獣医師が教える
ペットとドライブするときの心得。大切な“家族”と、安全に快適に。
犬にとっての車内は、音や振動、温度変化がともなう“非日常”。負担がかかりやすいのは当然だ。だからこそ、飼い主が適切に備えることで、LEXUSでのドライブはより快適に、より安心なひとときへと変わる。では、具体的にどんな配慮が求められるのか。総合診療と救急医療の現場で多くの犬と向き合ってきた獣医師の石田哲太郎先生に、出発前・走行中・到着後の流れに沿って心得を伺った。
Text:Mio Amari
Edit:Misa Yamaji (B.EAT)
温度管理が第一歩。愛犬を守る車内環境づくり
愛犬をクルマに乗せる場面は、通院や買い物、旅行まで多岐にわたる。その際、まず注意すべきは“温度管理”だ。獣医師の石田哲太郎先生はその重要性についてこう話す。
「犬は汗による体温調節ができず、車内の温度上昇は命に関わります。夏季はもちろん、冬でも日差しが入れば急激に温度が上がるため、油断は禁物。出発前からエアコンを稼働させ、快適な状態に整えてから乗車させてください」
次に重要なのは、安全な乗車姿勢を確保することだ。愛犬の大きさや、クルマに乗り慣れているかどうかにもよるが、犬が運転の妨げにならないようにクレートに入れて後部座席に固定するのが基本である。
では、クルマ移動が苦手な犬にはどうアプローチすべきか。
「多くの犬は、クルマそのものより“予期しない変化”に不安を抱きます。段階的な慣らしがストレス軽減に有効です」(石田先生)
短い距離からスタートし、落ち着いて座れたら褒める。「クルマに乗る=よいことがある」と学習させることが大切だ。
さらに、出発直前の体調管理にも気を配りたい。
「直前の過剰な食事は、嘔吐やクルマ酔いのリスクを高めます。出発2時間前までに食事を済ませ、難しい場合は量や水分を調整することが望ましいです」(石田先生)
環境が変わる場面では、いつもの匂いがついたタオルやブランケットがあるだけで犬の不安はぐっと和らぐ。慣れ親しんだ感覚を持ち込んで、移動前の緊張を和らげたい。
走行中の安全確保と、計画的な休憩
移動中、もっとも避けたいのは“無防備な乗車”である。
「固定されていない状態は想像以上に危険です。衝突時にはからだが投げ出され、人と犬の双方が重大な負傷を負う可能性があります。適切な固定は必須です」(石田先生)
前述の通り、犬を乗せる場所は後部座席。膝上乗車や前席は、エアバッグ作動時なども含めて事故リスクが高まる。特に小型犬はからだが軽く、揺れの影響を受けやすい。
「クレート内に滑り止めマットを敷く。視界を確保できるように設置するといった配慮も有効です。周囲を把握できることで不安が軽減される犬は、少なくありません」(石田先生)
休憩の目安は2時間に1回。
「同一姿勢が続くと、筋骨格系にも消化器系にも負担がかかります。休憩を設けることが、体調維持には不可欠です」(石田先生)
また、運転操作もケアの一部だ。
「犬は言葉で説明できない代わりに、体感を駆使して周囲の状況を正確に判断し、学習しています」(石田先生)
急発進・急ブレーキ・急ハンドルを避け、安定した運転によって犬の安心を保ちたい。
換気と空気の流れが、呼吸を守る
温度が適切に保たれていても、空気が停滞すると犬は体温を下げづらくなる。石田先生は、呼吸の仕組みについてこう説明する。
「パンティング(=浅く速い呼吸)で熱を逃がしていますが、空気が停滞すると放熱効率が著しく低下します。湿度が高い環境では注意が必要です」
特に呼吸器や循環器疾患がある犬、高齢犬、子犬は、涼しめの温度設定と空気の流れを確保することが、臨床の観点からも重要だ。
エアコンは、風が直接当たらない位置で調整したい。乾燥や冷えが体調不良の一因になることもあるからだ。外気導入を基本としつつ、必要に応じて窓をわずかに開けて車内の空気を入れ替える工夫をするのがよい。直射日光が差し込む場合はサンシェードを使い、クレートにも空気が巡るような配置をしておきたい。
「冷房時でも空気が停滞すると、犬は呼吸しづらくなることがあります。風の通り道をつくり、呼吸の負担を減らしてください」(石田先生)
発作時の対応と落ち着かせ方
移動中は、犬の体調が急激に変化しかねない。その瞬間の飼い主の対応が、症状の進行に影響を及ぼすこともある。
「飼い主は慌てず安全に停車し、刺激を最小限にすることが重要です」(石田先生)
発作歴がある犬や酔いやすい犬については、事前に獣医師へ相談し、薬の使用に慣らしておくと安心だ。
興奮や緊張が続いた状態では、犬の判断や行動が乱れやすい。特に初めて訪れる場所では、環境刺激が多く、負担が増しやすい。
「到着後はすぐに活動させるのではなく、散歩や水分補給で体調を落ち着かせる時間を設けてください」(石田先生)
到着後のひと息は、その日の体験を“安心できる記憶”に変えるための、大切な過程なのである。
経験が「次の移動」を楽しみにさせる
移動は犬にとって、世界を広げる体験だ。そして、それが「どんな記憶として残るか」が、次の移動を左右する。石田先生は、その学習プロセスについてこう説明する。
「犬は経験を記憶し、次の行動へ反映させます。“安全だった記憶”を優先して学習します。快適な移動が続くほど、抵抗が減り、新しい体験の幅が広がります。そこから得たよい経験こそが次の移動の負担を軽くします」
未知の景色や体験が、犬にとっての“小さな成功体験”になる。安心できる時間を積み重ねるほど、クルマ旅への印象は変わっていく。
安全な準備と、丁寧な移動の先にあるもの。それは、愛犬が新しい景色を知り、飼い主とともに行動範囲を広げていく未来だ。その歩みこそが、互いを信頼し、また旅にでたくなる原動力になる。
※画像は一部イメージです。
石田 哲太郎(いしだ・てつたろう)先生
獣医師。2006年酪農学園大学卒。犬や猫の病気を未然に防ぐ“予防医療”の普及を目的とした一般社団法人「動物予防医療普及協会」理事。2025年12月に開院した「つくば動物高度医療センター」副代表として、24時間365日の救急医療体制と高度な専門医療の提供に携わる。
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