Car

LX600×ランドクルーザー
レクサス LX600“エグゼクティブ”×トヨタ ランドクルーザー GRスポーツ「個性の違いに兄弟と呼ぶのを躊躇う」

歴代モデルもそうだったように、新型となったレクサス LXとトヨタ ランドクルーザーもアーキテクチャーやシステムといった個々の単位で見れば共通点は多い。しかしこの2台で走ってみると明らかに違うクルマだということがはっきりと見えてきた。

Text:Toshifumi Watanabe
Photo:Ikkai Muranishi、Hidekazu Nagamoto

ついにプラットフォームを一新。大幅な軽量化も図られた

レクサスのフラッグシップSUVであるLXの、4代目となる新型が2022年1月に発売された。だが、CM放映やディーラー展示など、プロモーション展開の様相はあまり伝わってこない。理由はLXのウェブサイトを見ればわかる。アクセスするなり出てくるのは「納期目処に関するご案内」という項目だ。お詫びとともに記されたその時期は、場合によっては4年程度とされている。

「CMとは何ごとですか」という話にもなりかねないわけで、宣伝したくてもできないというわけだ。状況は2021年に発売された300系ランドクルーザーも同様だ。お察しの方もいるだろうが、この2台はメカニカルコンポーネンツの多くを共有している。

LXの歴史を振り返ると、そこには常に代々のランドクルーザーのトップレンジモデルが密接に関係している。1996年に登場した初代LX450は80系が、1998年に登場した2代目LX470は100系が、そして2007年に登場したLX570は200系がそれぞれベースとなっていた。それらのうち、LX470とLX570の後期モデルが日本でも販売された。そして4代目のLX600のベースとなるのは300系だ。

が、新しいLXは単なる300系の衣替えに非ずと開発陣は胸を張る。というのも、今回の300系は100系以来、約四半世紀ぶりにラダーフレームからの完全新規開発となる。この式年遷宮的なタイミングを活かして、プラットフォーム開発のスタート時から、LXがあることを前提にその要件を随所に織り込んだ設計がなされているという。

ちなみに300系の開発に当初から深く携わった横尾貴己主査は、並行してLXの開発も兼任し、現在はLXの専任主査となっている。双方の棲み分けは氏が設計レベルからしっかり監修してきているというわけだ。LXを試乗するにあたっては、この両車の何が同じで何が違うのかを知ることが必要だろう。それを知るために、2台のメカニカルなアウトラインをランドクルーザーの側から振り返ってみる。

ランドクルーザーのモデルチェンジの肝となるのは、前述したとおり、完全刷新したGA-Fプラットフォームを採用したことだ。ラダーフレーム部は設計の最適化や最新の溶接技術により軽量化を果たしながら従来より20%剛性強化されており、ボディ側はボンネットやドアパネルなどの開口部、そしてルーフにアルミ材を用いることで、前型比で約200kgという軽量化に大きく貢献している。また、パッケージ面ではエンジンのマウント位置を70mm後方、28mm下方化するとともに、フレーム形状の工夫による居住性やドライビングポジションの改善も実現した。

サスペンションは前ダブルウイッシュボーン、後トレーリングリンクすなわちリジッドアクスルを採用。200系と同じだが、フレームの新開発に伴いこちらも全面刷新された。トレッドは200系より25〜30mm拡大したが、ホイールベースは2850mmと同一だ。これはランドクルーザーの黄金比として80系から継承されている。

最低地上高も225mmと300系と同じ。つまり、悪路走破性を数値化したランプブレークオーバーアングルも同じ25度となる。ちなみにアプローチアングルも32度と同じ。デパーチャアングルは26度と200系を1度だけ上回る。

ちなみにランドクルーザーのサスペンションは一部グレードに電子制御可変ダンパーを用いるも車高調整機能を持たない決め打ちとなるが、オフロードの走行性能を強化したGRスポーツには、E-KDSSを装備。これは岩場やモーグルセクションなど四輪のトラベルを最大化したい際に、スタビライザーをフリーにして伸縮の規制を解除するもので、副変速機をローモードとした際にのみ作動する完全悪路想定の仕組みだ。

一方、LXは同じコイルばねを用いながら、油圧アクチュエーターによる最大110mmの車高調整がグレードを問わず可能となっている。乗り心地にも有利なエアサスペンションは信頼性や耐久性に配慮してあえて用いていない。両銘柄ともに、メカニズムにまつわるこだわりを先代から引き継ぎながらアップデートしたというわけだ。

搭載エンジンも完全刷新された。ガソリンエンジンはランドクルーザー、LXともに3.5L V6ツインターボとなる。型式はレクサスLSに搭載されるものと同じV35A-FTSだが、中身は骨格やムービングパーツなどをすべて専用設計とし、高効率エンジンの高速燃焼ならではの、低回転域における音と振動に対処している。また、エンジンマネジメントに加えて吸気、排気系のデザインも変更されており、トルク型に寄せられたエンジンをごく低回転域からコントローラブルに扱えるように性格が整えられている。

加えて、ランドクルーザーのみに用意されるのが完全新設計のディーゼルユニットだ。F33A-FTV型3.3L V6ツインターボは309psのピークパワーはともあれ、700Nmの大トルクを1600rpmの低回転域から発揮することが大きな特徴だ。悪路での粘り強さや低ミュー域での扱いやすさなど、クルマの本筋的な用途に見合うキャラクターが期待できるだろう。

トランスミッションはランドクルーザー、LXともに10速ATとなる。ちなみにランドクルーザーの同じグレードで燃費を比較すると、WLTCモードでガソリンが7.9km/L、ディーゼルが9.7km/Lで、後者の方が2割強の省燃費ということになる。80Lの燃料タンク容量はLXも同一だ。

レクサス LX600 “エグゼクティブ” (後)とトヨタ ランドクルーザー GRスポーツ。ベースは同じながら、明確な差別化が行われている。

乗り込んだ瞬間に息を呑むLXの圧倒的な車内空間

内外装の質感や設えは当然ながらレクサスの見せ場だ。新しいLXは従来のモノグレードから3グレードに拡張して選択肢を大きく広げている。

このうち、新型LXのラグジュアリー性を象徴するのは最上級グレードのエグゼクティブだろう。後席は独立2座として、助手席側の前方スライド量も延長することで最大1000mmのレッグスペースを確保。最大48度の電動リクライニングシートとオットマンを組み合わせ、宇宙空間で人が力を抜いて休む際にもっとも疲れない姿勢としてNASAが提唱している中立姿勢を参考にしたポジションが採れるように調整したという。

その絢爛ぶりはさながら砂泥のLSといった様相だが、LXの最大需要地である中東地域ではまさに待望の設えということらしい。あるいはショーファーのニーズも増えている世界のラグジュアリーSUVカテゴリーにおいては化ける可能性もありそうだ。

今回連れ出した試乗車はまさにそのエグゼクティブだったが、後席の快適さは確かに今までのSUVにはない類のものだった。電車の中でもグリーン車以上・・・みたいなアルファードの寛ぎを知る日本人からしても、その着座感は目を見張るものがある。ちなみに助手席のシートバックにはリアのフットレストを引き出した後のへこみが残るが、そこに足裏を置いておけば悪路等の横揺れ時でも踏ん張りが効いて体を支えられる、そういう作りにしてあるらしい。なかなか豪気な話だが、このグレードを求めるオーナーならそのくらいの使い方は躊躇わないだろう。

レクサス LX600“エグゼクティブ”。助手席側の後席にはフットレストを装備。モニターも不要な場合は格納して前方視界を確保することもできる。

両車のドライバイリティは劇的に向上している

今回は2台の個性差を最大化するために、ランドクルーザーはオフロード寄りのセッティングとなるGRスポーツの、しかもディーゼルを用意した。

それゆえ、過去の試乗経験を織り込んでの話にもなるが、ランドクルーザーのオンロードでの快適性は同様の骨格を持つ一部のSUV、たとえばメルセデス・ベンツ Gクラスや旧型のキャデラック エスカレード(現行型は四輪独立)辺りと比べても遜色はない、もしくはそれを上回る。とくに横揺れの少なさや静かさといった点は明確な差として感じとれる。試乗グレードはタイヤ由来のロードノイズやディーゼル特有のガラガラ音がやや目立つが、それでも乗り心地の丸さはリアリジッドの不利を感じさせない。トヨタの面目躍如といったところだろう。

が、新型LXの快適性はそれを軽々と上回っていた。多分にルックスから設定されたものだろう、22インチと相当な大径タイヤをものともせず、ライドフィールは至極フラットで上屋に伝わる細かな揺れの減衰もすっきりしている。遮音や制振にまつわる物量差もあるだろうが、静粛性は言うに及ばず。首都高のように轍や目地段差の大きい場所であっても直進性に不満はなく、後席も横揺れや突き上げで不快な思いをすることもない。こうなると比べる相手はシャシ構造の異なるモノコック系のラグジュアリーSUVの方が相応しく、そこにも肉薄している。

車型を鑑みれば不得手だろうと思えるハンドリングだが、実は前型から最も進化したのはこの項目かもしれない。新型LXのハンドリングは操作に対しての遅れを勘案しなければならなかった前型とはまったく異なっていて、その加減速姿勢やロール量とその推移、ライントレース性などは劇的と言えるほどに改善されている。新しいサスペンションジオメトリーによる運動性能の適正化もさることながら、何より大きいのは200kg近い軽量化だろう。この、運動性能的にみて別物という感触は、ランドクルーザーも同様だ。

新型LXでは、事前取材の段階で、オフロードを模したセクションを走る機会もあったが、そこでさえ印象的だったのは快適性だ。車高調整に油圧を用いることもあって、タイヤの上下動に伴う衝撃が柔らかい。また、制動系統の刷新により電子制御油圧ブレーキを採用したことで各輪制御時のポンピングの作動が緻密になっていて、駆動制御デバイス作動時の動的な質感が俄然高まっている。

試したわけではないのではっきりとはいえないが、おそらくランドクルーザーとLXとを悪路でガチに比較すれば、最後の最後で優位に立つのはランドクルーザーだろう。というか、そういうことにしておいて欲しいとさえ思う。

LXは過酷地で絶対的なシェアを誇るそのランドクルーザーの信任がベースにあればこそ、全域でさらに磨かれた性能が輝くことになるわけだ。2台の関係性は切っても切り離せないわけだが、それにしても新型LXは、土台たるクルマの長足の進化にもかかわらず、よくぞここまで差別化が果たせたものだと感心する。

トヨタ ランドクルーザー GRスポーツ。走行モードの切り替えスイッチなどはシフトレバーの周囲に配置。インナードアハンドルやピラーのグリップなどは厚手の手袋をしたままでも掴みやすいように大ぶりだ。

【主要諸元】

レクサスLX600“エグゼクティブ”

全長×全幅×全高
5100×1990×1895mm
ホイールベース
2850mm
車両重量
2600kg
エンジン
V6 DOHCツインターボ
総排気量
3444cc
最高出力
305kW(415ps)/5200rpm
最大トルク
650Nm/2000-3600rpm
トランスミッション
10速AT
駆動方式
4WD
燃料・タンク容量
軽油・80L
WLTCモード燃費
8.0km/L
タイヤサイズ
265/50R22
車両価格(税込)
1800万円

トヨタ ランドクルーザー GRスポーツ

全長×全幅×全高
4965×1990×1925mm
ホイールベース
2850mm
車両重量
2560kg
エンジン
V6 DOHCディーゼルターボ
総排気量
3345cc
最高出力
227kW(309ps)/4000rpm
最大トルク
700Nm/1600-2600rpm
トランスミッション
10速AT
駆動方式
4WD
燃料・タンク容量
軽油・80L
WLTCモード燃費
9.7km/L
タイヤサイズ
265/65R18
車両価格(税込)
800万円

出典:Webモーターマガジン

2022 Summer

レクサスカード会員のためのハイエンドマガジン「moment」のデジタルブック。
ワンランク上のライフスタイルをお届けします。