その先に待つ、冬ならではの魅力あるウェルネス旅のために
冬のドライブで「危ない」を避ける。準備と走り方、そして冬の楽しみ
冬のドライブは、路面が積雪していたり凍結していたりと「怖い」イメージをもたれている人も多いはず。でも、怖さの理由を知り、解決するノウハウを知れば、その先には冬ならではの楽しいアクティビティとウェルネス体験が待っている。モータージャーナリストの小川フミオ氏に、 “基本の基”を教えてもらった。
Text:Shigekazu Ohno(lefthands)
冬のドライブを「苦手」にしないために。まずは「怖さの正体」を知る
冬のドライブは、路面が積雪していたり、凍結していたり、ほかの季節とは異なるコンディション下となる。そのための準備や心構え、注意や知識、運転テクニックが必要になってくるため、はなから「苦手」意識をもっている人も少なくないのでは。
でもその先には、スキー、スノーボード、スノーシュー&スノートレッキング、ワカサギ釣り、冬キャンプ、温泉、サウナなど、多彩なウィンタースポーツを含めた魅力的なアクティビティ&ウェルネス体験が待っている。今回は冬のドライブの注意点と楽しみ方を、モータージャーナリストの小川フミオ氏に教えてもらう。
――冬のドライブに潜む危険性とは
小川:最大の危険は雪の中での遭難です。クルマが雪中にスタックして動けなくなってしまうと、もはや自力ではどうすることもできません。ましてや携帯電話の圏外となる山中などでは、助けを呼ぶことすらままならないことも。
危険を避けるベストな方法は、そもそも雪の中に入っていかないこと。行こうとする場所、通る道の雪の深さを、できるだけ事前にチェックしておきましょう。そして、生活道路ならいざ知らず、興味半分に雪の中に入っていくような行為は絶対に避けるべきです。
次に、凍結路について。いうまでもなく、滑って事故を起こす危険性が高まります。冬場は、都市圏でも凍結が起こります。日なたは乾いているのに日陰は凍結という、いわゆる「アイスパッチ」や、片側だけ凍結という「スプリットミュー」では、車両の姿勢が不安定になる危険性もあります。
山間部では、日陰となる場所は太陽の方向である程度予想がつくので、見た目ではわからないこともあるという意識をもちながら、特に速度を落として走行するように心がけましょう。
――冬のドライブに向けて、必要な準備とは
小川:まずは事前の準備について。冬場に、雪や凍結の可能性があるところへでかける機会がある人は、スタッドレスタイヤに履き替えましょう。オールシーズンタイヤという、サマータイヤに近い操縦性と低ミュー路での走行性の両立を図ったタイヤも選択肢のひとつとなります。ただし、雪上でのグリップ力はスタッドレスタイヤにはおよびません。個人的には、雪上試乗会でいいなと思ったオールシーズンタイヤを自分のクルマに装着していたものの、東京で積雪のあった日、坂道できちんと止まっていられずに焦った経験があります。
タイヤ専門店の中には、スタッドレスタイヤの購入を条件に、冬の間、サマータイヤを保管してくれるサービスを提供しているところもあります。タイヤの保管場所がないという方は、ぜひ探してみることをおすすめします。また、オイルを含んでいるタイヤは、いってみれば“生鮮食品”です。製造年月を確認して購入してください。1年以上経っているタイヤは避けたほういいし、野ざらしに保管されているタイヤも、グリップ力が落ちていることがあるので要注意です。
タイヤチェーンもたいへん有効です。昨今のクルマは重量が増していて、素人がジャッキアップするのはほとんど不可能なので、ジャッキアップ不要で装着できるタイプを選びましょう。注意点としては、スリップ率などが変わることで、車両の運転支援システムの作動に影響が出る可能性も。できれば購入前に、クルマを買った販売店で、どんな製品なら大丈夫かを事前に確認して購買するといいでしょう。作業のための軍手やレザー製手袋を、念のために2つくらいトランクルームに常備しておくこともおすすめします。
――実際に運転する際の注意点や必需品は
小川:雪道を走る可能性がある場合、必要なものはサングラスです。路面の表情がわかる偏光レンズで、かつ明るさによって透過率が変わる調光タイプのものをおすすめします。
雪道では制動距離が伸びがちなので、先行車との車間距離を多めに取るようにしましょう。あらかじめ、走り出してすぐブレーキを踏んでみて、どんな感じで減速して止まるのか、雪との“相性”を確かめておくといいでしょう。そして注意点ですが、強いブレーキは車両の姿勢が不安定になりがちなので、危険です。じっくり、ゆっくりを心がけてください。
積雪路や凍結路では、駆動力を常にタイヤに与えておくことが走行安定性につながります。特にカーブでは、いきなりアクセルペダルから足を離したりしないで、むしろ軽くアクセルを踏みながら回っていくようにしてください。このとき、自分のクルマが前輪駆動か後輪駆動か、はたまた4WDかで動きが変わります。後輪駆動のスポーティなクルマでは、カーブでアクセルペダルを踏み込みすぎると車体後方が外側にふくらみがちになり、最悪の場合はスピンしてしまいます。オーバーステアと呼ばれる現象です。
一方、前輪駆動や4WDでは、アクセルペダルの多めの踏み込みで車体前方がカーブの外側へとふくらむ傾向があり、注意が必要です。こちらはアンダーステアと呼ばれる現象です。とはいえ、後輪駆動車と比べると駆動力がよく働くので、雪道の運転には後輪駆動よりも適しているといわれる所以となっています。
いずれにしても、ステアリングホイールの操作はゆっくりと。急に切ると、角度のついた前輪がブレーキとなって働き、後部の安定性が失われます。できるだけ早めに操舵する角度を決めて、そこから動かすことなくじっくりと曲がっていくのがベストです。ふだんから舵角を一定にしてカーブを曲がることを意識していれば、安定した走行ができます。
――世界中のあらゆる雪道を走ってきたモータージャーナリストとして、特におすすめしたい対策は
小川:もっとも重要なのは、事前の準備も、そして実際の運転に関しても、慎重に行ってほしいということです。怖がりすぎないことも大事です。ぜひおすすめしたいのは、機会を見つけて雪上/氷上ドライビングスクールに参加することです。
自分の運転するクルマの性能や限界というものが見えてくることで、不安感を取り除く効果もあります。免許取得以来、自己流になりがちな運転を改めて習うのはためになり、かつ面白いので、ネットなどで実施情報を探してみてはいかがでしょうか。
――LEXUSドライバーに対しての、追加の注意点やコメントは
小川:基本的にはほかのクルマと同じですが、積雪路では路面と車体の間(最低地上高)が大きい方が走破性が高くなります。
積雪路を走る機会が多いなら、本格的クロスカントリー型SUVであるLEXUS LXやLEXUS GXがベストな選択肢かもしれません。セパレートフレームに、起伏の多い路面でも後輪の接地性を確保してくれるリジッドタイプのリヤサスペンションを採用しています。低回転域からエンジントルクがたっぷりあるため、滑りやすい路面でたいへん重要な、デリケートなアクセルペダルの操作がやりやすいことも、高い操縦性につながっています。
RZなどのBEV車種に関しても、本州のスキー場は道路の除雪が行き届いているところが多いので、たいていは問題なく行けるでしょう(旅行中の降雪の可能性は常にチェックしておきましょう)。ただし、外気温が下がると充電効率が下がったり、走行距離が短くなる傾向があるので、要注意です。ふだんよりも頻繁に、航続距離のメーターに気を配るようにし、早めの充電を心がけたいものです。
――ご自身が冬のドライブで体験したアクシデントや思い出は
小川:仕事柄、冬のドライブはいろいろな場所で経験してきました。一番長かったのは、スウェーデンからロシアまで走ったことです。景色のすべてが、まるで色を塗り忘れたかのように真っ白で、そんな中をドライブしたことは一生の思い出になっています。雪道でのドライブには、それ自体が非日常体験となる魅力がありますね。
また直近では、真冬のニュージーランドでのウィンターテスト(自動車やタイヤのメーカーが行うテスト)で、830馬力のスーパーカーの運転をしたことです。雪上でドリフト走行などを楽しみました。走行タイムを競う催しもあり、私は優勝してお褒めの言葉をいただきました。ただ、スパイクタイヤを履いていても、コースから飛び出す人もいて、低ミュー路では心してドライブしなければいけないと、改めて思いました。
――最後に、読者にコメントを一言お願いします
小川:冬のドライブは、ふだん気がつかなかったクルマの特性を知ることができるいい機会です。できれば、公道上と違って安全な環境でそれが味わえるスクールやレッスンに参加してみてください。「LEXUSのクルマって、先進運転支援システムも含めて本当によくできているんだな」と感心するはずです。積雪路を含めた悪路を走ると、愛車への信頼感も高まることでしょう。
冬のドライブの多彩な楽しみ
小川氏が指南してくれた冬のドライブの心得や注意点を胸に、今年の冬は愛車を駆ってでかけてみないか。
冬のアクティビティといえば、スキー&スノーボードというのが定番だが、最近はアウトドアブームにつながるものとして、ウィンターキャンプ、スノーシューを履いて楽しむスノートレッキング、そして凍った湖沼に穴を開けてのワカサギ釣りも、あたたかいテントや小屋の中で楽しめて、さらにその場で釣りたての魚を天ぷらなどの料理にして味わえるように進化していて、各地で人気が高まっている。
幻想的な雪景色の中で入る露天風呂の温泉やサウナも貴重な体験となるだろうし、雪原にセッティングされたテーブル、あるいはかまくらで食事やお酒を楽しめるような体験を提供する宿やホテルも増えている。雪遊びは、ペットにとっても胸躍る体験となるだろう。空気が澄んだ冬空は天体観測にも適しているので、防寒対策をして、夜もアウトドアにでかけてみたい。寒さも雪も含めて、自然を肌で感じる冬のウェルネス体験に、ぜひ挑戦してみてほしい。
小川フミオ
フリーランスのジャーナリスト。『NAVI』(休刊中)や『モーターマガジン』の編集長を歴任し、グルメ誌の編集長も務めるなど、活動範囲はクルマから、グルメ、デザイン、ホテルなど広範囲にわたる。現在乗っているクルマ(の1台)はLEXUS NX。
※画像は一部イメージです。
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