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Winter 2026号 掲載記事

LEXUSのBEV(電気自動車)で旅するサステナブル ニッポン
LEXUSのBEV(電気⾃動⾞)に乗って
大阪と琵琶湖をつなぐ「水」の物語を辿る旅へ

一人ひとりの力は微力だが、無力ではない。小さな滴が寄り集まれば、満々たる湖になることができる。勢いのある大河にもなれる。多様な命を潤しながら、やがて海に辿り着くこともできるだろう。湖の鼓動、川の躍動、海の胎動。そのすべてを辿る旅。

Photo:Takao Ota
Text:Kiyoto Kuniryo
Edit:Shigekazu Ohno(lefthands)

平安期に「慈悲に満ちた清浄な風が吹き、静かな波は美しい蓮の花である」と謳われた琵琶湖。その風を受け、満開の湖面と邂逅する。琵琶湖から瀬田川、宇治川、淀川を経て大阪湾へ。水は約75キロメートルの旅を続けたあと、また新たな旅のために海へと還っていく。
環境に優しいBEVに乗って、
関西一帯を潤す水の景色を辿るドライブ旅へ

国の中央に満々たる琵琶湖の水を抱いている近江(現在の滋賀県)。この近江という名称は、都(京都)に近い大きな湖である琵琶湖を「近つ淡海」と呼んだことに由来するという。かの司馬遼太郎は、全43巻にもなる『街道をゆく』シリーズの第1巻を「湖西のみち」と題した旅から始めている。その冒頭部分をここに引用したい。
「『近江』というこのあわあわとした国名を口ずさむだけでもう、私には詩がはじまっているほど、この国が好きである。」

大阪駅(梅田駅)前の新ランドマーク「グラングリーン大阪」にあるレクサス充電ステーションは、My LEXUSのアプリで希望時間を予約後、待ち時間なく利用可能。大阪から琵琶湖までは約1時間のドライブだ。
琵琶湖大橋の西岸から東岸に向かう追い越し車線の一部(610メートル区間)で法定速度を守って走れば、滋賀県民にはお馴染みの「琵琶湖周航の歌」の旋律が聞こえる。これは、路面に刻まれた深さや間隔の異なる溝がタイヤと接触した際に生じる走行音。琵琶湖畔では、彦根城や長浜市城下町といった歴史浪漫が色濃い場所を訪ねても、常に水が織りなす景色が胸に迫ってくる。

殿様も水軍も市井の人も動物も琵琶湖の恩恵を受けて生きてきた

この国を旅してみれば、まさにあわあわとした、つまり淡水に満ち満ちたきらびやかな国であることが体感できる。例えば、琵琶湖の東岸と西岸を結び、滋賀県の大動脈となって産業や観光の発展に寄与してきた琵琶湖大橋。琵琶湖でもっとも横幅が狭い場所を渡っているとはいえ、実際に湖上を駆けてみれば、その豊富な水量を体感せずにはいられない。

橋の西側の出発地となる大津市堅田は古来、湖上交通の要地であり、中世においては近江の湖賊(水軍)という一大勢力の本拠地だった。豊臣秀吉は朝鮮出兵の際、この琵琶湖水軍を船舶兵として徴用している。日本最大の湖上、そして湖畔を往くLEXUS RZ450eは、自然の雄大さと歴史の浪漫をその身に浴びながら、静かに、清く、逞しく駈けていく。BEVゆえの、まさにクリーンな走りだ。

針江から琵琶湖に流入する針江大川では、初夏の頃になると清流を象徴する水生植物バイカモが、川面のあちらこちらに小さな白い花を咲かせる。

堅田から湖西を国道161号線沿いに40分ほど北上すると着くのは、高島市新旭町針江。この地域も、まさにあわあわしい。比良山系に降った雪や雨が伏流水となり、こんこんと湧き出しているのだ。この清涼な湧水は、針江で「生水」と呼ばれる。野菜などを浸けて冷やす壺池に使われたり、飲料として家屋に引き入れられるなど、人びとの命と日々のくらしを潤しつづけてきた。

さざなみ街道は、大津市の湖南部から湖北の長浜市木之本町まで、番号の異なる県道を走り継ぎながら琵琶湖東岸を南北に走る道だ。写真のスポットは、彦根市石寺町にある「あのベンチ」。街道から脇道に少し入った場所にたたずむ大きなセンダンの木の下にベンチが置かれ、琵琶湖に浮かぶ多景島、さらに天気がよければ対岸の比良山系までが一望できる。2024年1月にNHKの番組『ドキュメント72時間』の『琵琶湖畔 あのベンチで』という回で紹介されて、広く知られるように。

琵琶湖の東岸ドライブは、さざなみ街道が情趣深い。ガードレールを設置していない区間が長く、琵琶湖畔の原風景に近い趣を味わうことが可能だからだ。その湖東で立ち寄りたいスポットのひとつが彦根城。元は井伊家の居城で、今日においても壮観を極めている。小高い山に建つ天守閣からは、琵琶湖が一望できる。また、彦根市を北上した先の長浜市には、戦国時代末期に豊臣秀吉が城主として過ごした長浜城の城下町が広がり、水路に憩う白鷺が豊かな生態系を象徴していた。琵琶湖の最北部を走る奥琵琶湖パークウェイでは、山の緑と湖の碧が睦み合い、まさに詩が始まっていた。

奥琵琶湖パークウェイは、琵琶湖の最北に突き出した葛籠尾(つづらお)半島の山並みを縫うように走る全長18.8キロメートルのドライブウェイ(積雪状況にもよるが12月初旬〜3月上旬は通行不可)。つづら尾崎展望台からの眺望も一見の価値あり。
この美しい景色と、豊かな食材と、利水・水運のもととなる
琵琶湖の水の物語

琵琶湖は水道用水、工業用水、農業用水、発電用水などの水源として滋賀県はもとより日本経済の中核を担う京阪神地域を支えている。現在、水道水としての利用人口だけでも約1,500万人になるという。琵琶湖ならではの「無垢で無辺なる水の物語」を紐解いていきたい。

関西一帯を潤す水の景色を辿るドライブ旅へ

高時川。

琵琶湖(約670平方キロメートル)は、東京23区(約627平方キロメートル)よりも広い。この広大な湖を成立させているのは、周囲を取り囲んでいる山々であり、森林であり、これらの水源に端を発する川である。周囲から琵琶湖に流れ込んでいる川は、約460本にもなるという。先ほども取り上げた針江生水の郷を潤して流れる針江大川など、琵琶湖に向かう川はそれぞれが各地で多様な生命を養い、文化を築く母となり、経済発展の父となってきた。また、湖北地方の山間部を源流とする高時川のように、比較的小規模でも清流性が高く、琵琶湖流域特有の魚類・生態系を支える河川が数多く流れ込むことにより、琵琶湖の環境は時を超えて守られてきた。

長浜城下町。

地域を超えて、時代を超えて水の物語が紡いできたものとは

豊臣秀吉が初めて城持ち大名(居城を所有する立場)になって築いた城下町・長浜では、琵琶湖の水を人工的に引き入れて町中に流す引水路としての米川が防御・灌漑・生活用水・舟運(小舟での物資輸送)に使われた。また、敵の侵入を制限する天然の堀としても機能したという。秀吉が城下町を設計するにあたり、特に重視したのが「生活と経済と軍事の動脈」としての米川整備だった。碁盤目状に区画された町割りとともに、現在も清流として残る米川は秀吉の都市設計思想の象徴とされている。都市河川であるにもかかわらず、アユなどの清流性の生物が観察できるのは、秀吉の想いを受け継いだ市民や地元団体が定期的な清掃・水質保全活動を行っているからだ。

長浜市湖北町のヨシ。

琵琶湖畔を走っていると、細くて背の高い植物のヨシが水辺に生えているのを見かける。ヨシ群落は鳥や魚のえさ場やすみかになっており、生態系の保持に貢献している。ほかにも湖岸の侵食防止、水質保全といった多様な働きを果たす。古いヨシを刈り取る「ヨシ刈り」は、鳥や魚の生息環境を保つだけでなく、茅葺き屋根の材料になり、ヨシ笛や編み物といった伝統工芸品を生み出すためにも行われてきた伝統的な営みだ。

また、食文化という枠を越えて、日本において人と自然の睦まじさのシンボルにもなってきたのが稲作である。琵琶湖周辺でも灌漑型農業の痕跡が出土しており、弥生時代には水田による稲作が始まったとされている。平安〜鎌倉時代には水田の拡大と用水路の整備が進み、琵琶湖周辺は近江米の産地として知られるようになり、京都にも献上された。その輸送ルートとして機能したのが、各地の川〜琵琶湖の港〜瀬田川〜宇治川という水脈だ。実りを生み出してきたのも、物流の基盤となってきたのも、同じ豊かな水であった。

琵琶湖畔の水田。

琵琶湖に集まった水は、湖の南端部を起点とする瀬田川(琵琶湖唯一の自然流出河川)から新たな旅を始める。この瀬田川が宇治川、淀川と名前を変えながら流れていき、最終的には大阪湾に注ぎ込んでいく。すなわち、水辺の美しい景色が人びとの感性を刺激し、その豊かな水量が食をもたらし、物流を活性化し、産業と文化の華を開かせてきた。京都の公家文化、大阪の町人文化も琵琶湖の周辺から始まる「無垢で無辺なる水の物語」がベースとなって育まれてきたものといえるだろう。

琵琶湖の流域。

滋賀県は周囲を急峻な山々に囲まれている。県内に降った雨のほとんどは、約460本の河川を通じて琵琶湖に流れ込む。琵琶湖に数多くの川が流入しているのに対して、琵琶湖から海に向かって流れ出るのは瀬田川のみ。京都府宇治市からは宇治川に名を変えて京都盆地を貫流し、東から木津川、西から桂川が合流して淀川となって大阪平野を流れ、大阪湾で旅を終える。この琵琶湖と大阪湾を結んだ水系は、淀川水系と呼ばれている。淀川水系は支流を含めて滋賀・三重・京都・大阪・奈良・兵庫の2府4県にまたがり、その流域面積は約8,240平方キロメートルという広さ。滋賀県2つ分ほどの広さになる。

「Mother Lake」琵琶湖を守る

命を育む水を満々と湛える琵琶湖。古来、この湖は清浄なる聖地でありつづけた。『万葉集』でも、しばしば琵琶湖の静謐な美が詠まれてきた。その清浄さ、美しさを未来に残すために人間にできることとは。

400万年の歴史を持つ貴重な古代湖を未来に残すために

400万年前にまで起源をさかのぼることができ、約43万年前に現在の場所で湖になったとされる琵琶湖は、世界有数の古代湖だ(10万年以上の歴史を持つ古代湖は世界でも約20しか存在しない)。琵琶湖の集水域では1960年代後半から加工組立型産業の立地が進むとともに、人口増加による都市化が見られた。その結果、琵琶湖の富栄養化(淡水赤潮の発生)や生物多様性の喪失をはじめとする環境悪化が顕在化。1980年の「琵琶湖条例」を契機に、市民・事業者・行政が連携して環境改善の取り組みを進めてきたという経緯がある。

しかし、時を経て2000年代に入ってからも水質汚染や水位低下、外来種の繁殖といった問題が琵琶湖を悩ませている。滋賀県では2011年から2020年にかけて、琵琶湖の保全について多様な主体が集い、考える「マザーレイクフォーラム・びわコミ会議」が開催されてきた。そして2021年には、多くのワークショップを通じて参加者の意見を集約しながら、琵琶湖の環境保全・再生に関する新たな協働の枠組みとして「マザーレイクゴールズ(MLGs)」が策定された。2030年の環境と経済・社会活動をつなぐ健全な循環を構築するべく、琵琶湖を切り口として独自に13のゴールを設定したのである。旅する者も、自然を尊重して動きたいものだ。

2015年に「琵琶湖の保全及び再生に関する法律」が公布・施行され、琵琶湖は「国民的資産」と位置づけられた。地元を中心に多様な主体からなる「マザーレイクゴールズ推進委員会」が2021年に策定した「マザーレイクゴールズ(MLGs)」のコンセプトは「変えよう、あなたと私から」。今、草の根のボランティアなどにより、変化の種が各所に蒔かれている。
琵琶湖は、淡水魚の宝庫。約45〜50種の在来魚が生息している。しかも、その内の17種は琵琶湖・淀川水系の固有種(亜種も含む)である。琵琶湖で行われる漁業は、湖岸から沖合に向かって矢印型に網を張り、「つぼ」と呼ばれる部分に魚を誘導して漁獲する小型定置網漁法「エリ」が代表的。繁殖期にヨシ帯や水田などに向かっていく湖魚の生態を巧みに利用するエリ漁には、1000年以上の歴史がある。資源にやさしい(=必要な量だけを漁獲する)伝統漁法だ。この漁が生み出す景観や「ふなずし」などの食文化は、次代に継承したいレガシーである。

エコ&美味しい、琵琶湖の新ドライブスポット 「LAGO 大津」

2025年3月、琵琶湖畔に「LAGO 大津」というランドマークが誕生した。LAGO(ラーゴ)は、イタリア語で「湖」の意。1872年創業、滋賀県近江八幡市に本拠を置く和菓子の老舗「たねや」がオープンした新店舗だ。季節の和菓子を販売し、併設のカフェも利用できる。小川や池の水、植栽への散水などには水再生センターの処理水を使用するなど、環境との共生が重視されている。

琵琶湖を望む敷地には「いのちをはぐくむ“琵琶湖の森”」と、自然に溶け込むような店舗がある。

LAGO 大津

住所:滋賀県大津市由美浜4
アクセス:名神高速道路・大津I.C.から約15分
駐車場:あり
https://taneya.jp/lago/

琵琶湖へとつながる八幡堀沿いに立つ隠れ宿 旅籠 八…

琵琶湖の東側に位置する滋賀県近江八幡市には、豊臣秀次が城下町整備の際に開削した八幡堀が巡らされている。この堀沿いに静かにたたずむのが「旅籠 八…」(はたご わかつ)だ。

琵琶湖へのドライブ旅で訪れたい名宿

静謐という贅沢があるのだと知った。近江八幡市八幡伝統的建造物群保存地区というロケーション。文化庁から重要文化的景観に認定された「近江八幡の水郷」で、往時の景観を今に伝える八幡堀。「旅籠 八…」は、その堀沿いで静謐にたたずんでいる。1829年に建てられた数寄屋建築(畳屋を営んでいた旧喜多邸)をリノベーションして、2020年に開業した。本館「石の間」と、離れ「木の間」。1日2組限定の料理旅館だ。漂っているのは、あまりにも静かに発散される、時代を超えてきた情趣。この日の旅で見てきた湖面の残像をまぶたの裏に残しながら、心までもが静謐になっていくのを感じる。

翌日の朝、2階に上がる階段の鍵が開く。「木の間」の宿泊客は階下に八幡堀、遠景に八幡山を望みながら朝食をいただく。「石の間」は、和室とキングサイズのベッドを入れた洋室の2部屋で構成される。「木の間」は、庭園と八幡堀の景色に挟まれている。

時間に余裕を持たせてチェックインできるなら、夕食前に別棟で貸切りのサウナタイムを過ごしたい(要予約/別料金)。クールダウンの冷水には、まさに琵琶湖集水域の地下水が使われている。今回の「水の物語を辿る旅」の意味を噛み締めながら整うことができて、さらに心が清澄になっていくのを感じるだろう。

夕食をいただく日本料理「溜ル」は、敷地内の蔵を改装した空間。ここで堪能できるのは、地元の食材をふんだんに使用した近江懐石だ。まずは、比叡山の杉を手彫りした器で一杯の水が出される。湖国の水を心身に沁み渡らせてから、宴は始まる。

旅籠 八…の風呂と食事

本館「石の間」と離れ「木の間」は部屋のつくりや広さ、景色も異なるが、やはり風呂の違いが明瞭。食事は朝夕ともに、近江の自然の恵みを心ゆくまで堪能できる内容だ。

「木の間」の風呂は、醤油樽を手がける職人に特注。高野槙の桶風呂だ。二人でも広々と浸かることができ、高野槙のやや柔らかく甘みを含んだ清涼な香りに癒される。右は「石の間」の風呂。京都の鞍馬山から採掘した重量3トンの鞍馬石をくり抜き、母親の胎内にいるかのような安らぎをイメージしてつくられている。庭を眺めながら、時間を忘れて。
近江懐石では、一皿ごとに日本酒とのペアリングも楽しめる。近江牛は藁焼き、すき焼き、出汁しゃぶなど季節の調理法で提供。「石の間」の宿泊客は、離れ2階の隠れ茶室で朝食をいただく。土鍋で炊いた滋賀県長浜の無農薬米、政所納豆、近江牛のしぐれ煮、黒大豆味噌の味噌汁といった地場の美味が並ぶ。

旅籠 八…のご予約は、トヨタファイナンス トラベルデスクへ

宿泊料金

ベストアベイラブルレートでご案内します。

レクサスカード会員さま特典

レクサスの BEV(RZ、UX300e) 新車・CPO オーナーさまも対象

●貸切サウナ リトリートプランをご予約のお客さま
10,000円/1組さまのサウナクレジット
●その他プランをご予約のお客さま
アロマスプレープレゼント(1本/1組さま)

トヨタファイナンス トラベルデスク
WEBでのお問い合わせ

各施設へ直接ご予約された場合は特典が適用されません。
《ご利用いただけるお客さま》レクサスカード会員さま 、レクサスの自動車クレジットをご契約中のお客さま、
レクサスの BEV(RZ、UX300e) 新車・CPO オーナーさま
ご利用予定日の 10 日前までにお問い合わせください。
旅行代金は実費発生します。お申込みいただいたサービス提供者へのお支払いとなります。
お申込み条件を満たさない場合、ご紹介をお断りさせていただきます。

LEXUS LUXURY HOTEL COLLECTION では、お客さまに最適なホテル選びをご提供させていただくため、トヨタ ファイナンス トラベルデスクにてお電話での手配を承っております。
世界中にある約 2,000 以上のホテルごとにさまざまな特典がご利用いただけます。
「ホテル選びに迷っている」「金額や特典のみでも確認したい」など、お気軽にお問い合わせください。

BEVに乗って、琵琶湖から流れでる水を辿り、水都大阪までのドライブ旅へ

琵琶湖と瀬田川の境界は、瀬田唐橋から1キロメートルほど上流だ。壬申の乱や源平合戦など、この辺りは幾度も戦乱の舞台となり、「唐橋を制する者は近江を制し、天下を制す」といわれた。LEXUS RZ450eは、琵琶湖から大阪湾までの水の流れを見届けるべく、琵琶湖最南端部を出発。柿本人麻呂が「近江の海 夕波千鳥 汝が鳴けば 心もしのに 古思ほゆ」と詠んだ時代から歴史も下っていく旅だ。

現在の瀬田唐橋は1979年に再架橋されたコンクリート製だが、外観は往時の木橋の風格を意識して再現されている。

川の流れに沿って下り、30分ほど走った京都府宇治市の南端付近で、瀬田川は宇治川へと名前を変える。さらに3〜4キロメートル下流の宇治橋付近に現れるのが、『源氏物語』の作者である紫式部の像だ。古来、宇治川は水運・灌漑・景観の要所となり、平安時代の貴族文化の舞台装置としても重要な役割を果たしてきた。

宇治川と紫式部
『源氏物語』において、宇治川は単なる背景ではない。人物の心理や物語全体の情緒を映し出す鏡として機能している。

宇治発電所(SMBC宇治グリーン発電所)は、1913年に運転を開始した。宇治川の水量を調整する堰や水路が発電の要となっている。宇治市の近代化に大きく寄与した歴史的遺産として知られ、現在も稼働中だ。

宇治発電所(SMBC宇治グリーン発電所)。
宇治発電所の敷地内は一般公開されていないが、外観や堰・水路の一部は川沿いから視認できる。

宇治川が淀川になるのは、京都府八幡市の背割堤付近。さらに30分ほどで伏見に着く。平安時代に都と難波(大阪)を結ぶ水運路が整備され、桃山時代に豊臣秀吉が伏見城を築き、淀川舟運の中継基地として繁栄したのが伏見である。豊富な地下水を利用した酒造業は、江戸時代から全国に広く知られるものとなった。

伏見の酒蔵。
伏見では平安時代から宮廷や寺社に納める酒の生産が始まった。江戸時代に入ってから酒の名産地として繁栄期を迎えることに。

農業用水・工業用水・都市用水の取水を目的に、1964年に造成された淀川大堰まで来れば、大阪湾までは残り約50キロメートル。淀川の水位を制御するために明治期につくられた旧毛馬閘門まで来れば、残り約15キロメートル。舟運が隆盛を極めた江戸時代、大阪側の終着点として栄えたのが八軒家浜だ。京阪電車「天満橋駅」前のリバーサイドエリアとして整備され、観光船の発着場となり、変わらぬにぎわいを見せている。そして、水の旅がフィナーレを迎えるのは、大阪湾沿岸に位置する港大橋。旅の総括として、あべのハルカスの展望台に昇り、地上約300メートルから水都大阪を望むのもいいだろう。

左:現代の水資源管理・都市計画の象徴的施設として運用されている淀川大堰。右:旧毛馬閘門は、鋼製・石積みの閘門跡。現役ではなく、保存施設として公開されている。

例えば、湖面や川面の月影は移ろいの象徴であり、とどまらない美を慈しむ感性に訴えかけてくる。西行は「近江路や 琵琶の湖の 夕まぐれ 雲居にひびく 鳥の声かな」と詠み、幽玄の世界観を表現した。紫式部は「宇治の川のほとりに出でて、波のゆるやかなるさま、さやけき水の色、柳影のうつろひなど、いとど心にしみ入るばかりなり」と描写した。多くの歌人、俳人、粋人をインスパイアしてきた琵琶湖の水は、今も瀬田川、宇治川、淀川と名前を変えながら、安寧と無常を海に注いでいる。

港大橋は1974年の開通以来、港湾と陸上交通の接続点として港湾都市大阪の発展に寄与。

八軒家浜は大阪市中央区の天満橋付近、大川(旧淀川)の北岸に位置している。地上約300メートルの展望台「ハルカス300」からは、ぐるりと360度の眺望を満喫できる。淀川が大阪湾に注ぎ込む様子も望めて感慨深い。

世界でも珍しい「水の回廊」を中心に発展
サステナブルな水都大阪を知る

大阪のように都市の中心部に人工・自然水路が組み込まれ、多様な恩恵をもたらす回廊として活用されてきた都市は世界的にも珍しい。豊臣秀吉による戦略的都市設計は、時を超えた今も色褪せていない。今、サステナブルな水都の魅力をあらためて考えてみたい。

秀吉による城下町構築の集大成は時を超えて

琵琶湖に端を発し、大阪の大動脈として機能してきた淀川。さらには、土佐堀川や堂島川など都市内水運の中心となってきた人工運河。これらが水の回廊となり、内陸と大阪湾をつなぐネットワークが形成されたことで、大阪は経済的な発展を遂げてきた。近江の米、紀州の木材、瀬戸内の塩などの一大集積地となり、水都ゆえの商都になり得たのである。

大阪「水の回廊」のイメージ図。

水都としての大阪の骨格をつくったのは、豊臣秀吉だ。1583年の大阪城築城に伴い、城下の都市計画の一環として土佐堀川や堂島川などの掘削を始めた。これまで見てきたように、秀吉は近江の長浜城下では琵琶湖の水を引き入れた米川を造成し、防御・灌漑・生活用水・舟運という4種の狙いを成就した水路に仕上げている。また、京都の伏見城下では宇治川や濠川の改修を行い、京都・大阪・伏見を結ぶ舟運ルートを整備している。水路を城下に巡らせて、域内交通・生活利便・対外防御・経済発展を統合していく知恵と技術。これらが大阪城下では太閤史上最高レベルで発揮され、水都大阪の骨格は逞しいものとなった。

また、秀吉は当時としては画期的な都市インフラである下水道システムも築いている。石組み・粘土防水・勾配設計などで非常に精密に施工した暗渠式(覆いをしたり、地下に設けたりして外から見えないようにした方式)の下水路を張り巡らせたのである。長浜や伏見の城下では、この「太閤下水」に相当する体系的な下水道は確認されていない。大阪城下には疾病や悪臭を排した衛生都市の概念を持ち込み、雨水も速やかに河川へと排出して都市の冠水を防止することも目指した。「水を制して人と町を活かす」という。現代から見ても遜色のない思想を具現化したインフラである。

太閤下水。

「現代から見ても遜色のない」というのは単なる比喩ではない。現代の大阪市中央区において、実際に「太閤下水」の一部が現役で使用されている。花崗岩や安山岩を緻密に積み上げた石組みの頑強さ、自然流下で詰まりにくい設計などにより、数百年の使用に耐え得るサステナブルなインフラが、16世紀末に生み出されていたのだ。大阪市内には、地上に設置したガラス窓越しに現役の「太閤下水」を見学できる場所が整備されている(大阪市中央区農人橋の市立南大江小学校西側)。都市技術センター(06-4963-2092)に事前に申し込めば、地下まで降りて内部を見学することも可能だ。

十石舟・三十石船。

江戸時代に大阪が栄華を極めたのは、三十石船という画期的な船が登場したことも大きい。帆と櫓の併用で、従来の手漕ぎ中心の船よりも速く、安定した運航が可能になった。琵琶湖では大きな荷を安定して運ぶことができ、平底の造りによって瀬田川や宇治川の浅瀬でも航行可能。「三十石(約4.5トン)」という積載量で設計され、それまで大きさがまちまちで積載量も曖昧だった船に比べ、物流計画が立てやすくなった。

道頓堀。

もともと大阪の商人で、秀吉から水路開削の任務を与えられた安井道頓。彼の名に由来する道頓堀には今、海外からの観光客を乗せた船が無数に往来し、堀の界隈は大変なにぎわいを見せている。まさに、サステナブルな水都大阪の面目躍如である。

水都 大阪の伝統を受け継ぎ、新たな魅力を水辺から発信する

大阪商工会議所、大阪府、大阪市、関西経済連合会、関西経済同友会、大阪観光局、大阪シティクルーズ推進協議会など行政機関や経済団体、民間団体が一体となった「水都大阪コンソーシアム」を中心にして今、水都大阪の魅力を活性化するプロジェクトが進行中だ。

水都大阪コンソーシアムが牽引する水辺のコンテンツ開発

2001年以降は水辺の環境が整備されていくのと並行して、水の回廊の各地を巡るクルーズ船の就航も相次いでいる。大阪滞在中も、さまざまな場所や時間において、多種多様なクルーズ船を見かけた。時にはLEXUSを降りて水辺を歩いてみたり、船に乗って水面の目線から水都大阪の魅力を味わってみるのもいいだろう。

2001年に「水都大阪の再生」が国の都市再生プロジェクトに採択されてから、大阪では水の回廊沿いの遊歩道や船着場などが整備され、橋梁や護岸がライトアップされるといったハード面の充実が図られてきた。また、水都大阪フェスなどソフト事業の展開により、認知や共感・興味の喚起も進められてきた。

今回のドライブ旅で訪れた八軒家浜の船着場も、ハード面の取り組みの代表例だ。かつて琵琶湖からの三十石船が到着した八軒家浜は、大阪にとって貴重な歴史遺産であることは間違いない。眠らせておかず、やはり積極的に活用した方がいいだろう。その土地ならではの体験を求める人にとって、往時の舟運を想起しながら飲食もできる「川の駅」で過ごす時間は、特別なものになり得る。何より、人間は水に惹かれるようにできている。少し古風な言い方をするなら、川は風の通ひ路だ。風が通って水面がゆらめく様子は、脳波をα波優位(リラックス状態)に導くとされる。水辺に接すると、人間の脳はマインドフルで穏やかなモードに切り替わるのだ。これは「ブルーマインド(青の心)」と呼ばれ、心的疲労の回復・創造性の促進・不安の低下といった心理的恩恵をもたらすとされている。森林浴のみならず、水辺ウォーキングにも癒しの作用が期待できるのだ。400年以上も前に「水の回廊」を整備してくれた豊臣秀吉に感謝の念を捧げながら、ここではしばしLEXUSを降りて、水辺を逍遥してみてはどうだろう。

ともに八軒家浜から捉えた夜景。ライトアップされた橋を背景に、岸辺では光と音に踊る噴水ショーが開催され、クルーズ船もしばし止まってドラマチックな情景を楽しんでいた。

大阪のにぎわいを水辺から発信。大阪市かわまちづくり

かわとまちが一体となった魅力的な水辺空間を創出するべく、国土交通省と民間が手を携えて多様なにぎわいを生み出していくプロジェクト「大阪市かわまちづくり」も進行中。

港大橋をくぐって夢洲の大阪・関西万博会場を結んだクルーズ船。

道頓堀を開削した安井道頓もきっと微笑んでいるに違いない

あのランドマーク的看板でお馴染みの道頓堀沿い(湊町~日本橋の約1キロメートル)も、今は「とんぼりリバーウォーク」として遊歩道・ベンチ・水上テラス・夜間ライトアップといった趣向が加わっている。「とんぼりリバークルーズ」も就航し、「水都大阪の顔」として世界中から人が集まる場所にアップデートされていた。

道頓堀を往く満席のクルーズ船。

紀元前500年頃の哲学者、ヘラクレイトスは「同じ川に二度は入れない」という言葉を残した。「存在とは常に変化と運動である」と説いている。変化すること、流れゆくことこそ、この世界の本質だ。すなわち、川はこの世界の本質そのものである。逞しく変化していく水都大阪を目の前にしながら、旅の終わりにそうした思索が脳裏をよぎった。琵琶湖の静かな波もいいが、道頓堀のにぎやかな波もまたいい。こうして穏やかにいられるのも、つまりは「ブルーマインド」ということなのだろう。水辺の魅力を存分に味わう贅沢な旅が、大阪で見事に完結した。

ラグジュアリーなだけでない、今年もグリーンキーを取得しサステナブルツーリズムを標榜するホテルをLEXUSのBEVで訪ねる

ザ・リッツ・カールトン大阪
「フォーブス トラベルガイド」ホテル部門で5つ星を獲得し、国際的な環境認証プログラム「グリーンキー」を取得しているザ・リッツ・カールトン大阪。ラグジュアリーでサステナブルな旅のデスティネーションに相応しい。

2024年に客室がリニューアルされた名ホテルへ

ザ・リッツ・カールトン大阪は、1997年の開業当初から「Homes Away from Home(第二の我が家)」というコンセプトを掲げている。英国貴族の邸宅を思わせるしつらえは、格式の中にくつろぎを感じてもらうためのもの。館内の至るところに絵画、彫刻、工芸品が飾られている。作品について知りたければ、毎日18時から開催の「アートツアー」に参加してみよう。スタッフの案内による、芸術鑑賞という体験価値が提供され、終了後には大阪ならではのドリンクが提供される。ホテル高層階部クラブフロアおよびクラブスイート宿泊者のみがアクセスできる「クラブラウンジ」では、朝食・軽食・アフタヌーンティー・夕食前のオードブル・スイーツ&コーディアルといったフードプレゼンテーションを満喫することができる。「水と歴史の物語」を辿る、琵琶湖と大阪をつないだ贅沢な旅は、ここに自然観や生命観、ホテル観も一新されて、見事に完結した。

ロビーを始めとする内装は英国スタイルで統一。クラブフロア(33階〜35階)と、36階、37階のクラブスイートの宿泊者は、34階の「クラブラウンジ(The Ritz-Carlton Club Lounge)」を利用可。スタッフがホテル内の美術品を解説する宿泊者対象の「アートツアー」も人気。
フランス料理「ラ・ベ」
ミシュランの星に輝くメインダイニングは、素材の本質を引き出す正統派フレンチ。伝統的技法を守りながら、日本の旬の素材も巧みに取り入れ、色彩と盛りつけの美を追求する。
イタリア料理「スプレンディード」
新鮮な食材を使ったシンプルながらも味わい深いイタリア料理が楽しめる。イタリア各地のワインも厳選して揃え、料理とのペアリングを提案してくれる。
「スプレンディード」は新料理長として青嶋誠之氏を迎え入れた。イタリアで修行中、現地20州のほぼすべてを周り、食文化・郷土料理を学んだ逸材だ。
日本料理「花筐」
「季節の移ろいを味わう日本料理体験」を。四季がある国ならではの美味しさ・美しさを提供。正統派会席料理の技法を守りつつ、現代的な感性でもてなしてくれる。
中国料理「香桃」
伝統的な広東料理にモダンなエッセンスを加えた料理を評茶員厳選の中国茶とともに。

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宿泊料金

ベストアベイラブルレートでご案内します。

レクサスカード会員さま特典

レクサスの BEV(RZ、UX300e) 新車・CPO オーナーさまも対象

●ホテルクレジット($100相当/滞在)
●毎朝食無料(1室2名さま分)
●Wi-Fi利用無料
●ウェルカムアメニティ
●お部屋のアップグレード(空室状況による)※1
●アーリーチェックイン(空室状況による)※1
●レイトチェックアウト(空室状況による)※1

※1 ご希望の際は予約時に承ります。回答は当日現地にてご確認をお願いします。
※2 レストラン利用をご希望の際は、予約時にお申し出ください。

トヨタファイナンス トラベルデスク
WEBでのお問い合わせ

各施設へ直接ご予約された場合は特典が適用されません。
《ご利用いただけるお客さま》レクサスカード会員さま 、レクサスの自動車クレジットをご契約中のお客さま、
レクサスの BEV(RZ、UX300e) 新車・CPO オーナーさま
ご利用予定日の 10 日前までにお問い合わせください。
旅行代金は実費発生します。お申込みいただいたサービス提供者へのお支払いとなります。
お申込み条件を満たさない場合、ご紹介をお断りさせていただきます。

LEXUS LUXURY HOTEL COLLECTION では、お客さまに最適なホテル選びをご提供させていただくため、トヨタ ファイナンス トラベルデスクにてお電話での手配を承っております。
世界中にある約 2,000 以上のホテルごとにさまざまな特典がご利用いただけます。
「ホテル選びに迷っている」「金額や特典のみでも確認したい」など、お気軽にお問い合わせください。

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