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LC500 Convertible
V8エンジンを搭載した「LEXUS LC500 Convertible」の優雅さと官能性能は、オープントップだからこそより強まる

2012年の北米国際自動車ショーで大きな耳目を集めたコンセプトカー、LF-LCのフォルムをまるでそのまままとったかのような「LEXUS LC」は2017年3月に発売された。それから7年経過した今もそのスタイリングの鮮烈さ、そして優雅さは霞むことなく、LEXUSのフラッグシップクーペとして視線を惹きつけている。その魅力はデザイン性だけでなく、パワートレーンや熟成された走り味、最新の運転支援システムなどさまざまある。今回モータージャーナリストの渡辺敏史氏が、オープントップの「LC500 Convertible」をとおして、凝縮されたLEXUSらしさを味わった。

Text:Toshifumi Watanabe
Photo:Masami Sato / Hidekazu Nagamoto

ゆとりがあるからこそ深みを増す、LCのラグジュアリーさ

ドライバーをもっとも華やかに彩るLEXUSのフラッグシップクーペとして生まれたLCは、誕生から8年目を迎えようとしている。その間、2ドアのスポーツカーを取り巻く環境は大きく変わり、ライバル車が市場から退く場面を目にすることもあった。

そんななか、LCは途絶えることなくコツコツと進化を続けている。2020年にはコンバーチブル追加という大きなイベントもあったが、主たるところは車体や足まわりなどの動的質感にまつわるバージョンアップだ。その他、装備の見直しや特別仕様車の追加など、毎年なにかしらのトピックを提供している。

ソフトトップの開閉させる時間は約15秒で、50km/h以下であれば走行中に作動させることもできる。

LCが成熟の道を躊躇なく歩めるのは、ブランドとしてもコーポレートとしても、販売の少なからぬところを占めるHEV(ハイブリッド車)のおかげでCO2排出量の削減率が高いという側面もあるだろう。LC500hはスポーティネスに配慮されたマルチステージハイブリッドシステムを搭載して、グレード名が示すとおり5Lエンジン搭載車に準ずるパフォーマンスと、WLTCモードで14.4km/Lという燃費を両立している。

その上で、2ドアのラグジュアリーカーならではの世界観を大事にしたいという作り手の想いも、大きな要素となっているはずだ。運動性能を極めるのなら、よりコンパクトなパッケージを考えられるだろう。使用頻度が低いであろうリヤシートを採用しなければ、そうすることも難しくない。が、そうまでして速さを求めるより、もっと大切にしているのはその優美さが移動の時間を豊かに彩ってくれるということだ。

伸びやかな体躯もゆとりあるパワーも、余剰はすべからく実益というよりはニュアンスのためにある。振り返れば、トヨタはクラウン2ドアハードトップやソアラなど、半世紀以上に亘ってラグジュアリークーペの歴史を紡ぎつづけてきたわけだが、LCはLEXUSのフラッグシップクーペの頂点にして、その系譜の延長線上にあるともいえるだろう。

外観は大きく変わらずとも、機能や性能は最新のものに刷新

LCのパワートレーンラインアップは3.5L V6ハイブリッドの「LC500h」に加えて、5L V8の「LC500」が用意されている。ボディタイプはクーペとコンバーチブルとふたつあるが、後者はV8エンジン搭載のLC500のみ、まさにそれが今回の撮影車両だ。

前述のとおり、2020年に追加されたモデルながら、2023年にはフロアトンネルブレースの追加によるボディ補強やそれにともなうサスペンションセッティングの変更、ハブボルトによるホイール締結化やラジアルタイヤを標準装備(オプションでランフラットタイヤを設定)にするなど、走りの質感を高めるべくこと細かな改良を受けている。

複雑なラインで構成されるヘッドライトまわりには、「L」の字をかたどった無数の模様が配されている。

中身は毎年のように改良が加えられる一方で、内外装の意匠は登場時から同じまま現在に至っている。特にモデルとしてのイメージをリフレッシュしやすい灯火類を含めて、外装はほぼ手つかずだ。それでも、贔屓目に見ずとも古びた感はまったくない。そもそも、反響を呼んだコンセプトカーのデザインをいかに忠実に反映するかがテーマだったという出自も頷ける、2ドアクーペとして普遍的でトラディショナルなロングノーズの骨格と、張りのある肉感とが織りなすたたずまいが、風化せず鮮度を保ちつづけていることを実感させられる。

それは内装もまた然りだ。ダッシュボードからドアまわりにかけてつながる立体的な造形に、吟味されたトリム素材を採用したキャビンの質感は、最新のライバルと伍するところにある。

インフォテインメントも最新世代にしっかりアップデートされており、装備面で不満を抱くこともないだろう。同様にLCの場合、「Lexus Safety System+」をはじめとする先進運転支援システムも周辺技術の進化を採り入れながら適時アップデートされている。もちろん過信は禁物だが、街乗りでもロングドライブでも、安全レベルを底上げして運転による疲労を軽減してくれることは間違いない。

運転席と助手席とで左右非対称のデザインとするドアトリムや、センターコンソールの仕切りから曲線美を感じられる。

オープントップだからこそ、より強く味わえるLCの官能性能

LCコンバーチブルがV8ユニットのLC500のみとなる理由は、ハイブリッド用バッテリーを積むスペースをソフトトップの開閉や格納にまつわるメカニズムの搭載に充てたためだ。そうであるならば頻用しない後席スペースを使えばHEV化も可能だろうが、あえて2+2シーターとすることで、純然たるスポーツカーとは一線を画する粋をみせている。

一方で搭載されるV8は、今やLCを除けば、ごく一部のエクストリームなモデルでしかお目にかかれない大排気量かつ自然吸気のエンジンだ。低回転域では清らかに振る舞いつつ、高回転域に向かうにつれて音色を高めながら二次曲線的にパワーを高めて、7,000r.p.m.オーバーのレブリミットまで突き抜けるようにスキッと回り切る。

排気量やシリンダー数を削りながらも、過給器を用いて従来を上回るパワーを引き出すというのは多くのスポーツモデルが採る今日的なエンジンの作り方だが、LCは自然吸気ならではの気持ちよさにこだわりつづけている。いってみれば、スポーツモデルとして「究極の効率」と「究極の官能」が双璧のように存在しているのがLCということになるだろう。

このボディカラーは、独特の発色とグラデーションを見せるヒートブルーコントラストレイヤリング(メーカーオプション)。

その“官能”の側を、クーペよりも近い距離感で満喫できるのがコンバーチブルの美点だ。遮音層を織り込んだ4レイヤーの幌屋根をクローズにすれば、クーペに限りなく近い静粛性や耐候性を確保しつつ、オープン時には珠玉のV8ユニットが奏でる快音を存分に堪能できる。砂かぶりというかアリーナというか、余計にお金を払ってでも味わいたいライブ感を求めるのであれば、コンバーチブルはうってつけの選択肢だろう。

ファストバックの流麗なスタイリングを日々慈しむべくクーペを選ぶ意味ももちろんある。さすがにクルマを走らせる体感値は開けっぴろげなコンバーチブルには及ばないかもしれないが、V8にせよHEVにせよ、LCでしか味わえない非日常体験は保証されている。

インテリアカラーとの組み合わせにより、ルーフカラーは写真のマリーンブルーを含めて4色が用意されている。

いずれにしても重要なことはシャシーの進化だ。たび重なる年次改良もあって、LCの走りはデビュー当初に比べると相当洗練されたものになっている。「すっきりと奥深く」というのはLEXUSらしいライドフィールの目標としてエンジニアが共有するスローガンだが、乗って伝わる清涼感や精度感はまさにそれを体現しているといえるだろう。

世がどうであれ時がなんであれ、クルマというものは楽しく美しくあるべきだ。そういう意志をもったカスタマーに、LCのようなクルマは支えられつづけている。人生を豊かに彩るためのクルマを供することをミッションとするLEXUSにとって、それは誇るべきことだろう。

筆者プロフィール

渡辺敏史
Toshifumi Watanabe
二輪・四輪誌の編集を経て、フリーランスの自動車ジャーナリストに。以来、自動車専門誌にとどまらず、独自の視点で多くのメディアで活躍。緻密な分析とわかりやすい解説には定評がある。

LEXUS LC500 Convertible 主要諸元

・全長×全幅×全高:4,770×1,920×1,350mm
・ホイールベース:2,870mm
・車両重量:2,050kg
・エンジン:2UR-GSE・V8 DOHC
・総排気量:4,968cc
・最高出力:351kW(477ps)/7,100r.p.m.
・最大トルク:540N・m/4,800r.p.m.
・トランスミッション:10速AT
・駆動方式:FR
・燃料・タンク容量:プレミアム・82L
・WLTCモード燃費:8.0km/L
・タイヤサイズ:前245/40R21、後275/35R21
・車両価格(税込み):1,550万円

LEXUS LC500の詳しい情報は、https://lexus.jp/models/lc/をご覧ください。

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