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UX300h “version L” AWD
「LEXUS UX」が長きにわたって支持される理由。改良と新技術の投入で高めた運転のしやすさと快適性能とは
「LEXUS UX」が2018年に発表されて約6年。その間にRZやLBXといったブランニューモデルの誕生、そして電動モデルの追加などLEXUSラインアップの環境も変化してきたが、ちょうどいいサイズ感による運転のしやすさや燃費性能に優れたハイブリッド車の用意など、いまだ根強い人気を維持しているコンパクトSUVである。この人気を支えているのは、新技術の投入やユーザーニーズの変化などに対応した一部改良がたゆまず行われてきたことも大きな理由のひとつだろう。ここでは、モータージャーナリストの渡辺敏史氏があらためて最新モデル「UX300h “version L” AWD」に触れ、進化のポイントを前編・後編にわたって探る。
Text:Toshifumi Watanabe
Photo:Masami Sato
LEXUSに根づく、進化を続けるための「Always On」の指針
日々の生活でもストレスなく使える「小さなLEXUS」の新たな選択肢となったのが2023年に登場したLBX。これまで、そのニーズを一手に引き受けていたUXは、車格という面から見ればそのひとつ上のところに位置づけられる。
とはいえ4,495mmの全長、1,840mmの全幅は、近年登場したSUVたちのサイズ感からいえば十分にコンパクトだ。そして全高は1,540mmと、大半の機械式駐車場にも対応できるところに収まっている。大人4人が乗るにはさすがにギリギリというサイズ感のLBXに対すれば、ファミリーカーとしても通用する居住空間を持つというところで、UXは求められる理由のある「小さなLEXUS」といえるだろう。
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パワートレーンは2018年のデビューから幾度かの変遷を経て、現在は2L直4+モーターによるHEV(ハイブリッド車)の「UX300h」とBEV(電気自動車)の「UX300e」という、2本立てのオール電動ラインアップとなっている。
BEVは搭載するリチウムイオンバッテリーを見直して容量を拡大、これにともなう航続距離の延伸など細かな進化を重ねているが、一方のHEVも2023年末にはエンジン本体を含むシステム刷新でパワーを高めたのに加えて、4WDについては駆動用リヤモーターの最高出力を大幅に向上させるなど伸びしろの大きなマイナーチェンジが加わった。これは年次ごとにたゆまずクルマを進化させるという「Always On」の指針に沿ったものだ。
スマートフォンの進化とともにインテリアの機能も刷新
運転席に座ってみると、車格の“ちょうどよさ”は視界からも伝わってくる。ボンネットフードの左右端部からフロントフェンダーにかけて少し持ち上げられたデザインは、車幅の認識度を視覚的にも高めてくれており、狭い路地や駐車場などにおける取り回しでも気遣いは最小限で済みそうだ。
身長181cmの筆者がドライビングポジションを整えたところでリヤシートに座ってみても、膝まわりにはぼちぼち余裕がある。広大とまではいわないが、大人4人での移動には必要十分な広さといえるだろう。また、登場当初はラゲッジルームの高い床面に阻まれて、荷室容量の小ささが指摘されることもあったが、マイナーチェンジを受けて床面の高さを2段階調整できるようになりこのクラスとしては平均的な容量へと改善された。
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装備面ではインフォテインメントシステムが大きく改善され、センターディスプレイは12.3インチと大型化、さらにタッチパネルコントロール式へと変更を受けている。手持ちのスマートフォンとのリンク機能もバージョンアップされており、専用アプリを介してドアロックの解錠・施錠、そしてシステム始動も可能なデジタルキーの採用、Apple CarPlayやAndroid Autoの利用も可能となっている。
またモバイル機器の充電に用いる有線ポートにUSB Type-C(前席2個+後席2個)を導入、USB Type-A(1個)と合わせて乗車定員分のソケットを用意したことになる。このほかにも、オーディオ機器はCDをはじめとする光学ドライブのスロットを持たないゼロスピンドルノートとし、またセンターコンソール形状の変更にともなって、オプション設定されている“マークレビンソン”プレミアムサラウンドサウンドシステムを選択すると「Mark Levinson」のロゴマークがスピーカーに配されることとなった。
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安心・安全を支える先進運転支援システムの進化と機能追加
UXの機能的進化という点でいえば、ADAS=先進運転支援システムのアップデートや新機能の搭載をはずすことはできない。Lexus Safety System+は、交差点右折時の対向直進車や右左折方向の歩行者検知なども可能となったほか、後退時のパーキングサポートブレーキ、AIによる車線認識情報を反映し精度を高めたレーントレーシングアシスト(LTA)、制御を高精度化したレーダークルーズコントロール(全車速追従機能付き)、先行車の速度変化に合わせて自然な減速をサポートするプロアクティブドライビングアシスト(PDA)など、最新世代のほかのモデルと比べても遜色のないシステムが搭載されている。
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さらに、目に見えないシャシーやサスペンションのセットアップもこの6年余りで様変わりした。ボディはドアやリヤゲートなどの開口部にスポット溶接を増し打ちして剛性を強化、スポーティグレードの“F SPORT”にはステアリングギヤブレースやパフォーマンスダンパーを追加設定、電子制御可変レートダンパー=Adaptive Variable Suspension system(AVS)を採用して、走りの質感を向上させている。
と、モデルライフの間にこれほど多岐にわたる変更を受けていることもあって、UXは機能面で件のLBXや、ひと回り大きいNXなどに対しても、古さを感じることがない。
最新のRXやNXなどでの採用が始まった「スピンドルボディ」・・・フロントグリルを面ではなく立体として表現するデザインこそUXには採用されていないが、スピンドルグリルを巧く自分のものとした、齢を感じさせない普遍的なデザインという印象を抱くのは僕だけではないだろう。
では果たして、走りの側はどのように変わっているのだろうか。後編は3月21日公開。
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筆者プロフィール
渡辺敏史/Toshifumi Watanabe
二輪・四輪誌の編集を経て、フリーランスのモータージャーナリストに。以来、自動車専門誌にとどまらず、独自の視点で多くのメディアで活躍。緻密な分析とわかりやすい解説には定評がある。
LEXUS UX300h “version L” AWD 主要諸元
・全長×全幅×全高:4,495×1,840×1,540mm
・ホイールベース:2,640mm
・車両重量:1,580kg ※1
・パワートレーン:M20A-FXS・直列4気筒+2モーター
・エンジン総排気量:1,986cc
・エンジン最高出力:112kW(152PS)/6,000r.p.m.
・エンジン最大トルク:188N・m/4,400-5,200r.p.m.
・モーター最高出力:前83kW(113PS)、後30kW(41PS)
・モーター最大トルク:前206N・m、後84N・m
・トランスミッション:電気式無段変速機
・駆動方式:4WD
・燃料・タンク容量:レギュラー・43L
・WLTCモード燃費:25.0km/L ※2
・タイヤサイズ:225/50R18
・車両価格(税込み):565万7,000円
※1:“マークレビンソン”プレミアムサラウンドサウンドシステムを装着した場合、10kg増加。ムーンルーフを装着した場合、20kg増加。225/50RF18ランフラットタイヤ&アルミホイール(切削光輝+ダークグレーメタリック塗装)を装着した場合、20kg増加。
※2:225/50RF18ランフラットタイヤ&アルミホイール(切削光輝+ダークグレーメタリック塗装)を装着した場合は23.4km/L。
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