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スペシャル号

王族が愛した逸品
【読者プレゼント付き】誕生から185年。多くのセレブリティを魅了したバカラのアイコン「アルクール」の伝説に迫る

フランスを代表するクリスタルのメゾン「バカラ」。その歴史のなかでもっとも古くから制作されている「アルクール」はメゾンの象徴でもあり、今もなお、世界中で愛されつづけるベストセラーである。端正な輝きを放つフラットカット、六角形の台座、ステムのボタン装飾という重厚なクリスタルのフォルムは、完璧さへの絶え間ない探求と、クリスタルの比類ない輝きを際立たせたいという意志を体現したものだ。なぜひとつのグラスが王侯貴族から現代のセレブリティに至るまで選ばれつづけてきたのか。その秘密を紐解いた。

Text&Edit:Misa Yamaji(B.EAT)

1764年、ロレーヌの村に生まれた伝説のガラス工場

バカラという名は、フランス東部ロレーヌ地方にあるひとつの村の名前でもある。1764年、この地にメゾンが誕生した。以来260年余り、その所在地は変わっていない。

バカラ村のマニュファクチュール。

1816年、バカラは比類なき純度を誇るクリスタルを生み出す秘伝の製法を確立する。手のひらの感覚、少しの違いも見逃さない研ぎ澄まされた目数値化できない感覚を元に、職人たちは素材と向き合ってきた。
1823年のフランス産業博覧会では、その透明度の高さが評価され金賞を受賞。フランスで初めてクリスタル製のシャンデリアパーツを世に送り出したのもバカラである。1830年代には色彩の研究が進み、1843年には透明なクリスタルに24カラットの金を配合し、540℃という精緻な温度管理のもとで焼き上げる深紅「バカラレッド」が誕生した。

今も熟練の職人の手でひとつずつ作っている。

ひとつの侯爵家の名を冠したバカラの代表作

バカラが手がけてきた無数のプロダクトのなかで、今なお作られつづける最古のテーブルウェアが「アルクール」である。

1840年、フランス国王ルイ・フィリップは、フラットカットが施され、赤いクリスタルのボタン装飾があしらわれたフォーマルな祝祭用聖杯の制作をバカラへ依頼した。この比類ない優れた作品は1841年に発表された「アルクール」のインスピレーションとなった。

「アルクール」のデカンタ(中央)。食卓をぐっと重厚感のあるものにしてくれる。

発表当初このシリーズは大小さまざまなグラス、デカンタ、水差し、コンポートなど約30種近いアイテムからなっていた。ひとつの家に一揃いのテーブルサービスを備えることが当たり前だった時代、アルクールは一般の食卓にまで浸透していく。20世紀に入るとシャンパンクープやライン産ワイングラス、マグやタンブラーが加わり、食卓の作法の変化とともに、キャビア専用の器やサラダボウル、ワインクーラーまでも生み出された。

中央のステムの赤がポイントの「アルクール ワイングラス レッドボタン」(写真中央:99,000円/税込み)、「アルクールグラス型キャンドル」(写真中央右:赤・白 いずれも23,100円/税込み)、「アルクール キャンドルホルダー型キャンドル」(写真右:19,800円/税込み)

王侯たちが選んだ食卓の一脚

先代ルイ・フィリップが正餐で愛用したグラスを彷彿とさせる気品ある佇まいは、フランス皇帝ナポレオン3世と皇后ウジェニーをも魅了した。1850年代末、ナポレオン3世は「アルクール」のグラスセットを特別に注文。そのアンサンブルには、ホイールエングレーヴィングによって皇帝を象徴するモチーフが精緻に刻まれている。その後、在外フランス大使館やアメリカやイギリスをはじめとする各国の公邸の食卓を飾る定番となっていく。

以後、世界各国の王侯・元首からの特別注文が相次いだ。ローマ教皇ベネディクトゥス15世、後にヨハネ・パウロ2世。ブラジル、レバノン、メキシコの各大統領府。アラブ首長国連邦、カンボジア国王、モロッコ国王―それぞれが自らの紋章やモノグラムをグラスに刻ませた。

「アルクール ワイングラス」(38,500円~/税込み)。「アルクール デカンタ」(253,000円〜/税込み)

1971年には、ペルシャ帝国2500年祭を祝うペルセポリスの祝宴の食卓にも、その姿があったと伝えられる。ベル・エポック期、社交界随一の伊達男として知られたボニ・ド・カステラーヌは、その簡潔なたたずまいこそが食卓に気品をもたらすのだと評した。華美を誇示するのではなく、削ぎ落とされた造形そのものが格式を語る。アルクールが体現してきたのは、まさにそうした美意識だった。

聖餐杯のフォルムが宿す、静謐な重さ

アルクールのデザインを特徴づけるのは、六角形の台座、六面のフラットカット、そしてステムに施された三つのボタン装飾である。その姿はどこか聖餐杯を思わせる。装飾的な要素は少ないが、クリスタルそのものの重量感と、光を跳ね返すカットの精度によって、ほかのどのグラスとも違う存在感を放つ。

アルクールのカットは、200年近い年月が経っても色褪せない美しさが宿っている。

手に取るとまず伝わってくるのは、見た目以上のずっしりとした重みだ。軽やかさを追求する多くのグラスウェアのなかで、アルクールはあえて重厚さを美点とした。

フラットカットの角度が生む反射は、光源の位置によって表情を変えつづけ、同じグラスでありながら、朝の食卓と夜のキャンドルライトの下ではまったく違う輝き方をする。テーブルの上で静かに、けれど確実に存在を放つたたずまいこそが、200年近く模倣されながらも、決して超えられることのない理由なのだろう。

今も売れつづける、永遠の輝き

バカラの主幹デザイナー、トーマ・バスティードによるアルクールシリーズの花瓶「アルクール ストレートベース」(385,000円/税込み)。

「アルクール」は、長い歴史の中でフィリップ・スタルク氏、マルセル・ワンダース氏、ハイメ・アジョン氏といった世界的なアーティストたちの創造性を刺激しつづけている。
彼らの再解釈を重ねながら、伝統を未来へとつなぐアイコンとして進化を続けているのだ。

このように、「アルクール」は時を超えて愛され続けている。ひとつの型が185年間、途切れることなく需要を持ちつづけている例は、クリスタルの世界でも稀だ。

その背景には、メゾンが抱える50を超える専門職、そしてフランスでもっとも権威ある職人称号「M.O.F.(フランス国家最優秀職人章)」を持つ12名の存在がある。フランスのメゾンのなかでも群を抜くその数は、アルクールという一客のグラスを支える技術基盤の厚みそのものだ。

左:「アルクール タンブラー 2客セット」(66,000円/税込み)、右:「アルクール シャンパンフルート 2客セット」(77,000円/税込み)

メゾンの職人の誇りが生み出すタイムレスな造形美は、長い歴史のなかで王族たちを魅了してきた。今も手に入る美しきグラスを我が家に迎え、お気に入りの酒とともにゆっくりと時を溶かし、味わってみる時間は人生を豊かにしてくれるに違いない。

バカラショップ 丸の内

住所:東京都千代田区丸の内2-5-1 丸の内二丁目ビル1階
営業時間:11時~20時
電話番号:03-5223-8868
公式WEBサイト:www.baccarat.com/


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1841年から受け継がれる、バカラを象徴するコレクション。