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京都の注目レストラン
京都の水が生み出す、新しいフランス料理。「都季」@HOTEL THE MITSUI KYOTO

2020年にオープンして、わずか半年後にForbes 5 スターに輝いた「HOTEL THE MITSUI  KYOTO」。二条城の隣という場所に誕生した、三井最高級フラッグシップの第一号となる格式あるホテルです。そのホテルのメインダイニング「都季」が2022年10月にリニューアルオープン。フランス・パリの二つ星レストランでスーシェフを務めた浅野哲也氏が、京都のまろやかな水を活かして作る繊細なフランス料理が話題です。最後まで読んでくださった会員の方にお食事券プレゼントもありますのでお見逃しなく。

Text:Misa Yamaji(B.EAT)

京都ならではのフランス料理、それは京都の水から生まれる

平安の都の時代から、水に恵まれ、水とともに文化を育んできた京都。

山々から流れ込む豊かな水は、京都の地中に流れ込み、地下には琵琶湖の8割に匹敵するほどの水が蓄えられているといいます。そうした特異な地形から、井戸を掘れば良質な地下水を得ることができ、昔から人々は地下水を生活に取り込んできました。

例えば錦市場は、豊かな地下水があったからこそ栄えました。かつて多くの商店には、冷たい地下水を汲み上げる井戸があり、魚などを保存するために利用されていたのです。また、京都の良質な水は茶の湯文化を発展させ、西陣織では、糸の染色に地下水を使用していました。もちろん食文化にも京都の良質な軟水から誕生したものが多くあります。豆腐や、湯葉や生麩などは、良質で柔らかな水無しには作れないものでしょう。

伏流水が特に豊富だった伏見は、鉄分が少ないきれいな水を活かした酒造業が興隆しました。今でも伏見では“伏水“を代表とする豊かな地下水で酒造りが営まれています。

中庭の水盤に面した「都季」

そんな京都の文化を育んできた水に注目したのが「都季」のシェフ、浅野哲也さんです。

京都の真ん中で賓客を迎えるフランス料理として、ふさわしいものはどんな料理なのか。レストランリニューアルにあたり、その問いについて考え抜いたといいます。その結果、たどり着いたキーワードが“京都の水”でした。

「フランスは硬水ですから、フランス料理は硬水をベースにした食文化が育まれてきました。レシピも硬水で作ることが前提。なにげなく使っていますが、水というのは調理する上で味わいを決める重要なベース。京都で出汁を活かした京料理が発展したのも、出汁がよく出る柔らかな軟水があったからこそだと思うのです。ですから、まず京都の食文化を作ってきた水からフランス料理を考えたい。そう思いました」と、今回の料理にたどり着いた経緯を振り返ります。

シェフの浅野哲也さん。

浅野さんは、パリの由緒正しきパラスホテル「オテル・リッツ・パリ」のメインダイニング「エスパドン」でスーシェフを務めた人物です。1898年創業以来、世界中の賓客を迎えるリッツが誇るレストランの厨房で、フランス料理の格式と伝統を厳格に受け継いだ“フランス料理の真髄”を骨身に叩き込んできました。

しかし、フランスから帰国後、京都で料理を始めたときにぶち当たった壁が、そんな“厳格な“フランス料理らしさと、京都という場所でつくる料理の微妙なギャップでした。フランスでやっていたテクニックやレシピをそのままこの場所でやってもしっくりこない。そう思ってたどり着いた答えが”水の違い“だったのです。

その日使う野菜の端材などをカウンターの鉄板の上でじっくり煮込み、さまざまな料理に利用している。

「店では、伏見の酒造りにも使用している“伏水”をすべての料理に使っています。伏水は超軟水。甘みがあり、硬水に比べると食材の旨みや香りが驚くほど良く出ます。そうした水の性質を活かして、京都ならではの四季の食材が持つ、本来の香りや甘み、旨みを抽出し、ソースや味のベースにしていくのが『都季』の料理です」

例えば、スペシャリテのサーモンの一皿。西京味噌でマリネしたサーモンを燻製し、その上には発酵野菜のエキスと黄身酢、イクラにマリネしたカブが乗せられています。清らかな水をそのままソースにしたかのようなジュレは、昆布と鰹でとった出汁がベース。サーモンの骨や皮で作ったチュイルが料理に華やぎと、味わいのアクセントを加えています。

話を聞けば、和食?と思うような構成ですが、ひと口食べてみれば、この一皿が紛れもなく爽やかでモダンなフランス料理の味わいだと感じるでしょう。出汁や西京味噌などを使っていても、その風味や味わいを突出させず、野菜の発酵エキスがもたらす酸味などで全体をまとめ、軽やかながら深みのある“サーモン”の料理になっているのです。そのバランス感覚、センスの良さこそが浅野シェフの真骨頂と言えるかもしれません。

アミューズに続いて最初に登場する料理「鮭 西京味噌 いくら」

京都の水が育んだ京都の食材の魅力を存分に引き出して

“水“と同様に、「都季」の料理に欠かせないものが、京都ならではの食材の数々です。京都の水を活かした料理を考えたときに、京都の水が育む食材をもっと知りたい、もっと使いたいと思ったと話す浅野さん。さまざまな京都の生産者を訪れ、出会った食材からインスピレーションが湧いて、料理が生まれることも多いといいます。

「フォアグラ」もその一つ。これは知り合いから紹介された向井酒造の酒粕に出会って閃いたものです。

「伊根にある向井酒造の『伊根満開』という古代米を醸した赤い日本酒があるのですが、その酒粕が普通の日本酒の酒粕とまるで違って衝撃を受けました。紫色の酒粕は、果物のような酸味とフルーティさ、味噌のような旨みとコクがあったんです」と、語る浅野さん。ひと口食べた時に、その風味が“カカオに似ている”と記憶の中でシナプスがつながり、そこで、『エスパドン』につたわる伝統的なレシピのなかにもある“フォアグラとカカオ”という組み合わせを再現してみたらどうだろう、と料理をしたら見事にハマったと教えてくれました。

コースの中の一皿、「向井酒造の酒粕 フォアグラ」。

実は、この「伊根満開」という日本酒自体も、非常にユニークなルーツを持ちます。古代米から作られた日本酒は、「向井酒造」杜氏の向井久仁子さんが大学の恩師から“これからは他にはない、話題性のある日本酒を作る時代だ”と助言され、それに応えようと試行錯誤して生まれたもの。そんな一人の杜氏の努力の結晶が唯一無二の酒となったという経緯も料理を通して知ることができ、京都の食材の幅広さ、奥深さを改めて感じるでしょう。

ちなみに、こちらでは「伊根満開」の酒粕の色から作るソースがまるで味噌のように見えたことから、田楽に見立ててひと口サイズで登場。ペアリングで合わせるのは、日本酒『伊根満開』。フォアグラのなめらかなコクにフルーティでほんのりと酸味が聞いた酒粕のソースが調和します。そこに甘みと紹興酒のような香ばしさを感じる「伊根満開」を合わせれば、まさにフォアグラのテリーヌとヴァンジョーヌを合わせたかのような相性の良さを感じるはずです。

フランス料理の技術と京都の食文化を融合した新しい世界

この日のメインディッシュ「七谷鴨 カシス 玉ねぎ」

メインで登場する「七谷鴨」は、生産者の鴨の育て方を聞いて閃いた一皿です。

七谷鴨は、多くのトップシェフたちもこぞって使う京都を代表するブランド鴨。抗生物質などは一切使わず、平飼いのストレスフリーな環境で育てられている合鴨です。なんと最後に仕上げる前には、飼料にカシスを加えるのだとか。フランスの鴨とはまた違う、クリアでさっぱりとした鴨肉の魅力をどう引き出すかと考えたときに、浅野さんの頭に浮かんだキーの食材が、この鴨の飼料に使われているというカシスでした。

カシスなら、この清らかな鴨肉の味わいによく合うに違いない、そう確信し、鴨の胸肉のローストにカシスパウダーをトッピング。そこに、エスコフィエ時代から伝わるフランス料理の伝統的なロベールソースにカシスを加えて軽やかに仕上げ、一皿をまとめあげたのです。

ソースはクラシックなものがベースながら、旨味と香りはしっかりしているのにしつこくないモダンな味わい。このソースがカシスのさわやかな酸味と相まって、すっきりと脂身の少ない鴨の魅力をグッと引き立てています。

特等席は美しい中庭をのぞむカウンター。目の前で浅野さんが調理してくれる臨場感もある。

ほかにも、京都の大国しめじを水からじっくり36時間煮込んで抽出したエキスをそのままソースにした「大国しめじ れんこんもち」など、創意工夫あふれる品々がコースに登場。

京都の水と、その水が育む京都の食材と丁寧に向き合い、確かなフランス料理のテクニックを使って、持ち前のバランス感覚で作り上げる浅野さんの料理は、まさにここでしか出会えない“京都フレンチ”です。

フランスの伝統と京都の食文化を融合させたその新しい世界は、伝統と革新にチャレンジし続ける「HOTEL THE MITSUI KYOTO」の哲学にも通じるところ。

ぜひ、宿泊してディナーを楽しみ、新しい京都の魅力にふれてみてください。

【DATA】
「都季」

住所:京都府京都市中京区二条油小路町284 HOTEL THE MITSUI KYOTO内
電話番号: 075-468-3166
コース料金:18,500円~(税サ込み)
https://www.hotelthemitsui.com/ja/kyoto/restaurants-bar/toki/


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