Good clubs make a good score.
ゴルフクラブ・アナリスト鹿又芳典の
「ゴルフクラブのお話ししましょう!」
VOL.5「クラブに仕事をしてもらおう」
クラブフィッターの第一人者・鹿又芳典さんが、スコアアップやスキルアップにつながる賢いゴルフクラブ選びについて語るこのコーナー。第5回のテーマは「スコアを作るクラブセッティングとは?」です。バッグに入れる14本のクラブをどう選ぶかが、スコアメイクを大きく左右するのです。
ドライバーの下のクラブは距離の階段にこだわらない
自分にとって必要なクラブをしっかり見極めて、クラブに仕事をしてもらう。これが今のセッティングの作り方であり、クラブの選び方です。
ドライバー以下のクラブで210ヤード、200ヤード、190ヤード……ときれいに階段を作る必要はありません。「自分はドライバーの下は180ヤードのクラブでいい」と思ったら、間を飛ばしてしまってもいいんです。
ドライバーは220ヤードで、その次は180ヤードしか飛ばないクラブ。その代わり、その下からは10ヤードピッチで揃えて、バンカーが嫌いならバンカー専用のクラブを入れる。
このように、自分がより少ないスコアで上がるために、何をするかを考えてほしいんです。すると、前回も触れたように、アイアンより下のクラブの階段を作るほうが重要なことがわかると思います。
3番ウッドも5番ウッドもマストではない
ここで、少し夢のない話をします。本当にクラブでスコアアップしたいと思ったら、うまく打ったときのことは考えない。
ある程度ゴルフをやっている方だったら、3番ウッドがうまく打てるときもあります。でもそうじゃなくて、ミスしたときにどういうミスが出るのか、というのを念頭においてほしいと思います。
例えば、スコア100前後の方がケガする状況といえば、ティーショット、セカンドショットでフェアウェイウッドやロフトの立ったユーティリティ、あとはロングアイアンを持ったとき。それから、50ヤード以内でアプローチを失敗したとき、あたりでしょうか。
そこで毎回毎回ミスをして100打ってしまうのであれば、ミスしないクラブ、ミスしたときでも今のミスより幅が狭くなるようなクラブを入れるだけで、絶対に100は切れます。
ドライバーなら、飛ぶドライバーではなく曲がらないドライバー。スライスばかりする人だったらスライスしにくいドライバーになるし、フックばかりする人だったらフックしにくいドライバーになります。また、ミート率が悪い人には、慣性モーメントが大きいドライバーがあります。
うまく打ったときのキャリーを重視するのではなく、ミスをしたときのミスの幅を減らしていく。例えドライバーが170ヤードしか飛ばなくても、OBやチョロは出ないで前に行ってくれるクラブを選ぶのです。
その下のクラブにしても、ドライバーのミート率が悪い人が、地面にあるボールをロフトが立ったフェアウェイウッドで打てるはずがないんですよ。だから、3番ウッドも5番ウッドもマストではありません。ドライバーが苦手な方であれば、7番ウッドくらいから入れればいいし、もっと言えば入れなくてもいい。かえって、フェアウェイウッドがないほうがスコアがよくなる人はいっぱいいるでしょう。
その代わり、170~180ヤードの距離が稼げるユーティリティをしっかり1本入れてほしいです。
大ミスしないクラブを使えば100は打たない
500ヤードのパー5でも、ドライバー200ヤード打って、セカンドで170ヤード稼いだら、残りは130ヤード。3番ウッド、5番ウッドがなくても十分に狙えるんですね。
だから、100をオーバーしてしまっている人は、セッティングで何を考えないといけないのかというと、まずは絶対にOBとかペナルティにならないクラブを使うこと。
そしてもう1つは、できるだけパーパットが打てるセッティングになっていることです。
ドライバーでトップして170ヤード。セカンドでユーティリティを持って、これもミスして150ヤードだったとします。コントロールショットでグリーンを狙うのは難しいですが、アイアンの”下”のクラブで距離の階段をきれいに作っておけば、フルショットで届くクラブで、次の3打目でグリーンに乗せられる。そうすれば、ミスが続いてもパーパットが打てるんです。
もちろんそう思い通りにはいかないですけど、できるだけそういう組み立て方をしていったら、普通に7番アイアンとか8番アイアンを打てる人だったら100は打ちません。
120ヤードをワンピンに寄せる技術があれば…
また、自分がどういうミスの仕方をしてスコアを崩しているのかっていうのを、ラウンドが終わった後でメモをつけておくといいでしょう。
1つの基準として、「飛距離の1割、前後左右に曲がるクラブをバツにする」というのがあります。ナイスショットで180ヤード飛ぶクラブなら、160ヤード飛んだらまだいいけど、150ヤードしか飛ばなかったらバツ。1割の18ヤード左右に曲がったらバツにしていくと、使えるクラブと使えないクラブがはっきりわかってきます。すると、使えないクラブの買い替えを考えるきっかけになると思います。
ただし、ここまで話してきたことは、繰り返しになりますが夢のない話。ナイスショットよりもスコアをとるためには、これが現実です。
でも、練習をすごくして、スクールに通ったり、レッスンも受けて、これからどんどん上達していこうという人は、いいスウィングをしたときにいい球が出るクラブを使ってください。決して現実だけを追い求めることがいいというわけではありません。
また、ゴルフの楽しさの中に、「自分の好きなクラブで、1日に1回でもいいからいい球が出たらいい」というのがあるのも事実です。
とはいえ、1週間に1回、2時間で200球を打つ程度の練習では、ある一定のレベルを超えていくとスキルアップは難しくなります。
試合に出ているプロたちの練習量は、毎日ラウンドして、終わって朝晩に練習して、アプローチやパッティングもやっています。
これは女子プロの話ですが、「120ヤードをどんなライからでもワンピンに寄せられる技術があったら優勝できる」と僕たちはよく言います。
120ヤードだと簡単そうな距離に考えがちですけど、傾斜やラフ、ピンポジションにかかわらずワンピンに寄せるのは、それくらい難しいことなんです。
みなさんが120ヤードを練習場で10球打って全部ワンピン、3メートルくらいに行きますか。これが120ヤードじゃなくて100ヤードでも、10球ワンピンに打てれば、ハンディ5下になれるでしょう。
そう考えると、スコア100前後の人が残り120ヤードからピンを狙うって、かなりチャレンジャーなんですよ。心構えとしては、「グリーンのそばに行けばいいな」くらい。120ヤードからグリーンの真ん中に乗ってたら、すごく上手いレベルといえます。
それくらいパーオンは難しいからこそ、しっかり3打目を乗せて、パーパットが打てる状況を作るクラブセッティングが重要なんです。
鹿又芳典(かのまたよしのり)
1968年東京都生まれ。初級者からトップアマ、プロまで多くのゴルファーから信頼を集めるクラブフィッター。年間の試打クラブ数は2000本に及び、雑誌、テレビなど各ゴルフメディアでも活躍。ゴルフショップマジック(千葉県)代表