日本紀行・海外紀行でこれまで撮影してきた膨大な写真群の中から、
選りすぐりの美しい写真をご紹介。その一枚にまつわる撮影秘話もご紹介します。写真は壁紙としてお楽しみください。

Back Story of the Photo

季節の一枚

写真家が語る一枚のバックストーリー【2015年9月】

南アフリカ共和国キャンプ・ジャブラニ。太陽と象と人と大地。それらが一体化して、完成された風景として目の前に提示された。

©Uruma Takezawa

完璧な風景の前で

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文・写真:竹沢うるま

大地に張り付くように広がるブッシュが西日を浴びて立体的に浮かび上がる頃、象たちが跪き、世界各国からやってきたツーリストたちをその背に乗せて歩きはじめた。象たちは巨大な足で低木を踏みならすように進む。重くて乾いた足音があたりに鈍く響く。人びとはまるで自分が巨人になったかのような錯覚を持って大地を進む。いつもとは違う視点からの風景が広がり、それまで知らなかった風の匂いを感じる。やがてブッシュを抜け、小高い丘に辿り着いた瞬間、雲の切れ間から沈み行く太陽の光が差し込み、象と人はひとつのシルエットとして浮かび上がった。太陽と象と人と大地。それらが一体化して、完成された風景として目の前に提示された。完璧な風景の前で写真家がするべきことは少ない。僕はただ静かにシャッターを切るだけだった。

撮影地:南アフリカ共和国 キャンプ・ジャブラニ

たけざわ うるま◎1977年生まれ。写真家。同志社大学法学部法律学科に在学中、沖縄の海に魅せられて、自分が見て感じたことを記録に残そうと写真を撮りはじめる。その後、アメリカに1年滞在し、独学で写真を学ぶ。出版社のカメラマンを経て2004年に独立。代表作に『Walkabout』『The Songlines』がある。2014年度 第3回日経ナショナルジオグラフィック写真賞グランプリ受賞。