Travel

Culture Trip
ニッポンの伝統工芸

職人の手仕事から生まれる工芸品は、日々の暮らしの中で使うほどに味わいを増し、手にするたびに心に豊かさをもたらしてくれます。一度は途絶えた技術を復活させて再び輝きはじめた薩摩切子、堅牢さと優美さを兼ね備えた輪島塗など、日本各地に受け継がれる工芸品を紹介します。

Photo:PIXTA

  • 使う程に味わいを増していく
    耐久性に優れた美しき漆器

    輪島塗
    中部地方/石川県輪島市

    能登半島の港町、石川県輪島市で生産される堅牢さと優美さを兼ね備えた漆器として知られる「輪島塗」。ケヤキやミズメザクラなどの木材を使用し、下地作りから塗りまで専門の職人が分業で担当し、124もの工程を、手間を惜しむことなくかけて仕上げていきます。なかでも縁などに着せもの漆で麻布などの布を貼って木地の耐久性と強度を高める“布着せ”は重要な工程のひとつ。

    さらに輪島で採掘される珪藻土の一種の地の粉を下地に塗ることで堅牢な土台作りを行い、漆を塗っては乾かし、研ぐ作業を繰り返し、強度を高めるのが輪島塗の特徴です。輪島塗は実用性が高く、普段使いの器におすすめ。使う程に味わいが増し、一生ものとして愛用できます。

  • 秋田杉の曲物技術が光る工芸品
    桜皮で縫い留める「樺縫い」も特徴

    大館曲げわっぱ
    北海道・東北地方/秋田県大館市

    日本有数の銘木として知られる秋田杉。その木材のなかでも均一で美しい木目を持つ柾目を使用し、職人による手仕事でひとつひとつ作られているのが「大館曲げわっぱ」です。柾目部分を薄く剥いで熱湯につけて柔らかくし、曲げ加工を施して自然乾燥させた後、桜皮で縫い留めて仕上げていきます。

    その歴史は古く、約1,300年前には秋田杉で曲げものが作られていたといわれ、大館城主佐竹西家が武士の副業として推奨し、発展してきたといいます。現代の暮らしに合う製品が多く作られていますが、なかでも手に入れたいのがお弁当箱やおひつ。杉の白木がごはんの水分を程よく吸収し、冷めても美味しくいただけます。

  • 民藝運動の陶芸家・濱田庄司ゆかりの
    “用の美”が息づく日常使いの器

    益子焼
    関東地方/栃木県芳賀郡益子町

    茨城県の笠間焼と並び、関東を代表する焼きもの「益子焼」。江戸時代末期、笠間で修業した大塚啓三郎が窯を開いたのがはじまりとされ、当初は鉢や水がめなどの日用品を生産していました。民藝運動を推し進める思想家・柳宗悦とともに活動した陶芸家・濱田庄司が1924年に移住。地元の工人たちに影響を与えるとともに、益子の土で“用の美”を伝える作品を作陶したことで芸術品としての側面も持つようになりました。

    現在、約250軒の窯元や販売店が個性豊かな作品作りや販売に取り組んでいます。益子焼はやや肉厚のぽってりとしたフォルムと温かみのある風合いが特徴。柿釉や糠白釉など釉薬の種類によってさまざまな表情を楽しめるのも魅力のひとつで、日常使いの器として食卓で活躍してくれます。

  • 完成まで88の工程を要する
    京の雅な文化を受け継ぐ京扇子

    京扇子
    近畿地方/京都府

    「京扇子」は平安時代に文字を書くための木簡から派生したのがはじまりといわれます。当時、紙は貴重だったことから薄い桧板を重ねた桧扇が作られ、貴族の象徴として儀礼や贈答などに用いられていました。紙と竹で作られる紙扇が登場するのは室町時代以降で、能や茶道、舞踊など用途に応じた京扇子が作られるようになり、江戸時代に入ると烏帽子、冠作りとともに“京の三職”として発展し、庶民の日常生活へ普及したといいます。

    京扇子は完成までに88工程あるといわれ、骨作り、地紙作り、絵付、組み立てなどの各工程が分業化されています。職人の熟練の技から生まれる京扇子は手にしっくりとなじみ、涼を取る手元を気品高く演出してくれます。

  • “日本一の筆の町”で生産される
    品質の高いメイクブラシが人気

    熊野筆
    中国・四国地方/広島県安芸郡熊野町

    国内における筆の生産量の約8割を誇る広島県安芸郡熊野町で作られている「熊野筆」。そのはじまりは江戸時代末期、農閑期に奈良や有馬(兵庫県)地方へ出稼ぎに行った帰りに筆を仕入れて行商を行う者が現れたのをきっかけに、有馬で筆作りを学んだ佐々木為次が技術を伝えたといわれます。

    原料は高級毛の灰リスをはじめ、山羊(ヤマヒツジ)、ウマ、イタチなどの動物毛。この動物毛の毛先と毛量を“コマ”という木型で整え、根元で必要な長さに切り揃える方式で、そのまま毛先を生かしているのが熊野筆の特徴です。弾力とコシがあり、肌をなでるとなめらかな毛先が伝わり、メイクを美しく仕上げる品質の高い化粧筆として高く評価されています。

  • 伝統の“ぼかし”技術が生み出す
    優美な色彩のグラデーション

    薩摩切子
    九州地方/鹿児島県

    表面に深く刻まれた造形に光が反射し、ジュエリーのような輝きを放つ「薩摩切子」。江戸時代末期に28代薩摩藩主の島津斉彬が近代化に向けた集成館事業の一環として日本初の着色ガラスの発色に成功し、飛躍的に発展しましたが、斉彬の死をきっかけに規模が縮小し、技術が途絶えた歴史を持ちます。しかし、1985年、薩摩切子の復元プロジェクトによって斉彬ゆかりの地で復活を遂げました。

    薩摩切子の特徴は、透明ガラスに色ガラスを被せて表面を深くカットする“ぼかし”と呼ばれる技術が生み出すグラデーション。現在、当時の色を再現した紅・藍・紫・緑などに加え、新たな色も開発。また、透明ガラスにふたつの色ガラスを層にして重ねる“二色被せ”という技術も開発され、薩摩切子はさらに魅力と輝きを増しています。

  • 沖縄の色鮮やかな自然を映し出す
    琉球王朝時代から伝わる染めもの

    紅型
    沖縄地方/沖縄県

    琉球王朝時代の交易文化の繁栄とともに技法が発展し、沖縄の豊かな自然風土の中で美しい模様が確立していったといわれる「紅型(びんがた)」。紅型とは沖縄の染めものの総称で、紅は“色彩”、型は“模様”を意味し、図案から水洗まで18を超える工程をひとつの工房で制作しています。

    紅型の美しさは“イルクベー(色配り)”にあるといわれ、暖色系から寒色系へ決まった順序で色差しを行っていきます。また、文様の部分にぼかし染めを施して立体感や遠近感を出す“隈取り”も紅型ならではの技法。大胆な配色と図柄の中に職人の緻密な仕事を見ることができる紅型を、暮らしに取り入れてみましょう。

Access to moment DIGITAL moment DIGITAL へのアクセス

認証後のMYページから、デジタルブック全文や、
レクサスカード会員さま限定コンテンツをご覧いただけます。

マイページ認証はこちら※本サービスのご利用は、個人カード会員さまとなります。

LEXUS CARD 法人会員さまの認証はこちら

2021 Winter

レクサスカード会員のためのハイエンドマガジン「moment」のデジタルブック。
ワンランク上のライフスタイルをお届けします。