ワインラヴァ―
名ソムリエが選ぶ、珠玉のワイン
名シェフと呼ばれる料理人がいるレストランには、名ソムリエがいる――。というわけで、一流レストランのワインセレクトに携わるソムリエを訪ね、とっておきの銘柄をご紹介いただきました。いつもは「料理の引き立て役」と捉えられがちなワインですが、「このワインを飲むために、料理を食べに行きたい!」と思えるような、オリジナリティあふれるワインが揃っています。
text:Akemi Furuta photo:Shinichi Kimura
ホテルニューオータニの
トップソムリエ2人が推奨する5本とは?
M.O.F.(フランス国家最優秀職人章)を受章したルノー・オージエシェフが率いる、ホテルニューオータニ内のグランメゾン、トゥールダルジャン 東京。同店が構えるホテルニューオータニの地下ワインセラーには、1,000種類以上の銘醸フランスワインが眠っているといわれています。これらのワインの数々は、オージエシェフが手掛ける正統派フランス料理とペアリングされる瞬間を待っています。
そのトゥールダルジャン 東京のワインセレクトや管理をまかされているのが、トゥールダルジャン 東京のソムリエ、工藤順平さん。また、30店舗以上のレストランを構えるホテルニューオータニ全体のワインセレクトを担うのが、エグゼクティブシェフソムリエの谷 宣英(たに のぶひで)さん。当初はトゥールダルジャン 東京のシェフソムリエだったそうですが、現在はホテル内の飲料を一括管理。つまり、館内のレストランやルームサービスで楽しめるワインは、谷さんのお眼鏡にかなったものだけ、ということです。
2人のソムリエのおすすめのワインを紹介しましょう。
まずは、トゥールダルジャン 東京のソムリエ、工藤さんが「トゥールダルジャン 東京でぜひ味わってほしい」とセレクトしてくれた2本がこちら。レストランオリジナルのシャンパーニュと、果実味あふれる赤ワインです。
シャンパーニュ トゥールダルジャン ブリュット ブラン ドゥ ブラン
キュヴェ スペシャル 35周年アニヴァーサリー(写真左)
トゥールダルジャン 東京の35周年の際の記念特別ラベルのシャンパーニュ。パリ本店と3代にわたって付き合いのあるメゾンが醸造を手掛けたそう。グラン・クリュに格付けされたシュイイ村のシャルドネ100%で造られています。
「透明感のある色調に持続性のあるクリーミーな泡立ち、シトラスを思わせる爽やかな香りと、軽く焼き上げたパンのような香ばしいアロマ。ブラン・ドゥ・ブランの気品ある味わいが食卓のエレガンスを演出します」(工藤さん)
クロ ドゥ ラ ロッシュ 2007 ドメーヌ ポンソ(写真右)
150年近い歴史を誇るブルゴーニュの名門ドメーヌ・ポンソによる赤ワイン。ポンソは、グラン・クリュの畑であるクロ・ドゥ・ラ・ロッシュの最大所有者であり、ブルゴーニュ最高峰の生産者として知られています。
「独自の自然栽培、革新的な技術の導入など、こだわり抜かれた手法で生まれる味わいは、透明感のある、ピュアな果実味にあふれています」(工藤さん)
谷さんは、全日本最優秀ソムリエコンクール優勝、世界最優秀ソムリエコンクール日本代表などの華々しい経歴を持ち、令和2年度秋の褒章においては黄綬褒章を受章。名実ともに、日本屈指のトップソムリエとして活躍しています。
続いて、エグゼテクティブシェフソムリエの谷さんがホテルニューオータニでしか味わえないオリジナルのシャンパーニュと白ワイン、さらに、いち押しの赤ワインを紹介してくれました。
椀子 オムニス シャトー ・メルシャン(写真左)
長野県上田市丸子地区のワイナリーが手掛けた赤ワイン。2019年にホテルニューオータニで開催された「即位の礼」に伴う内閣総理大臣夫妻主催晩餐会にて、世界の賓客にも振る舞われました。
「熟したブラックベリーなど黒い果実の香りをベースに、チョコレート、ヴァニラなどの樽由来の香りが全体を優しく包み込みます。さらに、豊かな果実味とタンニンがワインに骨格を与え、素晴らしい味わいを表現しています」(谷さん)
シャンパーニュ ドラピエ オータニ ブリュット(写真中央)
名門メゾン・ドラピエ社が手掛けたホテルオリジナルのシャンパーニュ。有機栽培の実施や酸化防止剤の削減により、ブドウ本来のうまみを追求しています。
「完熟した黒ブドウの厚みと果実味が広がり、豊かな味わいが楽しめます」(谷さん)
リュリー レ プラントネイ ルイ マックス コレクション(写真右)
ホテルオリジナル、芳醇なドライタイプの白ワイン。ブルゴーニュ南部にある白ワインの名産地・リュリーで造られています。
「完熟したシャルドネを厳選して用いるため、熟したピーチや、爽やかな柑橘の香りが感じられます。味わいはクリーミーで、なめらかな質感です」(谷さん)
魅惑のワインの数々が待ち受けるホテルニューオータニ。各レストランのソムリエにアドバイスを求めつつ、最高のペアリングを見つけてみてください。
加賀の湯宿・べにや無何有で
国産ワイン×だしの饗宴を楽しむ
所変わって、加賀山代温泉の湯宿・べにや無何有(むかゆう)。こちらの宿には、北陸・加賀の食材×だしで魅せる懐石の名手、角(かく)博昭シェフが腕を振るう懐石方林(ほうりん)があります。
角シェフの料理は、“だし”が決め手。昆布と鰹のうまみを利かせた一番だしはもちろんのこと、食材や料理に合わせて工夫される特製だしの開発にも余念がありません。ソムリエの岡田雅代さんは、それを踏まえたうえでワインをセレクトしているそう。なかでも、日本固有種のブドウ・甲州100%で醸造した辛口のオリジナルワイン「Mukayu 白」は、だしとの相性が抜群だといいます。
「甲州ブドウは切れのよい酸味が特徴ですが、『Mukayu 白』は、樽醸造6カ月間、瓶熟成3年間以上の凝縮の白。ボディの強い果実味と酸味と樽香の絶妙なバランスで個性が極まります。このバランスが、だしを支えたり、口の中で味わいを変化させたりして、和食とのマリアージュを生み出すのです。それは、他のワインにはない部分だと自信を持って推薦できます」と岡田さん。
“果実味、酸味、樽香の絶妙なバランスが、優雅なワイン”であると教えてくれました。
このワインは、熟成が深まるほど琥珀色になり、ウイスキーのように甘やかな樽香が際立ちます。
現在、懐石方林でオーダーできるのは、2013年と2016年の2種類ですが、両方味わってみると違いが如実にわかるはず。若いワインは料理に寄り添い、ヴィンテージワインは料理に陰影を生んでくれるとか。例えば、繊細な刺身には2016年、だしの利いた煮物には2013年、といったようにペアリングするのがおすすめだそうです。
国産ワインのポテンシャルの高さを実感させてくれる「Mukayu 白」。べにや無何有に泊まって、夕食時に堪能してみてください。
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- トゥールダルジャン 東京
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- 東京都千代田区紀尾井町4-1
ホテルニューオータニ ザ・メイン ロビィ階 - Tel
- 03-3239-3111
- ウェブサイト
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- ウェブサイト
- https://mukayu.com/