Sonos Era 300
ホームオーディオの概念を覆す「Sonos」の挑戦
昨今の音楽制作や音楽を自由に楽しむ環境の変化により、レイアウトフリーで楽しめるシステムはますます存在感を増している。今回紹介する商品は「Sonos Era 300」。世界中のさまざまな音楽配信サービスに対応でき、CDからリッピング、あるいはダウンロードした音楽も再生できるようにした、極めて汎用性の高いワイヤレススピーカーだ。ステレオからオーディオ空間という音楽の潮流が変化する今、ぜひ知っておきたい1台を紹介したい。
Text:Masakazu Honda
Edit:Misa Yamaji(B.EAT)
現代に再発明する新しい“ホームオーディオ”の常識
Sonosというブランドは日本への参入こそ2018年と遅い。
しかしながら、スピーカーをワイヤレス化するという斬新な着想と確かな技術で世界中から愛されるようになり、世界中に“ワイヤレスオーディオ”を普及させてきたブランドだ。彼らの製品はそのすべてが無線で接続され、レイアウトフリーで楽しめるようになっている。さらに多くのヒット曲を生み出してきたハリウッドの音楽コミュニティとも深い関係を築き、いかにして音楽を楽しむかを追求してきた。
ワイヤレススピーカーが数多く登場している昨今、ワイヤレスという特徴だけでは珍しくもないと感じるかもしれない。しかし、Sonosの提供するシステムは柔軟に構成でき、自宅内をくまなく音楽で満たすことができる。彼らは決して巨大企業ではないが、ワイヤレスオーディオでは長年のナンバーワンであり、業界を市場の面でも技術の面でもリードしてきた。このジャンルに5年以上投資をしてきたApple社も、Sonosには追いつけていないと表現すれば、彼らが特別なブランドだと理解いただけるだろうか。
そんなSonosが大きな時代の節目としてリリースしたのが「Sonos Era 300」だ。的確な音楽表現を手軽に、しかし高い品質で、スマートに体験できるこの製品が心踊らせる体験をもたらす理由は、的確に音楽制作のトレンドを捉えているからにほかならない。
ステレオから空間オーディオの時代へ
2023年2月、Sonos本社があるサンタバーバラには、ハリウッドで音楽制作に携わる人物が集まっていた。
グラミーを2度受賞したプロデューサー、作曲家のジャイルズ・マーティン、著名マスタリングエンジニアでSiA、ドリー・パートンなどの作品を手がけ女性として初めてグラミーを受賞したエミリー・ラザール。ほかにもロック、ヒップホップ、クラシックからイージーリスニングに至るまで、多くのアーティストから愛されてきたエンジニアが並んでいた。彼らが話したのは“空間オーディオ”がいかに革命的かという話だ。
空間オーディオとは、音楽を聴いたとき、その演奏が自分のまわりで実際に行われているかのような、音に包み込まれる体験ができる立体的な音楽表現のことだ。映画向け音響技術のDolby Atmosを用いて表現するが、使い方は異なる。
これまでの音楽制作では、さまざまなパートを個別に録音し、それを適切な表現でステレオ音声に割り付けることで行われてきた。ところが空間オーディオでは音源を立体的な空間の好きな位置に配置し、それぞれに音響特性を指定する。この技術は音楽制作のあらゆる側面を変えた。
例えばクラシック演奏。コンサートホール全体を立体音響として音作りしたうえで、主要楽器のパートを個別に割り当て、浮き上がらせるように聴こえる。単に周囲を囲むような音がするだけではなく、そこに高さの表現もあるため、地を這うようなコントラバスの音から天井に立ち昇るかのようなヴァイオリンの音色、突き刺さってくるブラスの鋭い音などが、実に明快に感じられるようになる。
ポピュラー音楽でも、かつてはステレオで工夫して立体感を出していた音源、例えばクラフトワークのツール・ド・フランス、クイーンのボヘミアンラプソディなどが、本当に立体的な編集になって再度楽しめるトラックに生まれ変わっている。もちろんアーティストにとっても表現のための道具であり、メジャーアーティストの新作は、空間オーディオで製作されることが半ば当たり前になってきた。彼らが口を揃えるのは、制約なく感じて欲しいままに楽曲体験をアレンジできることだ。
スタイリッシュなコンパクトスピーカー1台で空間を表現
もっとも空間オーディオは製作者にとっては魔法のようなツールだが、それを的確に再生することは難しい。なぜなら“そのままスピーカーから出せばいい”という情報ではないからだ。
ステレオで編集された音楽を再生する最良の方法は、2チャンネルで記録されたトラックを、可能な限り高い純度で2本のスピーカーから再生させることだ。これまでの常識では、その再生をどれほど高い純度で行うかで高級オーディオは、その純度を競ってきた。ところが、空間オーディオの世界ではこの常識が通用しない。
空間オーディオは最低2つのドライバユニットから、上限なく多数のチャンネルで立体空間を再現するため、再生時に各ユニットの信号を高精度な演算で作り出す仕組みだからだ。
手軽にこの音楽を楽しむ方法は、空間オーディオに対応したイヤホン、ヘッドフォンを用い、対応する配信サービスで音楽を再生すること。iPhoneならば、Apple MusicあるいはAmazon Musicのアプリを用い、Apple社製あるいはビーツ社製のイヤホン、ヘッドフォンを使うことで体感できる。
ホームオーディオであれば、Dolby Atmos(ドルビー アトモス)に対応したシアター向けサラウンドオーディオシステムでも再生できるが、ステレオ再生に特化したシステムでは、どれほど高価なシステムであろうと再生できない。スマートフォンの普及、音楽をストリーミングで楽しむ時代だからこそ、空間オーディオは音楽製作の現場や消費者にとって身近な存在へと急速に育ってきたのだが、いつもの生活空間に取り入れようとすると、一気にハードルが高くなってしまう。
Sonos Era 300は、そんな“空間オーディオが届かない”スペースに、新しい音楽体験をもたらしてくれる。必要なのは1台のスピーカーだけ。左右に少しばかりのスペースを残して配置すれば、それだけで明瞭かつ立体的な音場空間が生まれる。
カジュアルに音楽を楽しむライフスタイル
高級オーディオの世界では“作法”が極めて重要だ。
正しい位置にスピーカーを設置し、リスナーも正しい位置から正しい方向に向いて楽しむ。高い純度で再生される音は、2本のスピーカーから出ているとは思えないほど立体的で気持ちよく抜けるような音の空間が生まれる。正しい作法で、正しく再生すれば、信頼できるエンジニアが製作した心地よい音声トラックがあなたの聴覚を満たしてくれるはずだ。空間オーディオという新しい技術が必要だとは思わないだろう。
しかし部屋の中で自由に、好きな姿勢で、読書をしたり、何かの作業をしながら過ごしているとき、より表現力豊かな音楽に包まれたい。そう思うならば、Era 300の出番である。
Sonosのシステムは実に自由に構成できる。
あなたが2台の Era 300を用意すれば、2つをペアリングすることでさらに素晴らしい立体音響へと発展させることができ、ワイヤレスサブウーファーを追加することで心地よくもしっかりとした低音で支えられた音を手に入れることができる。
iPhoneのマイクを用いれば、音響補正も行ってくれるため、無線でレイアウトフリーなだけではなく、特別な知識がなくとも音楽制作のプロたちが認めた音質へとまとめ上げてくれる(冒頭で登場したエンジニアたちは、実際にSonos製品の音質をまとめ上げている人物たちだ)。
寝室に、あるいはキッチンに、書斎に、さまざまな場所に置かれたSonosは、専用アプリからすべてをコントロールでき、世の中で使われている大多数の音楽ストリーミングサービス、インターネットラジオを再生可能だ。
スタイルフリーとレガシーの見事な融合
さて、このEra 300を私のリスニングルームに迎えてからというもの、ほとんどの音楽を2台のEra 300で楽しむようになってしまった。その横には総額で30倍以上のプライスタグがついたシステムがあるにもかかわらずだ。
もちろん、ステレオ再生の品位は敵わない。
しかしリスニングルームで音楽を楽しみながら、こうして文章を書いているとき、心地よく感じるのは音楽製作者が整えた空間オーディオのトラックである。この新しい音楽の潮流に、まずはシンプルに交わってみてはいかがだろうか。
あなたの中にあるオーディオ、音楽体験の常識が変わるかもしれない。
Sonos era 300 問い合わせ先
Sonos Japan カスタマーセンター
0120-635-220
https://www.sonos.com/ja-jp/shop/
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