世界を極めたパティシエが選びつづけるクルマ
私がLEXUSに乗る理由〜個性派オーナーが語る「LEXUSのあるライフスタイル」/LEXUS RX350h×冨田大介氏
創業50年を迎えた名古屋の老舗パティスリー「カルチェ・ラタン」。その2代目店主である冨田大介氏の“歴代”の愛車となっているのがLEXUS RX350hだ。選びつづける理由には“ともに日本発、世界のトップを目指して戦う者同士”という矜持があった。
Text:Shigekazu Ohno(lefthands)
Photo:Takao Ota
世界を制したパティシエが、自らに重ねて選んだクルマ
菓子づくりとは、想像以上に繊細な仕事である。温度、湿度、糖度、食感、香りなど・・・。ほんのわずかな違いが仕上がりを変え、ほんの一瞬の判断が味わいの輪郭を左右する。けれど、その精緻な世界の裏側には、強靭なからだと、折れない精神が必要とされる。
名古屋のパティスリー「カルチェ・ラタン」。創業50年の老舗を率いる2代目、冨田大介氏の朝は、白いコックコートではなく黒いトレーニングウェア姿で、自宅ガレージから始まる。スピーカーから大音量で音楽を流し、黙々とからだを追い込む。マシンや用具の充実ぶりは趣味の領域を超えており、そこはもはや住まいの一部というより、完全にトレーニングジムといった雰囲気である。
「僕がやっているのはボディメイクじゃないんです。クロスフィットトレーニングといいます」
ローイングマシンを漕ぎ、懸垂を繰り返し、ウェイトを挙げる。単一種目を続けるのではなく、心拍を上げたまま複数の種目を連続させる。ストレッチから始まり、きっかり1時間で終えるのが毎朝のルーティンだ。
「これが気持ちいいし、しっかり運動して熱を放出してから店に行かないと、エネルギーがあり余ってダメなんです」
まさに“手仕事”を生業とするパティシエにとっては、手首も指先も命である。傷めてしまっては仕事にならない。ゆえに、トレーニング前には丁寧に保護バンドを巻き、正しいフォームを守り、追い込みすぎないよう気をつける。冨田氏のトレーニングは肉体を誇示するためではなく、あくまで“元気に菓子をつくりつづけるため”のものだからだ。
こうした徹底ぶりは、仕事ぶりにも表れている。
想いとこだわりをかたちにした店
彼が率いる「カルチェ・ラタン」は、名古屋の人気店であると同時に、彼自身の美意識とこだわりが細部にまで行き渡った場所でもある。現在の建物は、父が築いた店を更地に戻し、冨田氏がゼロから建て直したものだ。
「もちろん、前の店も好きでしたし、思い出の場所でした。でもちょっと直すくらいでは、自分の理想のイメージには近づかなかったから」
かつてはテイクアウトとイートインの建物が分かれており、厨房もそれぞれにあったのだという。だが冨田氏が求めたのは、それらをひとつにまとめ、厨房の隅々まで目が行き届く店だった。焼く、仕上げる、運ぶ、見せる。その流れをひとつの空間で完結させたい。効率だけでなく、菓子づくりの精度と、店全体の体験価値を高めるための再設計だった。
美術系の大学でデザインを学んだ冨田氏は、建物の構想にも深く関わった。照明からタイル、壁の色、ギフトボックスの色調、デザインに至るまで、すべて自ら考え、選び抜いた。ピンクと紫のニュアンスを含む壁色も、既製の色ではなく、自ら調合して決めたオリジナルカラーだという。
しかもそれは、単に“おしゃれな店をつくりたい”という理由からではない。店の外観を見て心が動き、中に足を踏み入れてショーケースに圧倒され、悩みながらケーキを選んで持ち帰り、最後に食べて満足する。そんな一連の体験を、すべてひとつの幸せなストーリーとして設計したい―それが冨田氏の考え方であった。
「食べたときに“やっぱり美味しい”と思ってもらうことが、最後の最後で絶対的な説得力になるんです」
ショーケースに並ぶケーキは、およそ130種類。町のパティスリーとしては驚くほど多い。効率だけを考えれば、ここまで増やさない方がいいということは認識している。だが、ついつい新しいケーキをつくってしまうし、代わりにひとつ減らそうとすると“これが好き”というお客さまの顔が浮かび、やめられないのだという。そこにあるのは、お客さまを喜ばせたいというシンプルかつ過剰なまでのサービス精神なのだ。
しかも冨田氏は、見た目だけに流れない。コンクールで造形表現を極め、世界の頂点に立った男でありながら、店に置くケーキでは“飾りすぎること”を決して選ばない。
「見た目の派手さより、美味しそうであること。少しでも美味しくなるための工夫だけに全力投球したいんです」
キャラメルの焼き色、グラサージュの艶、クリームの陰影。それらは視覚的な美しさであると同時に、味覚を予感させる記号でもある。冨田氏は、ケーキを“作品”として誇示するのではなく、“食べたいもの”として成立させることを何より大切にする。
その感覚の原点には、父の存在がある
冨田氏は、初めから「家業を継げ」といわれて育ったわけではなかった。むしろ父は、「自分の人生を自由に生きればいい」と考える人だったという。だから冨田氏も、高校卒業後すぐ製菓学校へ進むのではなく、美大へ進み、プロダクトデザインを学んだ。クルマのタイヤを使った卒業制作は高く評価され、デザイン事務所から声がかかるほどだった。
だが彼は、その道を選ばなかった。思い描く未来の自分の姿に、幼い頃から見てきた父の背中が重なっていたからだ。
子どもの頃、父はいつも仕事に明け暮れていた。土日もなく、夏休みも冬休みもない。家族の行事らしい行事といえば、年に一度の1泊2日の旅行くらい。けれども、毎日毎日店に立ちつづけるその背中は、頼れる強い父親のイメージとして、心に深く刻まれていたのだという。
「父親がずっと立っていたところに、自分も立ってみたいと思ったんです」
ものづくりという意味では、デザインも菓子も同じ地続きだった。そして菓子の道には、そこに人生を懸けてきた父がいた。父がいた場所を、目指したものを自分も見てみたい。その想いが、すべての始まりだった。
東京に出て飛び込んだのは、日本を代表する有名シェフ、三國清三氏のレストラン。すぐそばの寮にくらした。だが期待とは裏腹に、最初の仕事はケーキの配達だった。朝の掃除に始まり、先輩たち25人分のコーヒーを淹れたら、急いで保冷車を運転して都内の百貨店を回る。厨房に入る機会すら、ほとんどなかった。専門学校も出ていない冨田氏は、フランス語の専門用語を使ったレシピすら読めず、同期や年下の先輩たちが当然のようにできることが何ひとつできなかった。
「何もできない自分に、初めて直面しました」
そこからの巻き返しは、いかにも冨田氏らしい。夜、仕事が終わったあとに残り、使い終えたウェディングケーキでクリームを塗る練習を繰り返す。用語集や理論書を読み込み、わからないことをひとつずつ潰していった。美大出身の異色の新人は、気づけば誰よりも執拗に、自分を鍛え上げる人間になっていた。
その後、師と仰いだパティシエの寺井則彦氏が独立すると、彼のもとでナンバー2として腕を磨き、町場のパティスリーの現場で、素材から丁寧につくる面白さを学ぶ。既製品を使えば早い部分も、時間をかけてでも自分たちでやる方が美味しくなるなら、その手間は惜しまなかった。
「やった分だけ美味しくなるし、サボった分だけ美味しくなくなる」
単純だが、厳しい真理に触れた修行時代であった。
その妥協のなさは、コンクールでも発揮された。国内大会を勝ち抜き、フランスのコンクールで優勝し、やがてクープ・デュ・モンド・ドゥ・ラ・パティスリーという世界を代表するパティスリーコンクールにも日本代表として出場。2013年には準優勝の成績を残すほか、ピエスショコラ部門では最優秀賞に輝く。さらに2023年には日本代表監督としてチームを率い、2025年にはついに世界一の称号を獲得。コンクールへと導いてくれた寺井師匠の首に金メダルをかけるという夢がかなった、栄光の瞬間だった。
自信の象徴となったLEXUSとの出合い
そうした極限の経験と、日々の店づくり。その両方を支える存在が、愛車であるLEXUS RX350hである。
「初めて見た瞬間に“これに乗りたい”と思ったんです」
名古屋に戻り、クルマが必要になったとき、輸入車も選択肢にはあった。だが、故障のリスクや修理の負担を考えると、忙しい仕事を抱える身には現実的ではないと思われた。そこで思い浮かんだのが、もっとも信頼できる日本発の国際的ラグジュアリーブランド、LEXUSだった。
販売店に行き、展示車を見て、ひと目で心を奪われたのがRX。重厚感と存在感があるのに、落ち着いていて品がある。大きすぎず、小さすぎず、自分のからだにも仕事にも、ぴったりと思えるサイズ感だった。
3年ごとに乗り換えて、今は3代目の納車を待っているタイミング。外装は一貫してブラック。内装だけは毎回変えていて、最初がキャメル、2代目がブラック、次にくるのはレッドになるという。ブラックのレザーとアルカンターラの組み合わせは「チョコレートのよう」と微笑む。世界大会でチョコレート部門に挑んだ自身の来歴と、どこか響き合う感覚があるのだろう。
RXは、冨田氏にとって単なる移動の道具ではない。それは、思考を深めるための個室であり、仕事に向かう前に自分を整える場所でもある。
クープ・デュ・モンド・ドゥ・ラ・パティスリーという権威あるパティスリーの世界大会における日本代表監督を務めた時代、京都や三重での合宿へ向かう道中、まだ新幹線も動いていない早朝4時に名古屋を出発し、車内で和太鼓を流しながら、作品のテーマである“日本らしさ”を考えつづけた。チームが噛み合わないときも、ひとりになれるこの空間で思案を巡らせた。
「ひとりがあまり好きじゃないんですが、車内ではひとり、集中して考えられました」
静粛性に優れた車内で、和太鼓だけが響く。冨田氏にとっては、日常においてもっとも深く自分と向き合える時間だった。
さらに、彼にとってLEXUSは、達成の証であり実感でもあった。かつては配達用の保冷車を運転し、相部屋の寮でくらしていた青年が、今ではLEXUSに乗る。それは見栄ではなく、積み重ねてきた努力の歳月の証明だ。
「LEXUSに乗れるようになったんだな、って。やっぱり嬉しいですよ」
その自信は、若いスタッフにも伝わる。ひとつのことをひたむきに積み重ねれば、きっと景色は変わる。そんな無言のメッセージを、彼自身の背中が語っている。
継承するもの、自ら切り拓くもの
カルチェ・ラタンのメモリアルルームには、昔の店の看板が飾られている。今は使っていない旧ロゴの看板を自ら外して洗い、金色に塗り直したものだ。かつての入口ドアも、そのまま残されている。傷だらけの扉、前の店のイートインで使っていたテーブルと椅子。父と母が築いた時間の断片が、そこには静かに息づいている。
父の店を壊し、全面的につくり直した。けれど、店名だけは残した。カルチェ・ラタン―フランスの学生街、ラテン地区にちなむ名。父はフランスに行ったこともなかったが、その名前には、活気ある店にしたいという強い思いが込められていた。
冨田氏は、その思いを受け継ぎながら、今の時代にふさわしいかたちへと更新した。父が始めた店を、自分の色でつくり直しながらも、そこに流れる熱は絶やさない。受け継ぐとは、残すことではなく、進化させることなのだと、この店は教えてくれる。
「名古屋に戻ってきて、最初は心配そうに見ていた父親が、いつしか僕が自分のスタイルでやることを認めてくれたのが嬉しかったですね。今も午前中は店に来てくれて、父子一緒に厨房に立つんです。交わす言葉は少なくても、これまで頑張ってきてよかったなと思える瞬間ですね」
菓子をつくること。からだを鍛えること。クルマを選ぶこと。空間を設計すること。どれも、別々の行為ではない。見えないところに、どれだけこだわれるか。その積み重ねだけが、最終的な“美味しい”や“上質”を生み出す。
冨田大介という人物は、その事実を、言葉より雄弁に存在感で体現している。ショーケースに並ぶケーキの一つひとつと同じように。そして、静かに街を走る黒いLEXUS RX350hと同じように。
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