LIFESTYLE

Private dining
一日一組限定のシェフズテーブルで味わうのは
美食と気のおけないメンバーでの豊かな時間

数々の有名ホテルで料理長として腕をふるってきた酒井 淳シェフが1日に1組だけのためにゲストの眼前で料理を振る舞う「サロン イナシュヴェ (Salon inacheve)」。そこで味わうことができる美食体験は舌だけでなく心までをも喜ばせてくれます。「ゲストが主役」と断言する酒井シェフがシェフズテーブルで供するのは、心を豊かにするサプライズでした。

Photo:Fumito Kato

シェフズテーブルこそ食を楽しむ空間の究極形

名古屋市東区、地下鉄桜通線の高岳駅からほど近いビルの2階にそのシェフズテーブルはあります。1日1組限定でシェフと空間を独占できる「サロン イナシュヴェ」は、名古屋のみならず日本全国の美食家たちが贔屓にする話題の店です。「主役であるゲストには他人の目やドレスコードを気にすることなく、お食事と時間を楽しんでもらいたいんです」と酒井シェフ。

実家は寿司店、親族は飲食関係者ばかりという料理人一族に生まれた酒井シェフは「ホテルニューオータニ大阪」を皮切りに「ハウステンボスホテルズ」等の大手ホテルで修業を積みました。「ロテル・ド・比叡」、「DESSINER LA SAVEUR」での料理長を歴任し「ホテルアークリッシュ豊橋」の総料理長に就任した後に、集大成として2015年9月にオープンさせたのが「サロン イナシュヴェ」です。

「サロン イナシュヴェ」で味わえるのはお客様の要望に合わせて12〜13品で構成されるコース料理(33,000円〜)ですが、コース料理をただ楽しむだけなら他のレストランでもできること。「サロン イナシュヴェ」が大切にしているのは、まるで自宅で食事を楽しんでいるようなリラックスした時間の中で、突如訪れるサプライズにあります。それは食材選びから始まっています。

「お客様のお好みを伺い、コースを組み上げます。フレンチをベースとはしていますが、食材はセオリーにこだわりません。昆布出汁など和のエッセンスも取り入れ、パリでもニューヨークでも通用する食体験へと仕立てています。そして、非日常感を味わっていただくためにもフォアグラ、トリュフ、キャビアの3大珍味はいずれかのお料理に取り入れています」(酒井シェフ)。

家庭では扱いの難しいフォアグラやトリュフ、キャビアが登場するたびに、ゲストの心は踊ります。

ゲストを想うからこそ繰り出されるサプライズ

そんなシェフのおもてなしの気持ちは、テーブルの至るところで料理として表現されます。例えば、「季節のフルーツ」とシャンパーニュ。この日はゴールデンプラムやブルーベリー、アメリカンチェリー、シャインマスカットをパッションフルーツに盛り込み、塩気を感じるシーアスパラがアクセントとして飾られました。「フルーツで消化を助け、お料理を楽しんで欲しい」との想いが込められ、美しく盛り込まれたフルーツにシャンパーニュが寄り添う姿は、場に一体感を生み出します。

感嘆の場を生み出すシェフズテーブルには、ソムリエによるフルペアリングが供されます。ワインを中心に、料理に合わせ日本酒が登場することも。お酒のセレクトに気をとられることなく、最適なペアリングまでも託せるからこそ、心の底から豊かな時間を謳歌できるのです。

こちらの盛り合わせは、(写真右から)奥深いミネラル感を甘さと苦味が包み込む「キャビアとルッコラの蒸しパン」、薫香と旨味が溶け合う「ボタン海老の燻製」、オリーブオイルのカプセルをのせ、根セロリと食す「白海老のコンフィ」。当然の如く舌を楽しませてくれるだけでなく、貝殻などを巧みに用いるデコレーションもさることながら、客席で瞬間燻製のための蓋を外すため燻煙が立ち上がる「ボタン海老の燻製」のプレゼンテーションには思わず目が驚きの声を上げます。

「私が料理人キャリアをスタートさせた頃はホテルが、そしてフランス料理が外食の頂点でした。ところがフランス料理業界が敷居を高めることばかり意識し、あぐらをかいている間に、フレンチはよりカジュアルなイタリア料理にその座を奪われたんです。フランス料理には長い歴史のなかで成熟した技法やソースの奥深さがあります。その素晴らしさを多くの方に味わっていただくための場所が、この空間なんです。過剰なサービスは控え、お料理を説明するタイミングにも気をつけています。すべてはゲストが緊張せずに自由に振舞っていただくため。ゲストの皆さんがお店に来たのではなく、ご自宅に我々シェフを招いたと錯覚してもらえることが理想です」(酒井シェフ)

フランス語で“未完成”を意味する“inacheve(イナシュヴェ)”を屋号に冠したのは、33年のキャリアをもつシェフが「料理は常に進化するものである」と悟っているが故。その進化は舌に落ち着きを与えるスープにもサプライズとして表れます。グリルした糖度の高い愛知県豊川市「オザワファーム」のピクニックコーンと、エスプーマ(泡状に)した バニラのような風味が特徴のトンカ豆のムースに、目の前で注がれるコーンスープ。そして、一口……。ゲストはスープの中に、卵と生クリームで溶いたフォアグラの蒸し物が潜んでいることに気づかされます。 

「私自身、幼少時代に感動した洋食の美味しさが忘れられません。お子様にこそ、本物のフランス料理を召し上がっていただき、食の楽しさを覚えて欲しいんです」と酒井シェフは語ります。徹頭徹尾、ゲストを楽しませる「サロン イナシュヴェ」の想いは、こんなコースの締め括りに提供されるデザートにも、どこか和を感じさせる設えで供される「ミニャルディーズ」。

この日は食用のホオヅキやフィナンシェ、ガレットにブルトンヌ、塩アーモンド、アメリカンチェリーのコンポートが箱に詰められてお出まし。一口ごとにうっとりとさせられるお菓子たちは、派手さはないが心の奥底を揺さぶる力を持っています。お腹の具合次第で、お土産にしてもらうことも可能です。

シェフズテーブルのお料理はもちろんこれだけに留まらず、すべてはお客様のお好みに合わせて考え抜かれ、組み上げられ、嬉しい驚きとともに提供されます。酒井シェフの心が隅々まで行き届いたプライベート空間でのお食事体験は、当然のことながらお子様連れにも最適。自宅のような空間で、自宅では味わえない美食とサプライズが体感できる「サロン イナシュヴェ」。

さて、ここまでの記事を読んで店を訪れたいと思った方にお伝えしておくべきは、店には看板がないこと。目印は鹿の角の取っ手が付いた木の扉です。この先で味わえる美食体験の凄みは、ぜひご自身でご体感ください。

DATA
33,000円(6杯のフルペアリング含む ※ノンアルコール対応可、お子様のコース料金は要相談)
住所:愛知県名古屋市東区泉2-1-28 ヴィアーレ・ストリア 2B
Tel:052-982-7588
https://salon-inacheve.com/

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