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究極のオーダーメイド旅
国宝を“個人”で楽しむ夢が叶う。2026年、奈良で始まる驚きのツアーに潜入した

自分たちだけのために、国宝の扉が開く。そんな夢のようなオーダーメイドツアー「稀覯 ki-kou」を、奈良市が発表した。これまで一般公開が限られていた国宝建築の内部へ入る体験を、なんと個人客向けにオーダーメイドで組み立てることが可能なのだという。そんな究極の贅沢なプランで実際にどのような体験ができるのか、ひと足先に体験してきた。

Text&Edit:Misa Yamaji
Photos:Nara City Tourism Association

奈良でしかできない歴史に触れる旅

「稀覯(きこう)」とは、めったに出会えないもの、容易には得られない価値—そんな意味を持つ古語だ。その古語を冠した、ほかではできないラグジュアリーなオーダーメイドの旅プラン「稀覯 ki-kou」が、2026年、奈良で始まる。

主催は奈良市観光協会。市内にある神社仏閣やさまざまな施設と協力し、「日本のはじまりの地」奈良でしか体験できない貴重な体験を、参加者一人ひとりの関心やテーマに合わせて設計。知的好奇心が高い富裕層に向けた、完全オーダーメイド型の滞在プログラムだ。

薬師寺の食堂(じきどう)。特別公開時にしか開かれない場所だ。

なんといっても目玉となるのは、神社仏閣や施設が1グループ(1~6人)のためだけに国宝や重要文化財をプライベートに公開すること。通常は非公開の秘仏を間近で思う存分眺め、重要有形民俗文化財の古い風呂で実際に温まり、誰もいない名刹を住職がつきっきりで案内してくれるのだ。

現在は、このツアーの趣旨に賛同してくれた限られた寺社や店舗、施設への案内が主となるが、今後は旅人へ提案する先も順次増やしていく予定だ。特別公開の混雑とは無縁の静けさの中で、歴史に思いを馳せてじっくりと理解を深めていく時間は、これ以上ない贅沢であることは言うまでもない。

知れば知るほど、“こんなことが可能なのか”と、度肝を抜く企画だが、実際に取材してみて想像以上のスケールに驚いた。現在企画されている中から、特におすすめの場所を紹介したい。

奈良時代の香りに包まれて
国宝の「五重小塔」の“天井裏”まで鑑賞
海龍王寺(真言律宗)【奈良市】
海龍王寺の本堂。

奈良市内にたたずむ海龍王寺は、731年(天平3年)に光明皇后によって創建された古刹である。その西金堂に安置されているのが、国宝の「五重小塔」だ。国内最小かつ日本最古の、高さわずか約4メートルの五重塔の“模型”は、奈良時代に光明皇后の御願により建立され、創建当時から動かされることなく、今に至る。

海龍王寺の西金堂。通常は格子の柵越しに「五重小塔」を拝観できる。
写真:山路美佐

通常は、西金堂の柵越しにのみ拝観できる「五重小塔」だが、「稀覯」のプライベートツアーなら、朝一番に特別に西金堂内に入り、数メートルの距離で眺めることができる。

開かれた堂内に入ると、まず、木のよい香りに包まれる。案内を務める住職の石川重元氏によれば、これは“奈良時代の香り”だという。「西金堂も五重小塔も、今立っている石畳も奈良時代のものです。この香りは、塔の材料である檜と塗料由来。ひと晩締め切り、朝に堂を訪れるとより強く感じますね」とのこと。

奈良時代前期から西金堂に安置される国宝「五重小塔」。国内最小の五重塔でありながら、その精緻な造形は見る者を圧倒する。堂内では、小塔のまわりをぐるりと回ることができ、360度眺めることができる。

この「五重小塔」がつくられた目的ははっきりしていないが、単なる模型ではなく、実際に仏舎利を収める信仰対象であった。人が間近で見ることを想定し、非常に精巧に作られているのも特徴だ。例えば、軒下ひとつとっても、正方形の地垂木と円形の飛檐(ひえん)垂木が二重に組み込んだ、実物と同じ建築様式で作られている。

垂木にある小さな穴は、奈良時代の金具が入っていた部分。間近に見ると一気に目の前の木が1300年近く前のものである現実味が増す。
写真:山路美佐
屈んで内部を見ることができるのも、特別見学ならでは。
写真:山路美佐

この垂木の中央に空いている穴は、奈良時代に金メッキの飾り金具が取り付けられていた跡。第一層の天井裏を覗き込めば、実際の五重塔と同じ格子天井になっている。こうした細部を確認できるのも、至近距離で見ることができる醍醐味だ。

本尊の十一面観音は昭和初期まで秘仏として開帳してこなかったため、鮮やかな色彩が今でも残っている。
写真:山路美佐

ほかにも、通常は春と秋の特別公開期間にしか拝観できない本尊・十一面観音像(重要文化財)の特別拝観も可能。タイミングがあえば、通常は奈良国立博物館に展示されている空海直筆と伝わる「隅寺心経」(重要文化財)を住職自らが広げ、目の前で説明してくれる。当時の墨や紙の香りを感じながら話を聞ける貴重な体験は、忘れえぬ記憶となるに違いない。

奈良時代から続く風呂に入り、瞑想する
法華寺門跡(総国分尼寺 光明宗)【奈良市】
法華寺の本堂。

光明皇后が創建した総国分尼寺・法華寺門跡。本殿には、国宝に指定されている7体の十一面観音像(光明皇后の姿を模してつくられたと伝わる)のひとつが祀られており、特別公開時には多くの方がひと目見ようと訪れる。境内には平家物語の悲恋を語る横笛堂、四季の花が咲く華楽園など、門跡寺院らしい優美な空気が流れており、ゆっくりとただ身をおきたくなる寺院だ。

光明皇后が池のほとりに華道道場を建てたことから始まった華道、「法華寺御流」。希望者は習うこともできる。

この法華寺にある珍しい重要有形民族文化財が、日本最古といわれる「浴室(からふろ)」であろう。皇后が貧しい民の病気平癒のために設けたとされるこの施設は、現代でいえばサウナのような蒸し風呂だ。現在の建物は1766年に再建されたもので、通常は外観のみが公開されている。

法華寺の「浴室(からふろ)」は重要有形民俗文化財に指定されている。

原則、特別にこの風呂に火が入るのは、年に一度だけ信者を対象に行われる「施浴体験」のときだけだ。しかし、このプログラムでは申し込み者のためだけにその扉が開かれる。

「浴室」の中。1部屋の定員は3名。

燃やす薪は吉野山から切り出されたものと決まっているため、予約が入ったら申し込み者のためだけに木を切り出すところから始まる。参加者は寺から渡される浴衣に着替え入浴。特別な薪を燃やし、湯を沸かし、すのこからあがってくる水蒸気に満たされた浴室で、ゴザの上に座ってしばし汗を流す。

水瓶の水はかぶるためにあるのではなく、からだを拭く手ぬぐいを濡らすためにある。

水風呂などはないので、水瓶に浸した水で絞った手ぬぐいでからだを拭き、外気浴をして終了だ。1300年前の皇后の慈悲に、文字どおり身を委ねる。これほど身体的な歴史との対話があるだろうか。

お写経で心を整え、非公開のお堂を巡る
法相宗大本山 薬師寺【奈良市・西ノ京】
左は焼失し、再建された薬師寺金堂。右は創建以来1300年間残る国宝・東塔。その心柱に奉納する特別写経は、参加者にしか得られない深い縁を結ぶ。

世界遺産に名を連ねる薬師寺では、創建以来1300年間その場に立ちつづける国宝・東塔の心柱修理の際に生じた木片を漉き込んだ用紙にお写経し、その経を東塔に奉納する「結縁特別写経」が体験できる。

墨、筆などの道具一式は用意されているのでお写経は手ぶらで可能。一心に文字に向き合う時間は、心を整えてくれる。

通常非公開の食堂(じきどう)の特別拝観や、玄奘三蔵の旅をモチーフにした全長49メートルの大壁画「大唐西域壁画」の時間外特別公開、御家流香道体験なども用意されている。

薬師寺金堂の薬師三尊像は国宝。
閉門後、静寂に包まれた境内で時空を超える旅へ
春日大社【奈良市】
春日大社の御本殿。

全国約3,000社の春日神社の総本社・春日大社では、神職・御巫(みかんこ)の案内のもと、閉門後の廻廊に吊られた釣燈籠に献灯し、国宝の御本殿を特別参拝する体験が待っている。

768年創建の歴史を聞きながら、灯りがひとつ、またひとつと揺れる朱塗りの回廊を歩けば、1300年以上続く祈りの連なりに、重なるような感覚が生まれるだろう。

平安時代から現在まで、さまざまな祈願としてさまざまな人が奉納してきた燈籠。徳川綱吉や、直江兼続などが寄進した燈籠などを間近で見ることができる。

正式参拝にあわせて社伝神楽奉納の陪観や、国宝354点を所蔵する国宝殿の学芸員の解説による時間外貸切り鑑賞なども可能。世界遺産に登録された原始林の森に鎮座する日本屈指の聖地の春日大社で叶う特別な体験は、一生の記憶に深く刻まれるはずだ。

日本酒発祥の場所で、酒を学ぶ
奈良豊澤酒造【奈良市】
「豊祝」などで知られる、奈良豊澤酒造。

特別な体験は神社仏閣に限ったことではない。例えば奈良は「清酒発祥の地」とも称されるが、そんな日本酒文化に触れられる、酒蔵訪問プログラムもある。

プログラムを受け入れている創業150年近い老舗・奈良豊澤酒造は現在、年間約5,000石の日本酒を製造しており、奈良県にある27の酒蔵の中でもっとも清酒の生産量が多い。昭和40年代から純米酒造りに専念し、機械化をすすめる一方、品質を大きく左右する麹造りは今も、“現代の名工”に選ばれた前但馬杜氏の熟練の技を継承した社員蔵人たちによって受け継がれている。

麹作りは地元採用の社員蔵人が担当。

ここでは5代目・豊澤孝彦社長自らが、訪れた客に酒造りの現場を案内し、奈良県発祥の酒造りの歴史を語ってくれる。もちろん、工場見学のあとは6種類の利き酒・試飲体験も待っている。

酒造りの現場を知ったあとの試飲は、ひと味違う。

じっくりとプライベートで現場を見学し、気軽に質問できる機会は意外とないもの。大人の社会科見学は子どもの頃よりずっと楽しく感じられる。

杜氏の経験と勘が生む独自の香りは、奈良の気候と水が育んだものだ。
究極のオーダーメイドの旅で得られること

奈良は、神仏習合や、シルクロードの終着点という歴史的背景から、さまざまな文化が融合し、独自の解釈で編集してきた歴史がある。

このツアーを企画した理由として、奈良市観光協会の担当者は、奈良の多層的な魅力に触れ、日常では得られない気づきや発見をしてもらいたいと語る。このツアーは完全オーダーメイドのため、決まったプランや価格は存在しない。内容や価格はリクエストに応じて変動するという。本当の奈良に触れられる旅の最初の一歩は、まず、どんなことができるのか、下記「稀覯」のサイトより相談してみることだ。

稀覯 ki-kou(ラグジュアリー観光ブランド)

主催:公益社団法人 奈良市観光協会
稀覯特設WEBサイト:https://narashikanko.or.jp/ki-kou/
※完全オーダーメイド型プログラムのため価格は変動します。
※2026年5月中旬より受付開始。

宿泊は「紫翠 ラグジュアリーコレクションホテル 奈良」で
歴史的建物を活かした「紫翠 ラグジュアリーコレクションホテル 奈良」。奈良公園西端の世界遺産エリアにたたずむ。

古代へのタイムトリップ旅にふさわしい滞在をしたいなら、LEXUS LUXURY HOTEL COLLECTIONに加盟している「紫翠 ラグジュアリーコレクションホテル 奈良」へ。

このホテルの建物は、1922年(大正11年)築の知事公舎を活かし、隈研吾氏がリノベーション。館内には1951年11月、昭和天皇がサンフランシスコ講和条約と日米安全保障条約の批准書に署名した場でもある旧県知事公舎の応接室「御認証の間」を筆頭に、歴史の片鱗がいたるところから感じられる。

ラウンジ「寧楽(なら)」は、旧奈良県知事公舎の迎賓の場を改装した、日本建築の意匠が残る優雅な空間。

食事は、メインダイニングの「翠葉」で。近隣の食材を活かし、奈良の食文化を随所に取り入れた料理は、シルクロードから現代まで続く歴史へ誘ってくれる。客室は温泉付きの部屋がおすすめだ。天然温泉でゆっくり疲れをとってから、シンとした静けさの中で深い眠りにつくことができる。

温泉付きのデラックスルーム。
客室の温泉は「朱雀の湯」からの運び湯。

紫翠 ラグジュアリーコレクションホテル 奈良

住所:奈良県奈良市登大路町62
アクセス:名阪高速道路・山添I.C.から約41分
駐車場:あり
※駐車場は事前のご予約が必要です。
※料金や収容台数、対応するお車のサイズについては施設へご確認ください。
EV充電ステーション:あり
※EV充電ご利用に関する利用条件・制限、利用時間、その他注意事項は施設へご確認ください。

レクサスカード会員さま限定特典

【特典内容】
・$100相当/滞在のホテルクレジット※1
・ご滞在中1室2名さま分の朝食をサービス
・ウェルカムアメニティ
・Wi-Fi利用無料
・お部屋のアップグレード※2
・アーリーチェックイン※2
・レイトチェックアウト※2
※1:ホテルクレジットの金額は時期により変動制となります。
※2:ご希望の際は予約時に承ります。回答は当日現地にてご確認をお願いします。
※2026年4月時点

レクサスカード会員さまのご予約はトヨタファイナンス トラベルデスクにて承ります。

LEXUS LUXURY HOTEL COLLECTIONでは、お客さまに最適なホテル選びをご提供させていただくため、トヨタファイナンス トラベルデスクにてお電話での手配を承っております。
世界中にある約2,000以上のホテルごとに、さまざまな特典がご利用いただけます。
「ホテル選びに迷っている」「金額や特典のみでも確認したい」など、お気軽にお問い合わせください。

ご利用いただけるお客さま:レクサスカード会員さま、レクサスの自動車クレジットをご契約中のお客さま
ご利用予定日の10日前までにご連絡ください。
トヨタファイナンス トラベルデスク 電話番号:0800-700-8160(9時~17時/日祝・年末年始除く)
※各施設へ直接ご予約された場合は特典が適用されません。
※レストラン利用をご希望の際は、予約時にお申し出ください。