日本人の心の故郷にして永遠のあこがれ、京都。
生粋の京都人ライターが、奥深い京の歳時記や知られざる名品、名所を綴ります。

京都通コラム 第4回

初夏の訪れを感じる行事

文・大喜多明子

春のにぎわいも落ち着く今の季節、京都の行事といえば5月15日の葵祭(下鴨神社、上賀茂神社)。そして、お祭りのごとく初夏の風物詩となっているのが、「京都薪能」。平安神宮で催される屋外の能で、今年で67回という歴史があります。

かがり火の中演じられる観世流能「杜若」。今年も6月1日に行われる。

平安神宮の薪能

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さわやかな青葉の頃になりました。大型連休は過ぎましたが、京都はこの時期も桜や紅葉に劣らぬ美しさ。観光の方もおおいにリフレッシュされるのではないでしょうか。

春のにぎわいも落ち着く今の季節、京都の行事といえば5月15日の葵祭(下鴨神社、上賀茂神社)。そして、お祭りのごとく初夏の風物詩となっているのが、「京都薪能」です。6月1、2日の両日、平安神宮で催される屋外の能で、1950(昭和25)年に第1回が行われ、今年で67回という歴史があります。

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平安神宮の朱色の社殿を背景に、空がまだ明るいうちに始まり、暮れゆく時間の中で舞台を見ていると、静かだけれどとてもワクワクした気持ちになります。そして、日が暮れてからの火入れ式、かがり火によって陰翳をともない映し出される舞台は美しく、やはり特別なものです。京都能楽会総出演で、厳かかつ色あざやかに行なわれる京都薪能は、能は初めてという方にも、周りの雰囲気も含めて楽しめるものでしょう。

京都に暮らしている私は、町で「京都薪能」の案内を見かけると、「もう6月なんやなあ」と思い、どうかこの2日間は晴れますようにと思わず願ってしまいます。

第67回の今年は、東京五輪に向けた文化事業という意味も込めて「五輪開催年に復興と平和を祈る」がテーマだそうですが、薪能で行なわれる火入れの儀式は、そもそもオリンピックの聖火にならって始められたのだとか。今や各地で催される薪能の先駆けとなった京都薪能には、そんなユニークな一面もあったのですね。

今年はお隣の「ロームシアター京都」がオープンしたこともあり、雨天の場合はそのメインホールで行なわれ、また同日の午後には同じくメインホールにて「能の世界へおこしやす」という無料のレクチャーが、5月21日は岡崎公園にてプレ公演が開催されるそうです。

京都薪能

平安神宮:京都府京都市左京区岡崎西天王町

ロームシアター京都:京都府京都市左京区岡崎最勝寺13

床の季節の始まり

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ところで、もうひとつ京都の夏の訪れを感じさせてくれるのが、川の畔で涼を楽しむ「納涼床(のうりょうゆか)」。なかでもよく知られているのが、鴨川河畔、二条から五条にかけて90軒前後のお店が並ぶ「鴨川納涼床」です。床を建てる作業を橋の上から眺めて、ここでもまた「床の季節やなあ」と思います。床そのものは5月から9月まで開かれていますが、古くからあった夕涼みの文化を受け継いでいることもあり、やはり初夏から夏の宵が最も風情があり、夜風の涼しさを味わう楽しみもあります。

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今年床を開くのは99軒。日本料理のイメージがある「鴨川納涼床」ですが、和洋中、エスニック、カフェ、バーなどジャンルはいろいろ。生活の変化に合わせて、テーブル式のお店も増えています。ただし、床は文化、風習でもあり、テラスとは異なるものという感覚が京都にはあります。常連さんは「床に出る」ではなく「床に上がる」と言うそうで、特別な座敷として大切にされているのです。初めて訪れる方も、特別な場所として情緒と涼風を楽しめば、いっそう心に残る一夜になりそうですね。

京都には他にも、貴船川のせせらぎの上に建つ「貴船の川床(かわどこ)」、緑あふれる渓谷美、高雄の「高雄の川床」、広大な日本庭園の中の川畔にある「しょうざん渓涼床」などの床があり、ひんやり感を味わいたい時には「雲ヶ畑」の川床もおすすめです。ちなみに鴨川は「のうりょうゆか」、貴船や高雄は「かわどこ」と言います。

おおきたあきこ◎京都府生まれ。ライター、コピーライター。京都府立大学文学部卒業。広告代理店勤務を経てフリーとなり、広告制作を行う一方、女性誌、会員誌などでパン、スイーツ等の食や、伝統のものづくりをレポート。京都市在住。著書に『未在 石原仁司の茶懐石』がある。