ソウルフードの神髄
地域の特色を感じる郷土料理
その地でしか味わえない、旅情をかきたてる郷土料理。地域の暮らしの中で作り食べ、長年にわたって伝承されてきた料理からは、各地の文化や歴史が見えてきます。今回は、全国各地の郷土料理の中から6品をご紹介します。
Text:Tsutomu Yoshida Illustration:Yasunori Koga Photo:Pixta
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伊達政宗も食べたサケの親子丼
はらこめし/宮城県・阿武隈川宮城県亘理地方が発祥。地元の漁師が仙台藩主・伊達政宗に献上したことから広まったとされています。「はらこ」は東北地方の方言でイクラ(サケの卵)のこと。醤油、酒、みりんで煮たサケの身と、ほぐしたはらこをたっぷりとご飯にのせて完成です。ちなみにご飯は、サケの煮汁を足して炊く、炊きあがりに煮汁を混ぜるなど、調理法が多様です。
亘理地方は、宮城県南東部の太平洋沿岸、阿武隈川河口部右岸に位置します。海と川の幸に恵まれた土地で、秋にはこの阿武隈川にサケが戻ってきます。中心部はかつて城下町で、陸前浜街道の宿場町も兼ねていました。
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漁師飯をルーツに持つ下町の味
深川丼/東京都・深川深川の漁師たちが食べるまかない飯をルーツに、東京下町の家庭にも広く普及した庶民料理。家庭やお店によって調理方法が異なり、アサリやハマグリを味噌で煮てご飯にかける、または醤油で下煮して煮汁でご飯を炊くなど、いくつかのバリエーションがあります。ちなみにアサリを用いるようになったのは明治以降で、江戸時代はバカガイが使われていました。
深川は、東京都江東区西部を指す旧区名。隅田川左岸の低湿地を占めるエリアです。江戸時代初期に富岡八幡宮や深川不動尊などの門前町を中心に発展しました。当時の深川は海に面しており、アサリが大量に獲れる場所として有名でした。
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あっさり食べられる夏の風物詩
あゆぞうすい/岐阜県・長良川長良川沿いを中心に伝わる夏の味覚。昔は傷の付いたアユを食べる方法のひとつでした。焼いたアユの身をほぐし、ご飯とともに出汁で煮立て、醤油もしくは塩で調味します。薬味にネギを散らし、仕上げに溶き卵を加える場合もあります。あっさりとした味わいなので、真夏の食欲が落ちる時期にもぴったりです。
北部に飛騨山脈を抱え、南部に木曽三川が流れる自然に恵まれた岐阜県。かつての美濃と飛騨の二国を占めます。中央部を南流する長良川では、鵜にアユを獲らせる鵜飼が奈良時代から続いています。
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極太やわらかうどんをたまり醤油で
伊勢うどん/三重県・伊勢名前のとおり、伊勢地方で伝承されてきた郷土料理。時間をかけやわらかく茹でた極太のうどんに、たまり醤油にカツオ節などの出汁を合わせた濃厚なタレをかけて食します。江戸時代、伊勢神宮の参拝客が食べたことで流行しました。今も昔も具は入っておらず、当時はそのシンプルさから素うどんと呼ばれていました。
三重県中東部に位置し、伊勢湾に面する伊勢市。伊勢神宮の所在地としてつとに知られ、江戸時代には商業が栄え、門前町として賑わいました。今日も、お伊勢参りをする参拝客が全国から訪れます。
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庶民の知恵から生まれた豪華な寿司
ばらずし/岡山県・瀬戸内海江戸時代初期、岡山藩主の池田光政が「食前は一汁一菜」との倹約令を発したことに庶民が抗い、ご飯にたくさんの具をのせて一菜とした郷土料理。エビやアナゴをはじめとする瀬戸内海の魚介類、キヌサヤやレンコンといった旬の野菜、甘辛く煮付けたシイタケなどの具材をふんだんに使った、彩りの美しいごちそう寿司です。
中国地方東部の県。一年を通して温暖で、日本で一番晴れの日が多いことで有名。その気候ゆえ、白桃やマスカットといった果物の品質が高く評価されています。また、南部が瀬戸内海に面しており、海の幸にも恵まれています。
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新鮮で美味しい玄界灘の恵み
呼子イカの活き造り/佐賀県・玄界灘呼子イカは佐賀県の地域ブランド。玄界灘に面する唐津市呼子町で水揚げされたイカを指します。刺身にする際は、食べる直前にいけすから取り出し、生きたまま包丁を入れていきます。活き造りなので鮮度がよく身が透き通っており、呼子イカならではの甘みとコリコリとした食感が楽しめます。
唐津市呼子町は東松浦半島の北端に位置する地域。良港として知られており、古くは捕鯨基地として栄えました。新鮮な魚介類などが手に入る「呼子朝市」は、岐阜県の高山、石川の輪島と並ぶ日本三大朝市の一つです。
地域の伝統が息づく郷土料理は、どれも魅力的なものばかり。気になる一品が見つかった方は、ぜひ一度ドライブがてら現地へと赴いて、その地域の美味を味わってください。
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