moment 2016年 5/6月号
海外紀行 ニュージーランド

ニュージーランド幸福探訪の旅

文・津屋雅彦 写真・星 武志

ニュージーランドといえば、緑の丘に白い羊の群れ。しかし、今や畜産だけに頼る牧歌的な国家ではなく、新たな魅力に導かれ、世界中から観光客や移住者が増えている。

新しい魅力、“高級ロッジと美食とワイン”を求めて

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ニュージーランド(以下NZ)といえば、緑の丘に白い羊の群れ。しかし、今や畜産だけに頼る牧歌的な国家ではなく、新たな魅力に導かれ、世界中から観光客や移住者が増えている。自然保護と環境保全の国であり、整備されたいくつものハイキングルートに愛好家たちが集まっているほか、近頃は世界の富裕層にとって魅力あるラグジュアリーな旅先として注目を浴びている。


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成田空港からオークランドへは、ニュージーランド航空の直行便で約11時間。時差は夏時間(〜4月3日)で+4時間、その後9月25日まで+3時間となる。一日の中でも寒暖差が激しいため、夏でもジャケット等を携行したい。通貨はNZドル(NZ$)。


ロッジと呼ばれる小規模で高品質な宿が、大自然の中に、あるいはお洒落な街角にと、全国に点在する。いわばNZのおもてなし高級旅館といったところ。またニューワールドワインの中でも、優れた品質のものが生産され、旅人の大きな楽しみのひとつになっている。

そして美酒のある所に、美食あり。世界各地で経験を積んで戻ったNZ人シェフや、ライフスタイルの豊かさに魅了されてやってきた外国人シェフたちが活躍している。実際、NZのワインやレストランの世界で何人かの日本人が絶大な人気を得ていることは、旅していても誇らしく、この国が身近に感じられる。NZ料理は世界トップレベルのレストラン同様、新鮮で質の高い地産にこだわり、まさに農業国のメリットも発揮されているのだ。

高級ロッジと美食とワインという新しい魅力を語るとき、はずせないふたつの楽園がある。北島のホークスベイ地方、そして南島のアベル・タスマン国立公園だ。このふたつの楽園を含むNZ周遊の旅へ──。

Hawke’s Bayホークスベイ地方

ワイン名産地は発祥の地でもあった

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北島の東海岸に100キロも続く湾、ホークベイ(かのキャプテン・クックが命名)を囲む地方を、ホークスベイと呼ぶ。温暖で雨が少なく、水はけのよい肥沃な土壌が葡萄栽培に適しており、定評のある白ワインはもちろん、近年世界的評価が高い赤ワインの産地である。メルロー、シラー、カベルネ・ソーヴィニヨン等、暖かい地に適した品種から重厚で深みのある極上ワインが造られている。

そして興味深い歴史もある。1769年英国のキャプテン・クックが欧州人として初めてNZに上陸。その後、欧州からキリスト教の伝道師たちがやってきたが、宗教行事にはワインが必須。そこで葡萄が植えられ、1851年にはフランスの聖マリア会がホークスベイに初の醸造所を建てた。これが最古の醸造所、ミッションエステート・ワイナリーであり、今もその優美でクラシックなシャトーが歴史を物語っている。ホークスベイはまさにNZワイン発祥の地なのだ。97年、2番目に古い醸造所チャーチロードが創業、今や世界のワインコンテストで多くの賞を獲得する名門ワイナリーとなっている。

NZワインの故郷という歴史と名門揃いの環境に、続々と醸造家たちが集い、世界のトップレベルに肩を並べる一流ワイナリーが点在する。中でもクラギーレンジは際立つ存在で、大自然の山並をバックに葡萄畑を従えた現代建築のワイナリーは、併設のレストランも評価が高い。今や10億NZドルにも達するワインビジネスの中心、ホークスベイはNZで最も景気の良いエリアで、ラグジュアリー最前線とも言えるだろう。

葡萄畑と羊の面白い関係

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そんなホークスベイ地方の中心都市ネーピアは、1930年代にタイムスリップしたかのようなアールデコの街だ。当時のままの貴重な建築物が軒を並べ、ショーウインドーにはベルエポックと現代のファッションが混在し、お洒落な雰囲気は女性も男性も楽しめる。また、毎年この街は大晦日になると観光客で賑わう。ネーピアは、世界で早く初日の出を見られる街のひとつだからだ。海岸で水平線から昇る赤い朝日を拝むのは、素晴らしい旅の思い出となるだろう。

そして南仏のコートダジュールを思わせる海岸通りを車で走り街並が切れると、そこにはNZらしい緑の牧歌的風景が広がる。ワインの産地らしく葡萄畑がいくつも連なっている。とある葡萄畑で面白い風景に出合った。羊の群れが入り込んでいる。聞けば、11月から1月にかけ、ワイナリーは羊農家から1頭あたり週約2NZドルで羊を借用し、放牧する。羊が草を食べるため除草の手間がいらず、“落とし物”は畑の肥料にもなる。春は新芽の時期で、やがて葡萄の小さく青い実がたくさんつくので、羊が食べてしまうのでは、という心配は無用。この頃の葡萄はまだ酸が強く羊は好まないからだ。糖分を増す1月半ばには羊を畑から追い出し、2月から3月が葡萄収穫の最盛期となる。

そう教えてくれたのは、葡萄畑に面したブレッケンリッジ・ロッジオーナーのマルコムだ。NZ総督のシェフを務めたトップシェフのひとりで、彼が腕をふるう3コースランチを賞味しながら、愉快なひと時を過ごしたのだった。

Breckenridge Lodge

Breckenridge Lodge

ブレッケンリッジ・ロッジ

NZで著名なシェフ、マルコム・レドモンドが2006年にオープン。自家菜園の有機野菜、地元産シーフードや肉を用いた美味なるディナーや朝食が人気。料理に合うワイン選択も。Luxury Lodges of NZメンバー。

1 Breckenridge Lane, Napier
TEL:64-6-844-9411
URLhttp://www.breckenridgelodge.co.nz/
Greenhill Lodge

Greenhill Lodge

グリーンヒル・ロッジ

大農地に囲まれた19世紀木造ヴィクトリア様式の美しいロッジ。赤い屋根と展望塔が印象的。スコットランド出身の豪農が建てたこの宿には1958年、英国皇太后(エリザベス2世の母君)が宿泊。現在は香港などの高級ホテルで総支配人を務めたディック夫妻が家庭的にゲストを迎えています。

103 Greenhill Rd, Hastings
TEL:64-6-879-9944
URLhttp://www.greenhill.co.nz/
Mangapapa Hotel

Mangapapa Hotel

マンガパパ・ホテル

ホテル名はマオリ語で「肥沃な土地」の意。農産物を扱う豪商により1885年創建されたコロニアル様式の建物。館内には世界的名画のリトグラフがさりげなく飾られており、客室は全12室のスイート。広大な庭は散策に最適だ。オーナーは日本企業で、親しみがもてる。

466 Napier Rd, Havelock North
TEL:64-6-878-3234
URLhttp://mangapapa.co.nz/

Rotoruaロトルア

幻のふたつのテラスを思いながら

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北島のロトルアは、先住民族マオリの文化と温泉で人気の観光地だ。南半球最大の間欠泉とマオリ伝統の儀式や芸能を間近に見られる施設テ・プイアははずせない。

実は、NZ最古の観光地はロトルア郊外のタラウェラであった。かつてここにはトルコのパムッカレにそっくりな、温泉の溜め池が階段状に重なる巨大なふたつのテラスがあり、その色からピンクテラス、ホワイトテラスと呼ばれた。19世紀、“世界8番目の不思議”と称された景観を見るために、入植してきた英国人たちが訪れ、宿屋やガイド業が生まれてNZ最初の観光業が成立した。ところが1886年の火山噴火によりふたつのテラスは幻となった。

現在のタラウェラ湖畔には、美しい湖を望む優雅なロッジが佇む。湖を眺めながら、想像の翼を広げて幻のテラスを思い浮かべたい。

Solitaire Lodge

Solitaire Lodge

ソリテア・ロッジ

タラウェラ湖に突き出した小さな半島に佇む高級ロッジ。9室ある客室はすべてバルコニー付きで、美しい湖を見渡せる。ラウンジ、レストラン、バー、スパ完備。ハリウッドスターも訪れる隠れ家的ロッジ。Luxury Lodges of NZメンバー。

16 Ronald Rd, Lake Tarawera Rotorua 3076
TEL:64-7-362-8208
URLhttp://www.solitairelodge.co.nz/