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LEXUS人気車種に迫る
LEXUS CT200hは生産終了間近。ハイブリッドの小さな高級車が今、再びの注目を集める

LEXUS(レクサス) CTは2010年のジュネーブ国際モーターショーではじめて姿を現し、2011年にハイブリッド専用モデル「CT200h」として発売。レクサスブランドでもっともコンパクトなこのモデルは長きにわたって愛され、発売以来、38万台の世界販売台数を記録する。すでに2022年10月をもって生産終了することが発表されているが、今あらためて自動車ジャーナリスト渡辺敏史氏が「CT200h“version L”」に試乗。その熟成されつくした上質さを味わった。

Text:Toshifumi Watanabe
Photo:Hidekazu Nagamoto

発売から11年経過しても色あせないCTの魅力

CT200hのCピラーは、英字の「C」や「T」にも見える特徴的なデザインを採用。またリヤゲートの上段・下段にはスポイラー形状を取り入れている。

レクサスのラインアップにおいて、もっともコンパクトなモデルとなるCT。果たしてどのくらいのサイズ感かというと、世界のスタンダードカーのど真ん中ともいえるCセグメントハッチバックの中でも、ひと回り小さいところにある。

実際、道の狭い都内の市街路で試乗していると、幅的に絶妙だなぁと思うことが多い。ちょっと古い立体駐車場になると、パレットの両端にタイヤを当てないように収めるのが大変なこともあるが、CTであれば大半の場所で無理なく収めることも可能だ。この取り回しのストレスのなさを好んで、このクルマを愛用しつづけているというユーザーも多いのではないかと思う。

スタイリング変更をともなう2度のマイナーチェンジ、そして数々の年次改良を重ねながら足掛け11年以上にわたって販売されてきたCTも2022年の10月で生産を終了、現在は最後の特別仕様車となる「Cherished Touring」も販売されている。従来型LSや現行型ISなど、レクサスでは大きなテコ入れを加えながら熟成を進めるというご長寿戦略を採るモデルも多いが、CTもそのひとつということになるのだろう。

レクサスブランドを象徴するスピンドルグリル。メッシュを構成するパーツひとつ一つの大きさは異なり、グリルの上段下段をより広く見せる工夫を施されている。

CTに乗り込んでみると、11年以上の時が流れたという古さはまったく感じないわけではない。主要操作系をドライバーの動線に沿って流れるように配するという「TAZUNAコンセプト」に則った新たなレクサスが現れはじめた今、スイッチ類の煩雑さが気にならないかといえば嘘になる。

が、空調やオーディオのコントロール系がそれぞれ独立して配され物理ボタンですべてが完結する、慣れの必要がないそのレイアウトに安心感を覚える方も少なからずいるのではないだろうか。ちなみにインフォテインメントの画面も10.3インチと大型化されており、表示される情報量に不足は感じない。

CTはレクサスのエントリー的位置付けのクルマながら、内外装色のバリエーションが多いのも特徴だ。標準グレード系もFスポーツ系も基本10色が用意されるほか、メーカーオプションの設定色も設けられている。内装も基準色のほかにさまざまな色や素材が選択できるように配慮されており、オーナメントパネルはグレードに応じてアルミフィニッシュから竹材まで8種類を用意。同門のUXにも劣らないほどの多彩な選択肢が用意されている。

先進運転支援システムではLexus Safety System+を標準装備。ミリ波レーダーと単眼カメラによる歩行者検知(昼)や、レーダークルーズコントロールに対応する。

2度にわたる大幅改良で獲得した走りの上質さ

CTのパワートレーンは一貫して1.8L直4エンジンを軸にしたハイブリッドだ。クルマの電動化が急激に進む昨今だが、その点においては日本の自動車メーカーの先駆けぶりに目を見張るものがあったことを思い知らされる。

そんなわけで、CTの挙げるべき美点のひとつといえば今でも誇れる燃費のよさだ。ロングドライブでは乗り方如何では20km/L超えも難しくはないうえ、街乗りやチョイ乗りでも減速エネルギーをしっかり回収することで燃費が著しく悪化することはないなど、ハイブリッドの特性がしっかり反映されている。加えて、オプションで装着できるACアウトレットは100V/1500Wまでの電力をクルマ側から供給することが可能と、万一の際にはライフラインとしても機能してくれる。

駆動用ニッケル水素電池はラゲッジスペース下に収められるが、低い位置に搭載するため最大375L(VDA方式)の容量を確保。オプションのAC電源もここに配置される。

スポット打点の追加や構造用接着剤の使用によるボディ剛性の向上、それに合わせたサスペンションセッティングの採用、遮音材や制振材の多用など、マイナーチェンジのたびに走りにまつわるさまざまな知見が織り込まれるなどした結果、CTのドライブフィールは熟成極まるものとなっている。

一部グレードを除いて標準装備となっているパフォーマンスダンパーの効果もあって、日常的な速度域ではボディの上下動や共振もすっきり抑えられており、その転がり感は至ってなめらかだ。荒れた路面や大きな凹凸を越えるようなポイントでは、いなし方に少し粗さを感じることもあるが、それでもコーナリング時の接地感や安定性はしっかり確保されている。動的な質感が望外に齢疲れしていない印象なのは、まさにアンチエイジングさながらに逐一対処を重ねてきた効果そのものだろう。

CT200h“version L”は本革の前後シートを標準装備。写真のブラックをはじめ、薄いブラウン系、濃いブラウン系、ベージュ系の4パターンをラインナップする。

いわゆる「小さな高級車」は日本市場ではなかなか成立しづらいコンセプトだといわれてきた。同じお金を払うなら大きいに越したことはない、大は小を兼ねる……と、いざ財布を開く段にはきっと僕だってそういう心持ちになるだろう。

それでもCTに魅かれたユーザーたちによって、長きにわたって支えられてきた。そういう意味では日本でも稀有な、小さな高級車の成功例かもしれない。この先、CTの後継車が登場するか否かは現状ではまったくわからないが、この車格やカタチに興味があるならばほかに代わりのない、そして今も検討する価値のある選択肢なのだと思う。

筆者プロフィール
渡辺敏史/Toshifumi Watanabe

二輪・四輪誌の編集を経て、フリーランスの自動車ジャーナリストに。以来、自動車専門誌にとどまらず、独自の視点で多くのメディアで活躍。緻密な分析とわかりやすい解説には定評がある。

【主要諸元】

レクサス CT200h“version L”

全長×全幅×全高
4355×1765×1460mm
ホイールベース
2600mm
車両重量
1440kg
エンジン
直4 DOHC+モーター
総排気量
1797cc
最高出力
73kW(99ps)/5200rpm
最大トルク
142Nm/4000rpm
モーター最高出力
60kW(82ps)
モーター最大トルク
207Nm
トランスミッション
電気式無段変速機
駆動方式
FF
燃料・タンク容量
レギュラー・45L
WLTCモード燃費
21.3km/L
タイヤサイズ
215/45R17
車両価格(税込)
488万1000円

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