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NEW OPEN HOTEL2022
現代アートとともに滞在。直島に新スタイルのラグジュアリー旅館「ろ霞」が誕生

世界的にも現代アートの島として注目される直島に2022年4月、待望の旅館「ろ霞」が誕生しました。山の麓の静寂な空気に包まれる宿は、すべての部屋に開放感のある露天風呂が設らえられたオールスイートタイプ。館内には名和晃平をはじめ、横田大輔など注目の日本人アーティストの作品が点在し、客室のアートは季節ごとに設置替えし購入も可能です。旅館という日本文化と日本のアーティストを世界に向けて発信する新しい形の旅館を取材しました。

Text:Misa Yamaji(B.EAT)

アートの島に誕生した、アートを発信する、ギャラリーのような旅館

瀬戸内ののどかな海と昔の暮らしが残る小さな島、直島。1992年に「ベネッセハウス」がオープンして以降、アートを体感できるさまざまな作品や展示場が島の各所に誕生し、世界中から、この稀有なアートの島を目掛けて人びとが訪れるようになりました。

それから30年。アートが日常に溶け込んだ直島の集落の中心地・本村地区に、初となる本格的な日本旅館「ろ霞」が誕生しました。

メインダイニングの「EN」

本村地区は「家プロジェクト」など、昔ながらの家を活かしたアートが点在する、見どころの多いエリア。そこから歩いて10分もかからずに辿り着ける「ろ霞」もまた、訪れるだけでさまざまなアートに触れられる宿です。

入り口の庭で迎えてくれるオブジェは名和晃平。入り口を入って右側のバーにある絵画は品川 亮。左側にあるダイニング「EN」のカウンターには、名和晃平の「Moment Photography」。名和晃平は彫刻家として知られる作家ですが、これは高速で移動する列車から撮影したという写真の作品です。

その奥には、注目の若手画家、山本 捷平の作品がさりげなく飾られています。

「直島で宿の開業が決まってから、この場所を、若手の作家と世界をつなげる場所にしたかった」と話すのは、オーナーの佐々木慎太郎氏。京都芸術大学で教鞭もふるう後藤繁雄氏をキュレーターに迎え、宿自体を、今後世界で活躍するアーティストの才能を発掘し、育成、そして販売につながる場所として捉え、新しい旅館の形を提案しています。

客室の入り口。ガラス張りになっているユニークな造り。

建物ひとつをとっても非常にユニークな造りです。岡山のデザイン会社nottuoによる宿泊棟は長屋をイメージしたもの。客室のひとつひとつに土間を感じさせる空間があり、小上がりには茂田真史による表情の違う花器が設らえられ、季節の花とともに迎えてくれます。

この空間はすべてガラス張りになっており、通路を行き交うゲストが、部屋の様子を眺めながら歩くことができます。各部屋の入り口がさながらギャラリーのような風情。障子を閉めればプライバシーは確保され、もちろん外から中を見ることはできません。

全室露天風呂付き。静寂に包まれるスイートルーム

障子を開けると、そこには畳敷きのベッドルームが。奥のリビングスペースから一段高くなっているため、テラス抜けの緑がよく見えます。全室スイートルーム仕様のため、一番小さいデラックススイートでも56 m²と実にゆったりとした造りになっています。

ダブルシンクの前には広々としたワーキングデスクとソファ。ユニークでありながら機能性とラグジュアリーさを兼ね備えたスイートルームは、のんびりとした滞在を約束してくれるでしょう。

デラックススイートのベッドルームからテラスを眺める

テラスの前には、広々とした贅沢なひのき風呂があります。屋根がある露天風呂になっており、窓を開け放てば外の空気を感じながらお風呂に入ることができます。こちらは温泉ではありませんが、部屋に備え付けられている湯郷温泉の源泉を凝縮した「クラフト温泉」を入れれば温泉気分を味わえるのも嬉しい心遣いです。

庭からゲストルームを見たところ。ヒノキ風呂はゆったりと寛げる広さ

また、客室内にあるアートや花器が買えるというのもこちらならでは。部屋のアートは期間を決めて注目の若手作家の作品が飾られます。4月オープンから秋頃までは品川亮の「新古今和歌集 十二選」を展示中。客室をギャラリーに見立て、絵画を販売する試みは反響を呼び、購入希望者が殺到、抽選ですべて完売してしまったといいます。

ちなみに、小上がりのところにある花器も購入が可能。この宿すべてがアートのショーケースとして、作家とゲストをつなぐハブとなっているのです。

瀬戸内の海の恵みを寿司と日本料理で存分に味わう

夕食と朝食はメインダイニングの「EN」でいただきます。こちらで提供されるのは寿司会席と会席の2種類。人気はカウンターで食べられる寿司会席です。

コースは、先付けからデザートまで、日本料理と寿司が緩急つけた11品で登場。マグロなどは赤酢で握る正統派ですが、白身のマナガツオは香川の米酢を使った酢飯で握り、オリーブオイルとバジルで風味づけ。キジハタは、花穂と黄味酢、乾燥レモンを添えるなど、一風変わった握りで登場。料理でも現代アートに通じる「伝統と革新」を感じることができます。

この日の「瀬戸内の寿司」。左からマナガツオの寿司オリーブオイルとバジルの風味、アマテガレイの寿司ともみじおろし、煮穴子の寿司に実山椒。

メインの魚料理もしかり。この日の魚料理は「真魚鰹(マナガツオ)のパイ包み焼き」。一見フレンチのような仕立ての料理ですが、小豆島の醤油と倉敷の味醂、実山椒でつくられた和風味のタレが添えられています。食材は80%を瀬戸内産で。庭の奥では畑を作り、今はハーブ類やトマト、とうもろこしなどを育てているそう。

土地のものを使ったオリジナリティあふれる料理は、宿泊ゲストだけでなく、外来からのお客さまも予約すれば楽しむことが可能です。

この日のメイン「真魚鰹(マナガツオ)のパイ包み焼き」。日本酒やワインの他、モクテルも充実。

「ろ霞」で感じる「無量楽」な幸せ

ディナーを食べ終わった後には、パブリック棟と宿泊棟の間にある、囲炉裏茶屋「無量楽庵」でオーナーの佐々木氏自らがゲストにお茶をふるまうこともあります。

実は、宿名の「ろ霞」の“ろ”は、この宿の中心にある囲炉裏の炉からとったとのこと。

そして、この囲炉裏の名「無量楽」とは、無限に広がる楽しさという仏教用語。主人と、さまざまな国から集まるゲストで囲炉裏を囲み、話に花を咲かせる。国境も時間も超えて広がる楽しい時間は、忘れられない記憶となって旅人の思い出に刻まれるに違いありません。

宿の中心にある囲炉裏処「無量楽庵」

直島の山間にある静かな宿は、ただラグジュアリーな体験ができる旅館、というだけでなく、昔からつづく暮らしと、アートと、人をつなぐ拠点にもなっている場所。

自分の感性を解放して、ゆっくりと滞在すれば、きっと新しい発見があるはずです。

名和晃平のオブジェ、枯山水、稲が植えられた水盤など、日本の要素をモダンに取り入れた庭も必見。
ろ霞

住所;香川県香川郡直島町本村1234
電話:087-899-2356
デラックススイート:1室1泊84,000円~
https://roka.voyage/

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