを目的に、アマネムを訪問するリピーターも多い。遥か古代から見出され続けてきた、伊勢志摩の穏やかな自然と静けさ、そして、極上のスパ体験が、心と体をゆったりと癒してくれるはずだ。

アマネム

トリートメント前のフットバスで用いられる天然由来のオイルや真珠塩。

アマネム

住所:三重県志摩市浜島町迫子2165
電話:0599-52-5000
チェックイン:15:00
チェックアウト:12:00
URLamanemu.com