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UX300h “version L” AWD
熟成した「UX300h “version L” AWD」の走りから見える、LEXUSが目指す電動車の操縦追従性と快適性の方向性

2018年に登場した「LEXUS UX」はSUVでありながら、一般的な立体駐車場に対応するコンパクトなボディとアーバンライクなスタイルが好評だ。それゆえ、最新モデルは発売から約6年経過した当初のデザインを大きく変更せずにラインアップされている。しかし、ボディ剛性やサスペンション、そしてパワートレーンやその制御方法などには度重なる改良が施されて、ドライバーの意思にレスポンスよく反応するスポーティでラグジュアリーなLEXUSらしい走り味を深めている。ここでは、モータージャーナリストの渡辺敏史氏があらためて最新モデル「UX300h “version L” AWD」に触れ、進化のポイントを前編・後編にわたって探る。

前編はこちらからご覧ください。

Text:Toshifumi Watanabe
Photo:Masami Sato

クルマを熟成へと導くLEXUSの思想

LEXUSのSUVラインアップにおいては、LBXに次いでコンパクトなUX。そのパワートレーンは100%電動化されている。ひとつはHEV=ハイブリッドの300h、もうひとつはBEV=バッテリーEVの300eだ。300hにはFFとAWD、ふたつの駆動方式が用意され、AWDの仕組みは前後にプロペラシャフトを持たず、後輪もモーターでドライブするE-Fourとなる。

取材車はUX300hで、グレードは最上級にあたる“version L”のAWD。動的質感にまつわる標準装備機能は、ベースグレードや“version C”に対して大径のホイールと低扁平タイヤを履くといった違いがある。一方で“F SPORT”は電子制御でダンパーレートを可変するAVSや、ボディ全体の共振を抑えてすっきりした減衰感をもたらすパフォーマンスダンパー、ステアリングまわりのブレース追加による剛性強化など、走りにまつわる施しはより入念だ。

コンパクトなボディの中にある、リヤに向かって吊り上がっていく強烈なプレスラインやフェンダーモールデザインなどから、運動性能の高さを感じられる。

LEXUSはすべてのプロダクトに対して「Always On」という概念を掲げている。すなわち歩みを緩めることなく、つねに前進、つまり改良を続けているわけだ。UXのHEVは当初250hという名称で登場したが、現在の最新モデルに至るまでもボディにスポット溶接の打点が追加され、300hへとスペックが向上した2023年の改変時にはラジエータサポートやロアバックパネルなどにガセットと呼ばれるパネルを追加して高負荷時の車体変形を抑える工夫が施されている。

クルマの基礎性能、素性のよさを高める開発環境

特に近年の改良においては、2019年に運用が開始された愛知県の「Toyota Technical Center Shimoyama」での走り込みによるフィードバック収集の効果が大きい。LEXUSはこの地に開発機能の大半を移設し、走っては直し・・・というアナログな工程を最短で実行する環境を整えている。

モータージャーナリストという仕事柄、取材にかこつけて世界の自動車メーカーのテストコースはあらかた走った経験があるつもりだが、Toyota Technical Center Shimoyamaは車体にかかる荷重負荷の強烈さや、グリップをあっさり失うトリッキーな路面の傾斜など、その意地の悪さはちょっとほかに類を見ない。

クルマを酷使するのがテストコースの役割とはいえ、よくもここまでひねくれた仕様にできたものだと変に感心してしまうほどだ。もちろん公道でしかわからないこともあるし、走れば走るほど課題が浮かび上がってくるのがクルマのつねだが、Toyota Technical Center Shimoyamaを経たLEXUSのクルマたちが、目に見えるほどの速度感で走りの質感を高めているのもまた確かだ。これはUXに限らず、各モデルのたゆまぬ進化に大いに貢献しているわけだ。

2023年12月の大幅改良でパワートレーンを刷新してシステム最高出力は146kW(199PS)に向上、また制御を改良することで快適性や運動性能をも高めている。

UXが250hから300hへとスペック向上する過程で、目に見えるわかりやすい変化はない。数値的にはわずかに出力が向上(システム最高出力:135kW→146kW)しているくらいだ。が、バッテリーをリチウムイオン式に置き換えて出し入れの速度耐性を高めていたり、AWDモデルについてはリヤモーターの出力を大幅に高めて(最高出力:5kW→30kW)オンロードでの旋回性にも積極的に関与させるなど、ここでも進化・・・というよりも深化の跡がはっきり見てとれる。

“version L”は幅広で柔らかな座り心地を提供する本革シートを標準装備する。シートカラーは写真のソリスホワイトのほか、ホワイトアッシュやブラック、ヘーゼルも用意される。

ハイブリッドの機能向上で得た快適性

街中で走る限りはそんな差異は感じとれないだろうと思われるかもしれないが、パワーマネジメント制御の変更で、キャラクターをがらりと変えているのが電動化パワートレーンの妙味だ。300hはバッテリーの応答性向上に合わせて、駆動力の依存度をエンジン側からモーター側へと高めており、街中の加減速においてはエンジンの回転数を高めることもなく、モーター主体でしずしずと走ってくれる。

操作性に優れる太めの本革ステアリングホイールの奥には、モーター回生とエンジンブレーキによる減速力を調整できるパドルシフトが採用されている。

250hでは、搭載するエンジンは強烈に高効率な内燃機である一方で、回転数の上昇とともに独特の共鳴音がやや耳につくところがあった。しかし、300hではエンジンが稼働する時間やタイミングを調整するだけでなく、エンジンコンパートメントからの遮音も強化しているため、発進や高速道路での合流など加速を要する際にもせわしなさを感じることはない。

アクセルペダルを全開にするような急加速ではさすがにエンジンも一気に吹け上がり駆動に加勢することになるが、そこでも上質感が著しく削がれる感がないのは、やはり4気筒の利といえるだろう。一方でブレーキの側もこなれたもので、モーター回生と機械式との減速協調が完璧に調律されている。この辺りはハイブリッドに精通するメーカーならではの豊富な経験がなせるところだと思う。

ちなみに300hは250hに対して、WLTCモード燃費で1割以上も向上している。車格的にパーソナルカーとしての色合いが濃いLBXに対すれば、燃費では肉薄しながらファミリーカーとしても不満を抱かせない後席居住性と荷室容量を備えるなど、柔軟性はすこぶる高い。同じブランド内で競争力を切磋琢磨しているのも選ぶ側にとっては一興だが、そのくらい、UXは長きにわたり商品力を保ちつづけている、捨て置きならない存在であることは間違いない話だ。

リヤにモーターを搭載するUX300h “version L” AWDは、滑りやすい路面だけでなくコーナリングや高速道路などさまざまなシーンで高い安定性や直進性を実現する。

筆者プロフィール
渡辺敏史/Toshifumi Watanabe

二輪・四輪誌の編集を経て、フリーランスのモータージャーナリストに。以来、自動車専門誌にとどまらず、独自の視点で多くのメディアで活躍。緻密な分析とわかりやすい解説には定評がある。


LEXUS UX300h “version L” AWD 主要諸元

・全長×全幅×全高:4,495×1,840×1,540mm
・ホイールベース:2,640mm
・車両重量:1,580kg ※1
・パワートレーン:M20A-FXS・直列4気筒+2モーター
・エンジン総排気量:1,986cc
・エンジン最高出力:112kW(152PS)/6,000r.p.m.
・エンジン最大トルク:188N・m/4,400-5,200r.p.m.
・モーター最高出力:前83kW(113PS)、後30kW(41PS)
・モーター最大トルク:前206N・m、後84N・m
・トランスミッション:電気式無段変速機
・駆動方式:E-Four(電気式4輪駆動方式)
・燃料・タンク容量:レギュラー・43L
・WLTCモード燃費:25.0km/L ※2
・タイヤサイズ:225/50R18
・車両価格(税込み):565万7,000円
※1:“マークレビンソン”プレミアムサラウンドサウンドシステムを装着した場合、10kg増加。ムーンルーフを装着した場合、20kg増加。225/50RF18ランフラットタイヤ&アルミホイール(切削光輝+ダークグレーメタリック塗装)を装着した場合、20kg増加。
※2:225/50RF18ランフラットタイヤ&アルミホイール(切削光輝+ダークグレーメタリック塗装)を装着した場合は23.4km/L。

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