東京・名古屋・大阪の香道教室を紹介
日本独自の歴史ある芸道のひとつである「香道」を体験する
moment「Autumn 2026」号で特集した、人生を豊かにする「香り」の力。Feature_4では「深淵なる香道の世界」と題して、日本独自の歴史ある芸道のひとつであり、マインドセットにも通じる香道について紹介しているが、実際、どこで学ぶことができるのだろうか。この記事では、初心者でも香道を体験することのできる教室を、東京・名古屋・大阪の3都市で紹介する。
Text:Shigekazu Ohno(lefthands)
香りを「聞く」時間を日常に。はじめての香道をどこで学ぶか
香炉を手に取り、静かに鼻へ近づける。ひと息、香りを「聞く」。長い年月を経た香木から立ち上る香りは、華やかだったり、清冽だったり、時にはかすかな甘みを帯びていたりする。その微細な違いに意識を集中させているうちに、いつしか日常の喧噪が遠ざかっていく――。
moment「Autumn 2026」号のFeature_4「深淵なる香道の世界」では、日本独自の芸道である香道の歴史と、その奥深い楽しみを紹介した。香道で行われるのは、単に香りの種類を当てることではない。例えば「組香」では、和歌や古典文学、季節の風物などを題材に複数の香を聞き、その背景にある物語や情景に思いを巡らせる。嗅覚だけではなく、記憶や想像力、美意識までも働かせるところに、この芸道ならではの面白さがある。
では、本誌を読んで「一度、自分でも香を聞いてみたい」と思ったら、どこへ行けばいいのだろう。実は香道は、想像するほど敷居の高い世界ではない。初心者を受け入れている教室もあり、洋服のまま参加できるところもある。ここでは、本誌の取材に協力いただいた御家流香道桂雪会をはじめ、東京・名古屋・大阪で香道への扉を開いている教室を紹介しよう。
本誌の香道特集にも登場した「御家流香道桂雪会」
本誌の撮影と取材に協力いただいたのが、御家流香道桂雪会だ。香道にはいくつかの流派があるが、御家流は室町時代、三條西実隆を始祖として成立したとされる。本誌でも紹介したように、公家文化の流れを汲み、香りそのものだけでなく、和歌や古典文学、四季の情景とともに香を味わうことを大切にしてきたという。桂雪会で香道を学ぶ魅力も、まさにそこにある。
稽古では、まず香の聞き方や基本的な作法、香木の種類などを学び、簡単な組香からスタート。経験を重ねるにつれ、季節の組香、香元の点前、記録を担当する「執筆」の作法などへと進んでいく。古典文学や伝統行事、香にまつわる歴史も同時に学ぶため、香りを入口として日本文化そのものへの理解が深まっていくのも面白い。現在、東京・品川区の目黒学園カルチャースクールでは桂雪会による木曜・土曜の講座が設けられ、随時体験も受け付けている。
※2026年9月現在。
本誌に登場した香道御家流桂雪会顧問の熊坂久美子氏は、香道について、何人かが一座して香を焚き、その香りを味わいながら情緒を楽しむもの、と説明する。「道」という文字から、厳格な作法の世界を想像するかもしれない。しかし、まずは香りを楽しむ。それが香道への入口なのだ。
御家流香道桂雪会の情報については、WEBサイトで検索してください。
エコールプチピエ銀座の香道教室
次に紹介するのが、こちらも都内にあるエコールプチピエ銀座だ。銀座の中心にあるカルチャースクールで、茶道、日本舞踊、長唄、能、いけばな、書道など、日本の伝統文化を中心とした講座が揃う。スクールが掲げているテーマは「大人の上質な趣味時間」。仕事帰りや銀座での買い物、食事の前後にも立ち寄れる、街中の小さな学びの場である。
ここで御家流香道を指導しているのが、moment「Autumn 2026」号で香道特集の執筆を担当した株式会社emu代表の富川匡子氏だ。本誌で香道の長い歴史をひもときながら、その魅力を現代のマインドフルネスにまでつなげて紹介した富川氏から、今度は実際に香を聞きながら学ぶことができる。
エコールプチピエ銀座では、香道を「目に見えない雅なお香の世界をやさしく学ぶ」講座として紹介している。香道に興味はあるものの、「いきなり本格的な稽古場を訪ねるのは少し緊張する」という人にとって、銀座のカルチャースクールという環境は、最初の一歩を踏み出しやすいだろう。本誌の記事を書いた人物とともに、誌面で紹介された香りの世界を、今度は自分の五感で確かめる――。moment読者にとっては、そんな“記事の続き”を体験できる教室でもある。
※受講時間により講師が異なります。
エコールプチピエ銀座 公式WEBサイト
https://ecole-ppginza.jimdoweb.com/
東京・名古屋・大阪で学ぶ。NHKカルチャーの「香道 御家流」
東京以外の読者にも、香道への入口は開かれている。全国で文化講座を展開するNHKカルチャーでは、東京・青山、名古屋、大阪・梅田の各教室で御家流の香道講座を開講している。
青山教室の「初心者から学べる 香道 御家流(日曜クラス)」は、第4日曜日に開催。日本の四季や花鳥風月、和歌、物語、古来の行事などを香木の香りによって表現しながら味わう。初心者の参加を歓迎しており、着物ではなく洋服で受講でき、椅子と机を使って行われるのも嬉しい。
NHKカルチャー青山教室「香道 御家流」 公式WEBサイト
https://www.nhk-cul.co.jp/programs/program_443899.html
名古屋教室の「香道入門~御家流~」も、初歩から学ぶことを前提とした講座だ。毎回、季節に合わせた組香を取り上げ、“香あそび”を楽しみながら作法を学ぶ。こちらも椅子席で、第2土曜日の開催。現在の講座は途中からの受講も可能となっている。
NHKカルチャー名古屋教室「香道入門~御家流~」 公式WEBサイト
https://www.nhk-cul.co.jp/programs/program_441188.html
大阪の梅田教室では、第3日曜日に「香道 御家流」を開催。初心者はまず香りを聞くことを中心に基本を学び、継続して学ぶ人は、香元を補佐する「助技」や「執筆」の稽古へと進んでいく。香りを通じて四季や花鳥風月、和歌、物語などに触れ、日本文化の美意識をより深く知ることのできる講座だ。
NHKカルチャー梅田教室「香道 御家流」 公式WEBサイト
https://www.nhk-cul.co.jp/programs/program_435282.html
香道では、香りを「嗅ぐ」とはいわず、「聞く」という。その言葉には、かすかな香りに意識を傾け、そこから何かを受け取ろうとする日本人独特の感性が表れているのかもしれない。
スマートフォンを置き、目の前の香炉に意識を集中する。1片の大きさが数ミリほどの小さな香木から立ち上る香りを探し、その奥にある季節や和歌、遠い時代の物語に思いを巡らせる。本誌で紹介した香道の世界は、決して博物館の中だけに残された古典文化ではない。
忙しい日常の中で感覚を研ぎ澄まし、ほんのひととき時間の流れを緩める――。500年以上受け継がれてきた「香を聞く」という行為は、むしろ現代を生きる私たちにこそ、新鮮な時間をもたらしてくれるのではないだろうか。まずは一度、香炉を手に取ってみよう。そこから、香りを巡る長い旅が始まるはずだ。
moment「Autumn 2026」号の香道特集
moment「Autumn 2026」号のFeature_4(p.30~p.35)では「深淵なる香道の世界」と題して、日本独自の歴史ある芸道のひとつであり、マインドセットにも通じる香道について紹介している。こちらもあわせて読んでいただきたい。
※画像はすべてイメージです。