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IS500“F SPORT Performance”
自然吸気5L V8の有意義。レクサス IS500“F SPORT Performance”が「IS F」を名乗らないワケと、チューニングの方向性【試乗】

レクサスのトップパワーユニットは、排気量5Lのナチュラル吸気V8エンジンである。これまでRC FとLC500(クーペとコンバーチブル)の2車種3ボディに搭載されていたが、いよいよISにも「IS500 Fスポーツパフォーマンス(IS500 F SPORT Performance)」としてデビュー。日常的な快適性を重視した仕様で登場する点も魅力だ。ひと足先にアメリカで試乗した。(Motor Magazine 2022年11月号より)

text:Yasuhisa Shimashita
photo:LEXUS International

ハイパフォーマンスをアピールするIS500のエクステリア

いわゆる欧州Dセグメントに位置するスポーツセダンであるレクサスISの車体に、5L V型8気筒の自然吸気エンジンを載せた新登場のIS500 Fスポーツパフォーマンスの成り立ちは、要するにかつての「IS F」を踏襲するものだ。

では、それがなぜ今回はIS Fを名乗らないのだろうか。Fを名乗れば間違いなくサーキットでの速さが期待される。けれど今回重視したのはいまや希少な大排気量・自然吸気・高回転型エンジンの歓びを存分に堪能できるクルマである。それゆえに「F」ではなく、「Fスポーツパフォーマンス」とされたのだ。

外観の一番の特徴がV8ユニットを収めるべく、標準型のISより長く、そして大きく膨らんだボンネットフードである。リアの4連エキゾーストパイプともども、アピール度は半端ない。

斜めに重なる左右2本ずつのテールパイプは、V8エンジン搭載モデルである証。

一方、インテリアはウルトラスエードと呼ばれるバックスキン調の合成皮革を各部に使用。起動時のオープニング画面がIS500専用とされているのも、ユーザーは心くすぐられるに違いない。

そのエンジン、2UR-GSE型ユニットは最高出力481ps、最大トルク535Nmを発生する。トランスミッションは最短0.2秒という変速スピードを実現した8速SPDS(スポーツダイレクトシフト)AT。もちろん後輪駆動で、トルセンLSDを標準装備する。

サーキット志向ではないとは言え、それでもシャシは締め上げられている。スプリングレートが高められ、EPSや電子制御ダンパーのAVSは制御に手が入れられた。一方、19インチのタイヤは銘柄も含めてISのFスポーツから変更はない。ブレーキもローターは大径化しているが、キャリパーはそのままである。

大きな違いと言えるのが、ISではフロントにだけのパフォーマンスダンパーが、リアにも装備されたことだ。ボディのねじれやたわみを減衰させ安定した挙動に導くこのアイテム、大パワーを後輪だけで余さず路面に伝達するためには必須ということだろう。

踏み込めば即座に世界が一変する、ハイパワーFR特有の醍醐味

アメリカはサンタバーバラ近郊の一般道を舞台に行った今回の試乗。そこはやはりFではないということで、流れに乗って走っている限りはIS500、余裕のトルクとしなやかな乗り心地で、とても快適なドライブが可能だ。

アクセルペダルを深く踏み込めば、即座に世界は一変する。ドロドロとしたサウンドの粒が揃いだし、回転が高まるにつれてさらにその上昇スピードが高まっていく。音はますます澄んできて、まさに管楽器のよう。レッドゾーンが近づくにつれて、さらにパワー感を高めながら、最後は一気にトップエンドまで到達。この快感は病みつきになる。

電動化だけでなく、5Lもの大排気量エンジンを搭載した希少なモデルの出現は歓迎されるはずだ。

コーナーに入れば、適度なロールを許しながらもエンジンの重さを感じさせない気持ち良い旋回フィーリングを得られる。サスペンションの調律もそうだが、おそらくはエンジンをはじめとするマウント系のチューニングも相当念入りに行われたに違いない。

懸案のトラクションにも不満は皆無。アクセルオンとともにリアからグイッと押し出すハイパワーFR特有の感覚が、操る醍醐味に繋がっている。

冷静に見れば、ステアリングフィールには古さが隠せないし、ブレーキのキャパシティももう少し欲しい。しかしながら、このご時世に5LのV8自然吸気エンジンを積むクルマである。そんなアナログ感も、むしろしっくり来ると評していいのでは?

このIS500 Fスポーツパフォーマンス、限定500台のファーストエディションはすでに受注が終了しているが、発表済みの通常モデルについても2022年冬には販売に関してアナウンスするという。こうしたモデルを売り出すだけでなく、限定販売としなかったところは、レクサスの良心と言いっていいはずだ。

【主要諸元】

レクサス IS500“F SPORT Performance”(日本仕様)

全長×全幅×全高
4760×1840×1435mm
ホイールベース
2800mm
車両重量
1720kg
エンジン
V8 DOHC
総排気量
4968cc
最高出力
354kW(481ps)/7100rpm
最大トルク
535Nm/4800rpm
トランスミッション
8速AT
駆動方式
FR
燃料・タンク容量
プレミアム・66L
WLTCモード燃費
9.0km/L
タイヤサイズ
前235/40R19、後265/35R19
車両価格(税込)
850万円
IS Fを踏襲するレクサスIS500“F SPORT Performance”の成り立ち。ボンネットデザインも専用。
ENKEI製の19インチアルミホイールを装着し、前245/40R19・後265/35R19タイヤを組み合わせる。
トランクリッドにはさりげなくスポーツ性を主張する、ブラックのスポイラーを装着。
インパネまわりはISの流儀に則ったもの。ステアリングホイールリム下側に「F SPORT」のマークが付く。
身体を深く支えてくれるデザインのスポーツシートに身を委ね、V8エンジンフィールに浸ってみたい。
スタート画面は写真のようにIS500専用を用意。タコメーターは7000rpmからがゼブラゾーン。
フロントブレーキは対向4ポッドキャリパーを採用。カラーはブラックの他にもオプションでオレンジを選択できる。
出典:Webモーターマガジン

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