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LEXUSに乗って食べに行きたい
深まる秋の旬。美味なるきのこを目指して行きたいレストラン3選

秋が深まるにつれ、豊かな香りとうまみをたたえる、きのこ。焼く、蒸す、煮るといった火入れや、組み合わせる食材によって、その表情は驚くほど多彩に変化する。今回訪ねたのは、そんな秋の恵みと向き合い、料理人ならではの感性と技で忘れがたいひと皿へと昇華する3軒。この時季にしか出合えない香り、食感、奥深い滋味を求めて足を運びたくなる、とっておきのレストランを紹介する。

Text:Misa Yamaji(B.EAT)

森で採り、薪火で調理する。野趣に満ちたきのこ料理を楽しむ
「MANO」(長野県・軽井沢)

2024年7月、南軽井沢に開業した「MANO」。オーナーシェフの西本竜一氏は、スペインで薪火料理の技を磨き、帰国後も自然の中で得られる食材と火に向き合ってきた料理人である。

「MANO」とは、スペイン語で「手」のこと。その名のとおり、この店が大切にしているのは、人の手で丁寧に生み出されたものだ。西本氏自身が森を歩き、慈しむように採取した食材。そして、信頼する生産者の確かな手によって育てられた食材を使い、薪で起こした火で調理する。

店に入ると、ふわりと薪のいい香りに包まれる。

森を歩いて採ったものを、薪火で料理する。それはいわば原始の時代から変わらない手法である。しかし、そこから生まれる料理は、きわめて自由で現代的だ。「これをこうしたら、おいしいよね」と、次から次へと浮かぶアイデアを楽しそうに語る西本氏。その様子を見ていると、料理をすることが心から好きなのだと伝わってくる。

オーナーシェフの西本竜一氏。

そんな西本氏にとって秋の楽しみといえば、晩夏から晩秋にかけて迎えるきのこの季節である。シーズンになると待ちきれないように早朝から北アルプス山麓へ向かい、自ら森を歩いてきのこを探す。最盛期には10種類近いきのこが採れることもあるという。採取を終えると店へ戻り、そのままコースの仕込みに取りかかる。

筆者が訪れた日は9種類の天然きのこがずらり。Photo:Misa Yamaji

コースの始まりは、「森のスープ」から。乾燥させたヤマドリタケモドキと夏鹿のすね肉を、水と塩だけで仕立てた一杯である。口に含めば、滋味深い味わいとともに、深い森の湿り気を帯びた空気に包まれるような感覚を覚える。

ブリオッシュには、きのこのバターを添えて。クライマックスは、採れたてのきのこの薪焼きだ。この日集まったのは9種類。

タマゴタケ、ヤマドリタケ、アカヤマドリタケ、チチタケ、ナラタケモドキなどを薪焼きに。さまざまなきのこの香りと食感が口の中でにぎやかに交錯する。

それぞれ歯触りも、香りも、味わいも異なる。シンプルに薪焼きにし、乾燥アカヤマドリタケから取っただしに塩とみりんを加えた「きのこ醤油」を合わせる。一つひとつの個性を活かしながら、きのこ醤油が指揮者のような役割を果たし、皿全体を見事にまとめている。

馬肉のタルタルには、きのこのペーストを隠し味に。さらには、アカヤマドリタケを使ったアイスクリームがデザートとして登場することもある。前菜からデザートに至るまで、きのこを多彩な表情で味わわせてくれるのだ。

アカヤマドリタケのアイスクリーム。

カウンターに座り、薪のはぜる音と香りに包まれながら、心躍るきのこ料理を味わう。食事を終える頃には、「来年もまた、この季節にこの席へ戻ってきたい」と思わずにはいられないだろう。

MANO

住所:長野県北佐久郡軽井沢町発地553-3
電話番号:非公開(予約はTableCheckから)
営業時間:ランチ12時~、ディナー18時~*一斉スタート
定休日:火曜・水曜
駐車場:あり(レイクニュータウン内)

◇MANO 公式インスタグラム
https://www.instagram.com/mano_karuizawa/

フランスの森の記憶を映す、きのこ料理
シャントレル(東京・代々木八幡)

世界にその名を知られる“きのこの魔術師”といえば、フランス・オーヴェルニュ地方、サン・ボネ・ル・フロワ村の三つ星レストラン「レジス・マルコン」(現在「Restaurant Marcon(レストラン・マルコン)」)のシェフ、レジス・マルコン氏だろう。

カウンター奥のキッチンで料理をするシェフの中田雄介氏。

そんなマルコン氏のもとで薫陶を受け、修業時代の大切な思い出を自身の店の名にしたのが、代々木八幡の住宅街にたたずむフランス料理店「シャントレル」のシェフ、中田雄介氏である。シャントレルとは、ジロール茸とも呼ばれるきのこのこと。ここでは中田氏が修業時代から学んできた伝統的なフランス料理の技法を大切にしながら、日本の旬の魚介や生産者から届く野菜を取り入れ、四季を感じさせる料理を提供している。

レジス・マルコン氏から受け継いだ「きのこのお茶とフォアグラのマカロン」は、コースの最初に必ず出す挨拶代わりの一皿。マッシュルームをベースにその季節のきのこの軸や乾燥ジロール茸などを4時間煮出し、最後は卵白で澄ませて作る。

中田氏にとって、「レジス・マルコン」で過ごした日々は、料理人人生のなかでも特別なものだったという。

今でこそ、マルコン氏のレストランを目指して世界中から人が訪れるが、かつてのサン・ボネ・ル・フロワは、マルコン氏の両親が営む小さな宿がぽつんと立つような静かな村。しかし周囲の森は良質なきのこに恵まれ、秋になるとセップ茸を取引する商人たちで賑わった。

店名にもなっている「シャントレル」。店では基本的にフランスのきのこを使用。

「マルコンシェフは、夏は草原で、冬は森で、早朝からたくさんのきのこを採って料理をしていました。私がここで一番採ったのが、シャントレル。このきのこは強くて、冬に雪の下を掘ると、群生して元気に生えているんですよ。そんなところも大好きでした」

分厚くカットして、バターでソテー。「フレッシュのセップの魅力は、シンプルに調理するのが一番」と中田氏。

そんな中田氏が秋から春にかけて料理したくなるのが、自身の大切な記憶と結びついた、フランス産のフレッシュなきのこである。シャントレルはもちろん、セップ、トランペット、ラクテール、そしてトリュフ。それぞれに異なる食感や香りの個性を、フランス料理の確かな技法で引き出していく。

「僕にとって、きのこはとても素敵なフランスの森の思い出。ノスタルジーを感じるものなんです」

マルコンシェフのスペシャリテでもあった、「仔羊のパン包み焼き」。ロゼール産の仔羊を牧草とともにパンで包んで蒸し焼きに。青い草の香りをまとったミルキーで柔らかい仔羊を、骨で取ったジュとともに。添えるのはシャントレル。

夏の終わりの草原の中に生えているきのこ。秋、深い森の落ち葉の中から顔を出すきのこ。さまざまなきのこが、時に主役となり、時に黒子となりコースの中でさまざまな表情を見せてくれる。ひと皿の向こうにサン・ボネ・ル・フロワの森が浮かぶ料理を味わいに、この秋にぜひ訪れてみてほしい一軒である。

シャントレル

住所:東京都渋谷区元代々木町24-1 アブニール元代々木1階
電話番号:03-5465-0919
営業時間:火~金曜18時~20時(ラストオーダー)、土・日曜12時~13時(ラストオーダー)、18時~20時(ラストオーダー)
定休日:月曜
駐車場:なし
◇レ・シャントレル 公式WEBサイト
https://chanterelle.jp/

富士山の天然きのこで表現する、日本の秋
シェフズ・テーブル by Katsuhito Inoue(京都・中京区)

ザ・リッツ・カールトン京都にある、わずか8席の「シェフズ・テーブル by Katsuhito Inoue」。ヘッドシェフの井上勝人氏が料理の道標としているのは、日本の季節を細やかに捉える「七十二候」である。

8席の石造りのテーブルには、ホテル専属の庭師が苔や季節の草花を使い、毎日しつらえる小さな庭園が広がる。

そんな「シェフズ・テーブル」で秋の顔となっているのが、富士山麓で採れる多種多様な天然きのこだ。

井上氏と、現在きのこを届けているきのこハンターとの出会いは約10年前。知人ときのこ狩りにでかけた帰りにその人物の店へ立ち寄り、話をしたことから交流が始まった。以来、毎年夏頃から11月末頃まで、富士山で採れた天然きのこが届けられている。

この日届いた、色とりどりの天然きのこ

富士山では標高によって気温が異なるため、きのこは山の下から現れ、季節が進むにつれて採れる標高が少しずつ変わっていく。そのため、長い期間にわたって多様な種類を採ることができるという。採取後すぐに送られてくるので、鮮度のよい状態で料理に使えることも日本の天然きのこのメリットだろう。

ヘッド シェフの井上勝人氏。

イタリアやスペインでも経験を積んだ井上氏は、日本はきのこの種類が圧倒的に多いと話す。同じ種類でも、育つ環境によって香りや食感、味わいは異なる。日本の山や森で育つ天然きのこには、繊細で複雑な個性があるのだ。

「その年の気候や収穫に応じて使う種類を変えるため、毎年少しずつ異なる味わいになるのも面白いですね」

きのこをたっぷりと使ったリゾットは人気の一品。

天然きのこが届くと、きのこを主役にした米料理がシグネチャーとしてコースの最後に登場する。「天然茸のリゾット」は、富士山麓の天然きのこを七谷地鶏の出汁と米で仕立てたひと皿。米が鶏ときのこのうまみを吸い込み、口に運ぶと、森の香りとともに日本の里山の情景が浮かんだ。

「ほかにも松茸を使った料理も好きです。火を入れ過ぎず、生に近い状態で使うことで独特の香りや食感を楽しんでいただけたら」

その年、その時季に山から届いたきのこで、日本の秋を描く。ここで味わえるのは、井上氏の眼差しを通して映し出された、移ろいゆく季節のひと皿である。

シェフズ・テーブル by Katsuhito Inoue

住所:京都府京都市中京区鴨川二条大橋畔 ザ・リッツ・カールトン京都1階
電話番号:075-746-5522(レストラン予約)
営業時間:18時一斉スタート (要予約)
定休日:日曜・月曜
駐車場:あり(ザ・リッツ・カールトン京都の有料駐車場 *シェフズ・テーブル by Katsuhito Inoueをご利用のお客様は無料でご利用いただけます。)
◇シェフズ・テーブル by Katsuhito Inoue 公式WEBサイト
https://chefstable.ritzcarltonkyoto.com/

また、moment「Autumn 2026」号のFeature3(p.24~p.29)「キノコという秋の美味なる香り」では、“きのこの魔術師”として知られるレジス・マルコン氏へのインタビューを掲載。こちらもあわせて読んでいただきたい。