世界に誇る日本ブランド
「獺祭」を作る旭酒造が、N.Y.に史上初となるプレミアム日本酒の酒蔵をオープン
日本の蔵元として、海外に自社の酒蔵を作り、現地の水を使ってプレミアム日本酒を醸すことに挑戦した旭酒造。その総工費はなんと85億円。個人経営の蔵元が思い切ってアメリカに酒蔵を作り、酒を醸す理由とは?そしてその味は?その全容を取材しました。
Text: Misa Yamaji(B.EAT)
N.Y.生まれ、N.Y.育ちのSAKEを作る意味
2023年9月23日、N.Y.州ハイドパークに、あの「獺祭」で名を馳せる旭酒造の酒蔵「DASSAI BLUE Sake Brewery」がオープンしました。
歴史を遡れば1980年代、大手酒メーカーがカリフォルニア州を中心に、現地の水と米を使って酒造りをし、流通させてきましたが、日本の家族経営の酒蔵が、海外に一から醸造所を作り、現地の水と米を使ってプレミアム日本酒を造るというのは史上初のこと。
こちらの酒蔵で醸されるSAKE(※)は「DASSAI BLUE 」と名付けられ、ハイドパークの水、そして獺祭の神髄、山田錦で醸されます。初年度の米は、日本からの輸入米ですが、来年からは、アーカンソー州の農家が栽培する山田錦と日本からの輸入米のブレンドを予定しているそう。
(※)日本産以外の米で醸し、日本で醸造していない酒は地理的表示から日本酒と呼ぶことができず、一般的にSAKEと呼ばれる。
敷地内に建てられた精米専用の建物で米を磨き、仕込み毎に、手作りの麹と小さなタンクで醸造する「獺祭」の手法をそのまま踏襲。酒を醸すのは岩国で酒造りに携わってきたベテラン3人と、現地採用の6人の計9人で酒を醸しています。
「ニューヨークでの酒造りは、『獺祭』とまったく同じもの、または『獺祭』のまがい物をつくるということではありません。あくまでこの環境で一番美味しいものをつくることが大切なんです」。とは、この地に移住し、アメリカでの酒造りの責任者となった旭酒造の桜井博志会長。
その言葉通り、9月23日のパーティで振る舞われたできたばかりの「DASSAI BLUE」は「獺祭」とはまったく違うSAKEに仕上がっていました。
「獺祭」らしい華やかな香りが広がり、うまみを感じながらも、非常にクリアですいすいと飲める軽やかさ。おちょこではなく、ワイングラスがぴったりのエレガントな味わいなのです。アルコール度数も日本酒にしては低いような…。
「日本酒が食文化として世界に根ざすには、ワインに飲み慣れている現地の方に料理に合わせたいと思ってもらう必要があると思っています。ワインのアルコール度数は12度。『獺祭』はアルコール度数が16度ありますが、『DASSAI BLUE』は14度まで下げたいと試行錯誤しました」と桜井会長。
この地に酒蔵を出すきっかけは、世界的最大の料理大学、CIA(The Culinary Institute Of America)から「日本酒のプログラムを作りたいので、近くに酒蔵を作ってくれる蔵元を探している」という問い合わせから。そんな同校と協力し、カリキュラムや認定プログラム制作を通じて、米国における日本酒の教育と認知向上にも取り組む予定だといいます。
「日本酒が食文化として世界に認知されるには、日本以外の国に醸造所を作り、彼らの生活のなかにはいっていかねばならない」。
常にそう考えていたという旭酒造・桜井会長が踏み出した第一歩は、世界中の人びとの食卓に、日本酒のある未来への第一歩でもあるのです。
「DASSAI BLUE」はアメリカでのみ流通とのこと。新しく誕生したSAKEがアメリカでどう評価されていくのか、目が離せません。
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