パテック フィリップ、オーデマ ピゲ、ヴァシュロン・コンスタンタンが揃い踏み
クルマ好きの心を揺さぶる、スイスのハイエンド・ウォッチ3選
時計王国スイスにおいて一目置かれる特別な存在であり、“世界3大ブランド”とも称されるのが、パテック フィリップ、オーデマ ピゲ、ヴァシュロン・コンスタンタンである。1998年からスイス時計見本市の取材を行っているジャーナリスト数藤 健氏が、2026年発表の最新モデルの中から、クルマ好き、メカニズム好きの琴線に触れるタイムピース3本をセレクト。“ハイエンド・ウォッチの新世界”を紹介する。
Text:Ken Sudo
Edit:Shigekazu Ohno(lefthands)
1.パテック フィリップ 5204G
スポーティなルックスのスプリットセコンドクロノグラフ、永久カレンダー
2026年春、世界最大級の時計見本市「ウォッチズ・アンド・ワンダーズ ジュネーブ」でパテック フィリップから発表された、スプリットセコンド・クロノグラフと永久カレンダーを備える超複雑時計=グランド・コンプリケーションが「5204G」だ。全面ポリッシュ仕上げのホワイトゴールド・ケースに、2つのコラムホイールと水平クラッチ、そして複雑な永久カレンダー機構を備えた手巻きムーブメントを搭載している。
文字盤を見ると、まず複雑機構を物語る多彩な針に目を奪われる。ネイビーブルー・ソレイユ文字盤の3時位置に瞬時運針式の30分計を、9時位置にスモールセコンドを配置。クロノグラフに関する6件とスプリットセコンドに関する1件からなる、合計7件の特許を保持する、技術革新の粋を集めたモデルである。
永久カレンダーは、各月末の31・30・28日、および閏年の29日を自動的に判別し、2100年2月28日まで調整の必要がない。曜日と月は12時位置に並んだ2つの窓に表示。6時位置にムーンフェイズと、日付を指針表示。タキメーターの目盛りはブルー文字盤とコントラストをなすホワイトで、視認性に優れる。ホワイトゴールドの植字アワーマーカーは、ファセット(面取り)仕上げのオビュ(弾丸)型だ。
写真は、レッドのステッチが入ったファブリック柄のネイビーブルー・コンポジット・バンドを装着。レッド・ステッチのダークブルー・アリゲーター・バンドも付属する。LEXUSのスポーツカーやスーパーカーのステアリングを握る手元に似合いそうな、若々しさも備えた超高級クロノグラフである。
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パテック フィリップ ジャパン・インフォメーションセンター
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2.オーデマ ピゲ ロイヤル オーク フライング トゥールビヨン
“ナイトブルー、クラウド 50”カラーのセラミックを採用したトゥールビヨン
2026年6月に発表された“ナイトブルー、クラウド 50”カラーのセラミックを採用した「ロイヤル オーク フライング トゥールビヨン」。メゾンが位置するスイス・ジュウ渓谷の星空を想起させる、オーデマ ピゲを象徴するカラーだ。深みのある色調が、ケース、ベゼル、リュウズ、ブレスレット全体にわたって施されたこの高耐性セラミックは、すべての時計部品における均一な色だしの実現を目指し、開発に多くの工程を要している。
時計の心臓部には、フライング トゥールビヨン ムーブメントを搭載。ホワイトゴールド製のアワーマーカーと針が洗練されたコントラストを演出し、サファイアケースバックからはロジウムトーンのピンクゴールド製ローターを鑑賞できる。“ナイトブルー、クラウド 50”カラーのセラミックがロイヤル オーク フライング トゥールビヨンに用いられるのは、初めてのこと。最先端のセラミックに伝統的な手仕上げを施すことで、銘品ロイヤル オークの美しさをいっそう際立たせている。
ダイアルには“ナイトブルー、クラウド 50”の“グランドタペストリー模様”が輝き、エレガントなモノトーンの美学が際立つ。バトン型のアワーマーカーとホワイトゴールド製の2針を配し、時・分を示す。6時位置には上部ブリッジを持たないロジウムトーンのトゥールビヨンを配し、宙に浮かんでいるかのような印象を生む“フライング トゥールビヨン”ならではの構造を強調している。
主張しすぎないミニマルなデザインと落ち着いたカラーは、LEXUSのスポーツサルーンやSUV、ラグジュアリームーバーでのナイト・クルージングに似合いそう。洗練されたエレガンスと繊細さをあわせ持つモデルだ。
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3.ヴァシュロン・コンスタンタン トラディショナル・ツインビート・パーペチュアルカレンダー
瞬時に日付を送ることができるパーペチュアルカレンダー。パワーリザーブは約70日間
2019年にヴァシュロン・コンスタンタンが発表した「トラディショナル・ツインビート・パーペチュアルカレンダー」は、ユーザー視点に立って設計・開発を行ったタイムピースだ。高速振動のアクティブモードと、低速振動のスタンバイモードの2通りの振動数を選べるムーブメントを搭載し、直列に配した同軸の香箱が2つの輪列を駆動する。
2026年6月に発表された最新作は、この特許取得済みの革新技術により、精度を損なうことなくムーブメントのパワーリザーブを驚異的に進化させた。約70日間のパワーリザーブは、自社開発・製造の「キャリバー3610 QP」を最適化したことで実現。新デザインのオープンワークダイアルが、その洗練された個性と革新的精神を際立たせる。
パーペチュアルカレンダーは時計製造の最高峰とされる複雑機構で、ムーブメントが巻き上げられている限り駆動しつづける。特筆すべきはカム(回転・移動する部品)機構で、それによりムーブメントはグレゴリオ暦特有の規則を正確に守り、2100年までカレンダーの修正を必要としない。
そして、自動巻き機構を備えていないタイムピースでは、ムーブメントのパワーリザーブが極めて重要になる。同社の時計師と技術者は、タイムピースを着用していないときも、ムーブメントの動作と精度を損なうことなく3610 QPの駆動・持続時間延長を実現した。例えば、瞬時にジャンプして切り替わるパーペチュアルカレンダーの表示も重点的に見直した。切り替えに要するトルクを従来の瞬間ジャンプ式機構の1/4に抑え、日付変更にかかる動力を大幅に削減したのだ。「パーペチュアル(永久)」という名に、さらに一歩近づいた進化といえるだろう。
透明サファイアクリスタルの開口部をもつ多層構造のダイアルは、エングレービング(彫り込み)にインクを塗布したミニッツトラックとホワイトゴールド製のバトン型アプライド・インデックスを備え、上下2つのパートに分かれている。下側のサファイア部分からは、サンドブラスト仕上げとガルバニック処理を施したムーブメントの地板が覗く。ダイアルの上側は、スレートグレー仕上げのゴールド製プレートに、手作業でサンレイパターンのギヨシェ彫りを施している。時と分は、ファセットカットを施したホワイトゴールド製ドーフィン針で示される。
トルキーで重厚な回転感覚のマルチシリンダー・エンジンを愛するクルマ好き、メカニズム好きに響きそうなレアピースだ。
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ヴァシュロン・コンスタンタン
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プロフィール
数藤 健(すどう けん)/ビジネス誌『週刊ダイヤモンド』で1998年からバーゼル・ジュネーブの時計見本市取材を開始。新潮社『ENGINE』編集部に2003年~2009年に在籍。その後『地球の歩き方』MOOK・Web編集長などを経て2021年に独立。2023年から『ENGINE』誌コントリビューティング・エディターとして時計担当を務める。独立後はほかにも『クロノス日本版』『芸術新潮』『文藝春秋』『クレア・トラベラー』などの媒体で時計情報を発信。時計取材歴28年のベテラン。