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巨匠が直接おもてなし。今行くべき注目のカウンターレストラン
この数年、一世を風靡した料理界の巨匠たちが、こぢんまりとした数席限定のカウンターレストランをオープンしている。グランメゾンでは扉の向こうのキッチンで大勢のチームの指揮をとっていたシェフたちが、目の前で料理するさまを眺められるのは、訪れた人だけが味わえる特権だ。スターシェフが直接おもてなしをしてくれる東京のカウンターレストランを紹介しよう。
Text & Edit:Misa Yamaji(B.EAT)
巨匠シェフが自身の集大成となる
カウンターレストランを開業
記念日や大切な日の接待。人気のグランメゾンやレストランへ、幾度となく訪れる機会がある読者も多いことだろう。美しいインテリアに、かゆいところに手が届くサービス、そして手の込んだ素晴らしい料理。こうしたレストランでは、シェフは扉の向こうの戦場のようなキッチンで、黒子としてチームを統率しているのが常だった。
しかし最近、そんな名だたるレストランを牽引してきたグランシェフたちが、キッチンを飛び出してカウンタースタイルの小さな店を次々と開業している。席数は10席前後。こぢんまりした店では、目の前で繰り広げられるシェフの包丁さばき、鍋を振る所作、ひと皿ずつ丁寧に仕上げられる盛りつけの様子を、間近で眺めることができる。カウンター席は、さながら劇場のアリーナ席ともいうべき特等席だ。
食事をしながらシェフと言葉を交わすうちに自然と距離が縮まっていくのも、カウンターならではの醍醐味である。今まで知ることのできなかったシェフの人柄やパーソナリティに触れると、料理もいっそう美味しく感じるから不思議だ。今回は、そんな巨匠たちがオープンしたカウンターレストランから、注目の2軒を紹介したい。
「ロオジエ」の元料理長が腕をふるう。魚介フレンチの隠れ家
「1864.」
銀座・FUKUHARA GINZAビルの地下に長年構えていた会員制ステーキハウスが、1年半の歳月をかけて生まれ変わった。2026年2月、フランス料理店として新たな扉を開いた「1864.」のシェフを務めるのは、山下泉氏。ジャック・ボリー氏、ブルーノ・メナール氏、オリヴィエ・シェニョン氏といったミシュランガイド三つ星の歴代シェフたちのもとで腕を磨き、ロオジエの厨房に37年間立ちつづけた料理人だ。
店名の由来は、資生堂の創業者・福原有信が志を胸に館山から江戸へと旅立った1864年に遡る。その「旅の原点」に思いを重ね、人が集い、語らい、新しいエネルギーを得られる場所を目指してこの店は生まれた。コースの主役は、日本の豊かな魚介。「グランメゾンで培った高度な技術を用いながら、過度に複雑にせず、素材のよさが素直に伝わる料理を目指しています」と山下氏は語る。
「目の前で、料理を召し上がっている反応を感じられるのはやはり楽しいですね。量や味の加減も、お好みをおっしゃっていただいたらすぐに対応しますよ」。
カウンターでお客さまと向き合いながら料理をするのは、グランメゾンのキッチンとはまた違う楽しさがあるという。
「ロオジエ」時代のお客さまからのリクエストもあり、コースにジャック・ボリー氏とともに生み出した同店のスペシャリテが登場することも。それに加え、「いいものは残しつつ、時代に合わせて進化させる」という言葉どおり、ピンの食材の風味や味を活かし、現代ならではの軽やかな味わいに仕立てた新作も登場する。
最大の魅力は、ライブキッチンの臨場感だ。あえて手元が見える高さにしつらえられたカウンターから、山下氏の仕事ぶりを間近に眺める時間はとても贅沢。グランメゾン仕込みの料理と洗練されたワインを、パーソナルな距離感でともに味わえるこの隠れ家は、大切な人をお連れするに相応しい、銀座の特別な一軒である。
1864.
住所:東京都中央区銀座7-8-10 FUKUHARA GINZA 地下1階
駐車場:なし
営業時間:17時30分〜22時30分(ラストオーダー20時)
定休日:日曜・月曜・祝日不定休、夏季(8月中旬)、年末年始
電話番号: 050-1725-8077(予約専用)
公式WEBサイト:https://ginza1864.com/
料理人人生50年の集大成。五感で味わう中国料理の「私厨房」
「Ginza脇屋」
“ヌーベル・シノワ”の旗手として、日本の中国料理シーンを長年牽引してきた脇屋友詞氏。2023年に料理人人生50年を迎え、その集大成として銀座に開いたのが「Ginza脇屋」だ。日本の四季と感性を中国料理に取り込み、独自のスタイルを築いてきた脇屋氏が、ここではその解像度をさらに高め、特別なコースをゲストに届ける。日本各地、そして中国から選び抜いたピンの食材を集め、脇屋氏自らがその日だけの料理を作る。シックで秘密めいた店の雰囲気は、まさに香港の「私厨房」そのものだ。
宴は、その日に届いた食材を客前に披露するところから始まる。佐賀牛のシャトーブリアン、鮑、はまぐり、吉切鮫・毛鹿鮫・青鮫のフカヒレ—目の前に並ぶ食材を眺めるだけで、その夜への期待が静かに高まる。
全12品前後のコースで特に印象的なのが、脇屋氏が独自に生み出した蒸し料理「清香(チンシャン)」だ。客前でせいろの下に熱した石を置き、そこへお茶を注ぐ。立ち上る清らかな香りが食材にゆっくりと移ろい、魚介や野菜をふっくらと蒸し上げる。目の前で豪快に立ち上る湯気に交わる香気とともに楽しむアツアツのエビ。口の中でとろける甘さと鼻腔から入る爽やかな香りが融合する味わいは、目の前で仕上げるカウンターだからこそだ。
そのほかにも、鶏ガラスープとはまぐりの出汁を合わせ、ワンタンと菜の花を加えて土鍋でことこと煮込んだスープ、イベリコ豚のチャーシューや沖縄県産の豚バラ、ライスペーパーに包んだ彩り豊かな前菜など、コースのひと皿ひと皿に心が躍る。
脇屋氏が、このカウンタースタイルの店をオープンするにあたり、最大にこだわったのが、香りも音も熱気もそのまま食卓に届くオープンキッチンだ。
中心に据えられた特注の炉窯は、ゲストの目の前で熱くなる中華鍋を使わずに料理するために考えられたもの。立ち上る香り、火の気配—すべてがダイレクトに伝わるカウンターは、まさに「脇屋劇場」の特等席。カウンターに座り、料理人50年の粋が凝縮された一夜を、ぜひ体験してほしい。
Ginza脇屋
住所:東京都中央区銀座5-10-5 スリーY'S&D 1・2階
駐車場:なし
営業時間:17時〜(完全予約制)
定休日:不定休
電話番号:050-3662-1535
公式WEBサイト:https://ginzawakiya.com/
※中学生以下のお子さまのご来店はご遠慮いただいています。(個室利用、カウンター貸切を除く)