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プロコーチ&ゴルフ記者
“二刀流”中村修が見た女子ツアー最前線Vol.1 朝の練習場で行われていること

桑木志帆のコーチを務め、さらには「みんなのゴルフダイジェスト」特派記者も務める「二刀流」のプロゴルファー、中村修プロ。昨年オフから指導する桑木は、今年6月の資生堂レディスでツアー初優勝を挙げ、8月のニトリレディスで今季2勝目を飾った。プロコーチとして桑木に帯同することも多い中村に、女子ツアーで目にした最前線の話題を伝えてもらう。

スプリットハンドで手打ち防止

試合を観戦する機会があったら、プレーはもちろんですが、朝の練習場もぜひチェックしてください。選手たちが行っている練習には、みなさんにも参考になるものがたくさんあります。

岩井明愛選手は、両手を離して握るスプリットハンドでボールを打ち始めます。
実際にやってみるとわかりますが、スプリットハンドで握ると、手があまり使えない状態になります。無理に使おうとすると、左手が止まり、右手を返すような動きになってしまいます。

そういう悪い動きをしないためには、お腹と一緒に手元を動かしていかないといけません。
手打ちにならないように気をつけて、スタート前にこうした練習を行っているのです。

岩井選手が手にしているクラブはウェッジですが、流れとしては、まずバットを振ってウォーミングアップ。そして練習の初めでまず短いクラブを両手を離して持ち、5〜10球くらい打つ感じです。

要は、朝の体が動かない状態で打ち始めると、手を使いやすくなってしまうので、まず最初に体幹を意識する練習から始めるというわけです。
本人も「手打ちにならないようにやってます」と言っていました。それを、朝の練習初めにやるところがさすがだなと思います。

練習の初めにスプリットハンド打ちを行い、手打ちにならない意識付けをする

左素振りでウォーミングアップ

岩井選手がウォーミングアップとしてルーティーンに取り入れているバット素振りでは、右素振りだけではなく左素振りも行います。

ゴルフは右利きなら右打ちでずっと一方方向になるので、動きが偏りすぎてしまいます。そこで左打ちも行い、動きの偏りを防ぐのです。

ほかには吉田優利選手も、スティックを使った練習で思い切って左素振りしています。

みなさんも、クラブ2本を互い違いに持って、最初は右で素振りをして次に左素振りをすると、ウォーミングアップに非常にいいと思います。

スタート前にちょっと準備運動して、軽く手首や足首をほぐしたりはすると思いますが、まずは打つ前に右素振り&左素振りしたり、スプリットハンド素振りしたりすると、球を打つ準備が整います。

また、スプリットハンドで実際にウェッジでボールを打ってみると、手を使わずに打つ感覚が身につくと思います。

吉田優利もスティックを使った練習では右素振りだけでなく、左素振りも行っている

クロスハンドでシャフトクロスを直す

クロスハンドでクラブを握り、ボールを打っているのは菊地絵理香選手です。
ウェッジで打つ選手もいますが、菊地選手の場合はもうちょっと長いアイアンやユーティリティも取り入れています。

クロスハンドで握る理由は、トップでシャフトがターゲットラインよりも右を向き、シャフトが飛球線と交差する「シャフトクロス」がしにくくなるからです。

シャフトクロスすると、そのまま打てば大根切りのカット軌道になるし、シャフトクロスしたトップからインサイドから入れていくと、どうしてもクラブが寝てフェースが開いてしまいます。
エネルギーがしっかりボールに伝わらず、飛距離が出なかったりという弊害に繋がるのです。

クロスハンドグリップでテークバックすると、自然と右手が下、左手が上になるので、トップの位置が収まりやすくなります。
シャフトをクロスさせようとすると、右手を上にする必要がありますが、このグリップではそれができません。

女子に限らず、シャフトクロスしている選手は本当に少なく、ほとんどはシャフトがターゲットラインと平行か、それよりも左を向くレイドオフになっています。
クロスハンドはなかなか直りにくいクセですが、この練習は効果的です。
アマチュアの方がやるとしたら、ピッチングウェッジとか52度くらいを持ち、いきなりフルスウィングだと難しくまともに当たらないので、ハーフスウィングから始めましょう。
また、最初はティーアップしたボールを打つといいと思います。

スライスに悩んでいる方、トップで右わきが開いてしまう方、シャフトクロスでお悩みの方、カット軌道でお悩みの方は、ぜひクロスハンドで素振りだけでもいいから試してください。

シャフトクロスが悩みの人は、クロスハンドグリップでのスイング練習が効果的

高いティーアップで入射角と軌道を修正

河本結選手はフェードヒッターです。しかし、フェードボールを打ちすぎると、どうしてもカット軌道が強くなったり、入射角が強くなったりしてしまいます。

そうなると打点や弾道が揃わなかったりするので、適正な入射角と適正なカット軌道でフェードを打てるようにするための調整方法が、高めにティーアップしてアイアンを打つドリルです。

地面にあるボールを上から打とうとすると、どうしてもカット軌道が強くなりがちです。それを矯正して適正なクラブパス、入射角にするためには非常に有効な練習といえます。

これはフェードヒッターに多いドリルで、アイアンだけでなく5WやUTでも打ちます。
ほかには川岸史果選手も、5Wで打つ練習はよくやっています。

フェードもドローもどちらも打つ青木瀬令奈選手も、ウェッジでティーアップしたボールを打つ練習をしますが、打点が上になりすぎるとスピンがかからないことが起きやすいクラブなので、打点を揃える目的で取り入れています。

みなさんが試す際は、とくにウェッジだと、フェースの上部に当たったり、トップしたりして弾道を揃えにくいと思います。
なので、最初はハーフスウィングから始めて、スリークォーターで弾道が揃うようになれば、非常にスウィングの質は上がっていると思います。

また、最初はサンドウェッジだとロフトがありすぎて難しいので、ピッチングウェッジあたりがいいでしょう。この練習を行うとインサイドアウトから打ちやすくなります。
ドローヒッターの方だと、余計にインサイドアウト軌道が強くなってしまうことがあるので注意してください。

適正なクラブパス、入射角を身に着けるためにはティーアップしてアイアンを打ってみよう

中村修(なかむらおさむ)

1968年、千葉県出身。26歳でゴルフを始め、2005年に日本プロゴルフ協会(PGA)入会。PGAティーチングプロB級会員。現在、桑木志帆のコーチとしてツアーに帯同する傍ら、「みんなのゴルフダイジェスト」特派記者としても活動する。

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