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高級時計の祭典「Watches & Wonders Geneva 2026」
要注目は2つのブランドの「周年」モデル

スイス・ジュネーブ全体が時計一色に染まる、65ブランドが集結した世界最大級の時計の祭典「Watches & Wonders Geneva 2026(略称WWG)」。同イベントを取材した時計ジャーナリストの渋谷ヤスヒト氏が注目した腕時計をレポートする。

Text:Yasuhito Shibuya
Edit:Akio Takashiro(pad inc.)

世界最大級の時計の祭典「Watches & Wonders Geneva 2026」

スイス時計発祥の地・ジュネーブで毎年春に開催される時計見本市「Watches & Wonders Geneva 2026(略称WWG)」は、ロレックスやカルティエを筆頭に高級時計王国スイスの時計ブランドや日本のグランドセイコーまで、時計業界をリードするトップブランドや新進気鋭のブランドが世界に向けてその年の新作時計を発表する場。世界中からバイヤーやジャーナリストが集う、2026年の時計ビジネスの行方とそのトレンドがわかる時計界でもっとも重要なイベントだ。

今回も65ブランドの出展で、去る2026年4月14日(火)から2026年4月20日(月)までの7日間、ジュネーブ空港に隣接する見本市会場パレクスポで新作の展示が行われ、60,000人が入場。またジュネーブ市内でも「時計ブティック」でのウォッチ・パーティなど、時計に関わるさまざまな催しが行われ、単なる時計見本市ではなく「スイス時計発祥の地・ジュネーブ」をアピールする、市全体の一大観光イベントになっている。

逆風の中でも、魅力の新作が続々と

スイスの時計産業は1990年代の機械式時計ブームを出発点に、2000年以降の高級時計ブームへと発展。富裕層が競って買い求める世界中で人気のアイテムになり、より精密なもの、より美しいものが続々と開発・発売され、これまで30年あまり、右肩上がりの成長を続けてきた。

そして、高級時計の頂点に位置するのが最高の技術を持つ時計師が手づくりする“時計の中の芸術品”ともいえる複雑時計や、ケースやブレスレットにダイヤモンドなどの宝石を贅沢に使った宝飾時計だ。その価格は最低でも数百万円。複数の複雑機構を内蔵したもの、ハイジュエリーウォッチと呼ばれるものになると、数億円を超えるものも珍しくない。

時計好きの方なら、100年間はカレンダーの修正がいらない「パーペチュアル(永久)カレンダー」や、地球の重力の影響で起きる精度の劣化を減らす「トゥールビヨン」、現在時刻を時計に内蔵した鐘(ゴング)を叩いて音で教えてくれる「ミニッツリピーター」などをご存知だろう。

世界的なブームを追い風にスイスの時計業界は順風満帆。これまでは右肩上がりで成長してきた。驚くことにコロナ禍でも、一時的に低迷したものの、最終的には旅行消費の代わりに富裕層の間でさらに人気に。ただ高級時計ブームも、ウクライナ戦争や世界的な景気後退などの影響で曲がり角を迎えている。とはいえ2026年も名門「パテック フィリップ」や「オーデマ ピゲ」を筆頭に、スイスの世界的な時計ブランドが続々と魅力的な新作を発表して、その熱狂は続いている。

ここからは、時計好きならぜひ知っておきたい、WWGで発表された2026年の新作時計のトピックとして名門ロレックスとショパールの「周年モデル」をご紹介しよう。

誕生100周年を迎えたロレックスの防水時計「オイスター」

2026年のWWGで最大の話題、それはロレックス初の防水腕時計「オイスター」の誕生から100周年を迎え、これを記念して登場したロレックス「オイスター パーペチュアル 41 Ref.134303」だ。

ロレックス「オイスター パーペチュアル 41 Ref.134303」
自動巻(Cal.3230)。31石。28,800振動/時。パワーリザーブ約70時間。オイスタースチール&イエローゴールドケース(直径41mm)。100m防水。1,428,900円(税込み)。

現在のように腕時計がいつでもどこでも安心して着けていけるものになったのは、ロレックスが1926年に開発した完全防塵・防水ケースを備えた腕時計「オイスター」の登場がきっかけ。機械式腕時計の“天敵”は、微細なゴミやホコリ、そして部品をサビさせてしまう水や水蒸気だ。

ケースもリューズもねじ込み式の構造にすることで完璧な防塵・防水機能を備えた「オイスターケース」は、この天敵から時計の“エンジン”である機械式ムーブメントを守り、それまでは不可能だった腕時計の使い方を可能にした。この発明がなければ、その後の腕時計の発展はなかったといわれるほど、これは革命的なできごとだった。

さらに5年後の1931年、ロレックスは時計史上初の全方向回転式の自動巻き機構「パーペチュアル」を開発。自動巻き腕時計「ロレックス オイスター パーペチュアル」を発表する。この発明でリューズを使う機会はさらに減り、機械式腕時計の信頼性は一層高まった。現代の機械式腕時計はこの時点で完成した、といっても過言ではない。

そして2026年、ロレックスは「オイスター パーペチュアル 41」のアニバーサリーモデルを発表してこの防水腕時計の100周年をたたえた。再解釈された「イエローロレゾール」モデルでイエローゴールド製のドームベゼルとリュウズを備え、ブレスレットはSS。WWGのロレックスのブースには、オイスター100周年を記念する展示や巨大な垂れ幕が掲げられた。

ロレックスの展示ブース。オイスター100周年のアニバーサリーモデルの巨大な垂れ幕(画像中央)が掲げられていた。

また2026年の新作では、1970年代末に登場した「ROLEX」の文字を組み合わせてデザインされた「ジュビリーモチーフ」を継承する、カラフルな文字盤の「オイスター パーペチュアル 36」と、2024年の販売終了から2年ぶりに再登場した、ヨットのレガッタレース用カウントダウンタイマーを搭載した「ヨットマスターⅡ」も注目だ。

カラフルな文字盤で魅せる「オイスター パーペチュアル 36」

「オイスター パーペチュアル 36」は、直径36mmという程よいサイズ感も近年のスモールサイズ化という時計トレンドを反映。多彩なカラーを1色ずつ塗布し、重ねて仕上げるカラフルな文字盤は、まるで現代アート作品を彷彿させる。性別や世代を問わず楽しめる、腕元に軽やかな高揚感をもたらしてくれる1本だ。

ロレックス「オイスター パーペチュアル 36 Ref.126000」
自動巻(Cal.3230)。31石。28800振動/時。パワーリザーブ約70時間。オイスタースチールケース(直径36mm)。100m防水。996,600円(税込み)。

2年ぶりに再登場した「ヨットマスターⅡ」

新しい「ヨットマスターⅡ」は、ムーブメントから一新された。カウントダウンタイマーの表示を文字盤中央から外周部へ移すことで、視認性が大きく向上している。さらにカウントダウン分針と秒針が「反時計回り」に進むようになった。残り時間をより直感的に把握できるようになり、これも大きな進化といえる。加えてラグやケースの形状も見直され、腕へのフィット感も向上した。この点も見逃せない。

ロレックス「オイスター パーペチュアル ヨットマスター II Ref.126680」
自動巻(Cal.4162)。47石。28800振動/時。パワーリザーブ約72時間。オイスタースチールケース(直径44mm)。100m防水。3,005,200円(税込み予価・2026年春発売予定)。

誕生30周年を迎えたショパールの機械式ムーブメント「L.U.C」

そしてもうひとつ、大きな注目を集めたのが、ショパールの自社製ムーブメント「L.U.C」の誕生30周年を祝う記念モデル。1997年の初搭載以来、同ブランドを宝飾時計から本格マニュファクチュールへと押し上げた象徴的存在が、節目の年にさらなる進化を示した。

今では機械式ムーブメントの自社開発製造は一流の時計ブランドにとって欠かせないことだが、このムーブメントが登場した30年前は、スイス時計はまだムーブメント専業メーカーが製造・供給する汎用ムーブメントを利用するのが一般的だった。

しかし当時ショパールの共同副社長だったカール‐フリードリッヒ・ショイフレ氏は、当時社長だった(現在は会長の)父の反対を振り切って機械式ムーブメントの自社開発製造に挑戦。その結果、ショパールは宝飾ブランドからスイスを代表する本格時計ブランドとして確固たるポジションを築いている。

2026年はこの30周年を記念してこのムーブメントの最新仕様を搭載したモデルを続々と発表。「L.U.C XPS プルシアンブルー Ref.168629-3002」をはじめ、どれも時計愛好家を唸らせる素晴らしい逸品に仕上がっている。

ショパール「L.U.C XPS プルシアンブルー Ref.168629-3002」
自動巻き(Cal.L.U.C 96.12-L)。29石。28,800振動/時。パワーリザーブ約65時間。ルーセントスティール(TM)製ケース(直径40mm、厚さ7.2mm)。30m防水。1,925,000円(税込み)。

今回ご紹介の2ブランドに限らず、時計ブランド各社は渾身の新作時計を発表している。お気に入りの時計ブランドがある方はぜひ、その公式サイトをチェックしたり、行きつけの時計店で新作時計の実物をあなたの目と手でチェックしてみてはいかがだろう。