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堀越良和の「クラブ選び、もう迷わせません」Vol.2
~アイアンはストロングロフトが正解?~

スウィング向上とともに、スコアアップに欠かせない「自分に合ったクラブ選び」。とはいえ、巷には新製品があふれていて、正解にたどり着くのが難しい。また、各メーカーが特長に挙げるクラブ用語についても、一般アマチュアは知っているようで実はあまり知らなかったりする。クラブに精通する堀越良和プロにわかりやすく解説してもらい、「自分に合ったクラブ選び」をマスターしよう。

撮影協力/クレアゴルフフィールド

ノーマルロフトと3番手も違う

私が使っているノーマルロフトの7番アイアンはロフト34度です。
今は7番で28度くらいのモデルは珍しくありませんし、いわゆる「飛び系アイアン」と呼ばれているモデルには7番で25度というものもあります。長い番手のロフトのピッチは3度刻みなので、私のアイアンでいうと4番相当、3番手は違うことになります。

そもそもストロングロフトのメリットは、同じ7番でクラブの長さが一緒だとして、しっかりミートしたとすれば、ロフトが立っているので絶対的にボール初速は上がります。

また、ヘッドもタングステンを使ったりして低重心・深重心にしているので絶対的に球が上がりやすい。ただ、ロフト34度に比べるとどうかという部分はもちろんありますが…

あとは「何番で打った?」と聞かれて「9番で」と答える。「ほかの人より飛ばせる」というゴルファー特有の見栄が満たされる部分も、けっこう大きいようですね。

正直、「それがあなたのスコアに何の影響があるのか」。レッスンプロとしての立場からすると、そう思います。とはいえ私も、試合に行って、残り190ヤードくらいのところにいる選手が手にしたクラブをちらっと見て「5番アイアン!?」と思ったこともあります。「こっちは4番アイアンなのに」と……。

ロフトが立ったストロングロフトは、飛距離願望とゴルファーの見栄を満たしてくれる要素もある

「落下角度」「スピン量」のデータに注目

データ計測器があるゴルフショップで試打する機会があったら、「落下角度」に注目してください。この数値で、そのクラブがアイアンとして機能しているかどうかがわかります。
7番であれば、落下角度が45度より鈍角、つまり45度を下回ってしまうとグリーンで止まってくれません。

次は「スピン量」です。ストロングロフトでロフトが立ってくればスピン量も減ります。

適正なスピン量は、「番手×1,000」というのが昔の基準でした。7番で7,000回転、8番なら8,000回転という具合です。でも今は、ボールが低スピン仕様になっていることもあって、「番手×1,000」をクリアするのは難しくなっています。

それでも、7番なら少なくとも「5,000回転以上」はほしいところです。なおかつ落下角度が45度以上あれば、7番アイアンとしての機能が使えて、その上の番手もある程度機能できると考えていいでしょう。

これが、ストロングロフトで28度の7番アイアンを打ったデータがバックスピン量4,000回転、落下角度40度だったとします。すると、その上の6番はロフト24〜25度ですから、6番アイアンとしては機能しません。

「アイアンとして機能する」とは、止まるということ。「ポンポン」じゃなくても、「トントントトン」くらいで、少なくとも5ヤード以内に止まってくれるイメージです。
それが、スーッと転がっていくようでは、ピンハイに落ちても奥のバンカーに入ってしまいます。

アイアンは本来、飛ばすものではなく止めるもの。ところが、最近のクラブはほとんどストロングロフトです。ロフトが立っている分、飛距離が出るのは大きなメリットですが、バックスピンが少なくなってしまいます。

7番であれば「落下角度45度」「スピン量5,000回転」以上になるモデルを選びたい

ストロングロフトはゴルフ寿命を伸ばす

ただし、最近のストロングロフトアイアンは進化していて、スピン量は少なめでも、落下角度を大きくして止める工夫が凝らされています。

また、少し前までの「大きい」「ボテッとしている」「フェースの素材が硬い」ヘッドとは一変しました。
普通のキャビティみたいな形状だったり、中空なのにマッスルバックみたいなフォルムだったり、どこにタングステンが入っているのかわからなかったりと、かつての違和感がかなり払拭されています。

シャフトも、スチールより長めのカーボンが入っていて、長くなる分、ボールが浮きやすくなって打ち出し角を稼げるようになっていたりします。

最近はストロングロフトモデルでも、グリーンで止まる打球が実現できるような工夫が凝らされ、デザイン的にも進化し、洗練されてきている
※写真はYAMAHA「インプレス ドライブスター TYPE/S」アイアン #7

TPI(タイトリスト・パフォーマンス研究所)が「ゴルフを辞めた理由」について全米でアンケートを取ったところ、1位は「飛ばなくなったから」。2位が「ケガをしたから」、3位は「ゴルフ友達がいなくなったから」でした。飛ばなくなることでゴルフ寿命が短くなるわけです。

その意味では、ストロングロフトはゴルフ寿命を伸ばしてくれる可能性を秘めていると感じます。上記のようなお悩みを抱えている方は、一度先入観なしに試してみてはいかがでしょうか。

堀越良和(ほりこしよしかず)

某ゴルフ雑誌社で四半世紀にわたり試打企画を行っており、「キング・オブ・試打」のニックネームを持つ。ゴルフスウィングと人体に関する研究に特化した世界有数の教育機関である「TPI(タイトリスト・パフォーマンス研究所)」の最高位「ゴルフレベル3」を取得。クラブメーカーの開発に携わった経験もある。(公社)日本プロゴルフ協会会員。クレアゴルフフィールド所属。

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