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プロコーチ&ゴルフ記者
“二刀流”中村修が見た女子ツアー最前線Vol.3
女子プロが25年に投入するNEWクラブ
桑木志帆のコーチを務め、さらには「みんなのゴルフダイジェスト」特派記者も務める「二刀流」のプロゴルファー、中村修プロ。2023年オフから指導する桑木は、24年6月の資生堂レディスでツアー初優勝を挙げ、8月のニトリレディスで今季2勝目、さらにツアー最終戦のリコーカップでは3勝目とメジャー初制覇も成し遂げた。プロコーチとして桑木に帯同することも多い中村に、女子ツアーで目にした最前線の話題を伝えてもらう。
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竹田麗央はスプーンをスリクソン「ZXi」に新調
ゴルフクラブの世界は日進月歩。選手たちは、25年のさらなる活躍に向けて、24年シーズン終盤から新しいクラブをテストしていました。
24年は年間8勝を挙げ、メルセデス・ランキング1位に輝いた竹田麗央選手。8勝の中にはUSLPGAツアーのTOTOジャパンクラシックもあり、25年はアメリカで戦います。
竹田選手はスリクソン「ZXi」のスプーンを24年10月半ばから実戦で使い始めました。彼女が言うには、
「スプーンは前のモデルよりも飛ぶようになって、弾道も弱くならない。私はフェードヒッターで、ちょっと右にミスした時に距離が出なかったり、曲がりが大きくなったりしていましたが、今度のモデルはそれがありません」
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このスプーンに関しては、青木瀬令奈選手も評価しています。
「距離がちゃんと出て、高さも出る。スピン量は増えすぎずに高さが出るので、それがキャリーに繋がって、前にボールが飛んで曲がりの幅も少なくなっているところに満足しています」
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小祝さくらは「ZXi7」アイアンにスイッチ
スリクソンのニューモデルでは、小祝さくら選手がアイアンを「ZXi7」にスイッチしました。彼女は5番からPWまでをバッグに入れています。
「打った瞬間に打感が柔らかいと思いました。すぐに替えられそうです」と言って、実際にすぐに替えました。
「ZXi7」は軟鉄鍛造アイアンです。素材は、よく使われる「S25C」ではなく、それより1段柔らかい「S15C」を採用しています。
素材が柔らかすぎると、使っているうちにライ角やロフトが変わってしまうこともあるのですが、鍛造の製法を見直したり、ネック部分の強度を上げたりすることで、「S15C」を用いることができました。
選手がクラブ、とくにアイアンを替えるのは難しくて、距離感や高さ、スピン量が今までのアイアンのイメージと変わってしまうと、なかなか替えられないものです。
なのに、小祝選手がすぐにチェンジできたのは、弾道が変わることなく打感が柔らかくなったからです。
打感が柔らかくなると、選手たちは「コントロール性、操作性が上がる」と口を揃えます。
「ターゲットに向かって押していける」「球が吸い付いてくれる」「しっかりスピンがかかる」という感覚があるそうです。
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青木選手もすぐに「ZXi7」に乗り換えた1人ですが、面白いのは彼女のセッティングです。
ヘッドスピードが40〜41m/秒くらいで、ロングアイアンはボールを止めにくいため、アイアンは8番から。8番が中空の「ZXi5」、9番とPWは「ZXi7」というコンボのセッティングです。
「ZXi5」は、「ZXi7」と並べてもカオがほとんど一緒で、見分けがつかないくらいです。中空構造で、しかも反発性能が強い素材を使っているので、弾道が高く、芯もちょっと広くて、楽に飛ばせるアイアンになっています。
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アイアンは飛ばせばいいクラブではなく、狙ったエリアにちゃんとボールを止めるコントロール性が非常に重要です。
選手たちは、ボールを止めるために、45度くらいのランディングアングル(落下角度)を求めます。40度に近づくと、ランがたくさん出てコントロールしにくくなるからです。
ゆえに、青木選手の8番は、弾道が高い中空の「ZXi5」。そして7番より上の番手は、中空アイアンよりも落下角度をしっかり確保できるユーティリティを入れることで、150ヤード先のピンをしっかり狙っていけるわけです。
アマチュアの方がプレーするゴルフ場のグリーンは、ツアーほど硬かったり速かったりすることは少ないのですが、それでも40度くらいの落下角度は欲しいです。
なので、クラブを選ぶ際には試打データの中でも「落下角度」に注目するとよいでしょう。
アイアンのコンボもそうですし、どの番手からユーティリティにするかというのはアマチュアの方にも大事な問題です。青木選手のセッティングは、グリーンに球を止めにくくなったシニア世代の方には非常に参考になると思います。
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女子プロにタイトリスト「GT3」が浸透中
タイトリストではドライバーの「GT3」が人気を集めています。
海外でも、PGAツアーで投入するとほとんどの選手が一気に替えたというくらい、すぐに受け入れられたクラブです。
「GT2」と「GT3」があって、カオの大きさだったりスピン量だったり、これは好みになるのですが、菊地絵理香選手、イ・ミニョン選手、岡山絵里選手らが「GT3」に替えています。
「GT3」はタイトリストらしいカオで癖がなく、構えた感じもすごく落ち着いていて、奇をてらっていません。
私も打ってみましたが、ボール初速がしっかり出ている。しかも、初速が出る範囲が1点だと、打点がばらつくと飛んだり飛ばなかったりするのですが、高初速エリアが比較的広範囲になっています。
菊地選手はそれまで「TSi4」というヘッドがやや小さめのドライバーを使っていました。
彼女くらいのクラスの選手になると、入射角だったり、ボールが当たる位置もベストの1番いいところでほぼ毎回打っているので、飛びの数値はあまり変わらないと思うんですが、それでも
「ちょっとだけ芯を外して打点がズレた時に、曲がりの幅が少なく収まれば、曲がらなくなった分、縦の距離が伸びて遠くに飛びます」
と話していました。
ツアーではタイトリストのボールユーザーはとても多いですが、クラブも実は使っている選手が多いメーカー。PGAではドライバーもアイアンも、使っている選手が1番多いんです。
ボールメーカーでありながらクラブも本当に使用率が高いのに、これまで日本の女子ツアーではなかなか浸透していませんでした。
それで24年から、タイトリストはツアー担当者を何人も採用し、ツアーバスも出すようになりました。サポート体制を充実させて、本格的に女子ツアーで使用率を上げることを今、一生懸命頑張っています。
その結果、女子でも契約フリーの選手がどんどんタイトリストに替えています。
24年10月のマスターズGCレディスで優勝したイ・ミニョン選手は、1番活躍したクラブとして、その前週から使い始めた「GT3」を挙げました。
「方向性もよくなったし、10~15ヤードくらい飛距離も伸びて、ドライバーから自信をもらった」
と言っています。
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ミスに対する寛容性を求める声は、とくにドライバーに関しては多く、PGAツアーでも優しいクラブをみんな使っています。
女子ツアーの選手たちもインパクトがすごく安定しているのですが、それでも「GT3」に替えるということは、やっぱりそれだけの効果があるからだと言えます。
「女子がそれだけ使えるということになると、一般のユーザーにも使えるものになっているんじゃないか」。結果として、男性アスリート向けのイメージが強いタイトリストの敷居を低くすることにも繋がっています。
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中村修(なかむらおさむ)
1968年、千葉県出身。26歳でゴルフを始め、2005年に日本プロゴルフ協会(PGA)入会。PGAティーチングプロB級会員。現在、桑木志帆のコーチとしてツアーに帯同する傍ら、「みんなのゴルフダイジェスト」特派記者としても活動する。
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