日本人の心の故郷にして永遠のあこがれ、京都。
生粋の京都人ライターが、奥深い京の歳時記や知られざる名品、名所を綴ります。

京都通コラム 第1回

清々しい師走の風物詩

文・大喜多明子

京都では、年末年始の習わしや行事に、受け継がれた伝統が息づいています。たとえば、無病息災を願う師走の風物詩、北野天満宮の大福梅。また、能楽版「第九」ともいえるユニークな能楽イベントも……。

北野天満宮の大福梅

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南座では顔見世の幕が開き、いよいよ師走ともなれば、京都の人びとも一年を締めくくり新年を迎える準備で、いつもとは異なる忙しさと浮き立つ気持ちを感じるようになります。お雑煮、おせち、お正月飾りなど新年に欠かせないものがいろいろありますが、京都で大切にされているお正月の縁起物に、「天神さん」こと北野天満宮で授与される「大福梅(おおふくうめ)」があります。これは、境内に1500本の梅の木があり、梅の名所としても知られる北野天満宮で実った梅の実を、神職さんや巫女さんが採取から塩漬け、土用干しまでなさって調製されたもので、京都では元日の朝一番に、この大福梅を入れて白湯やお茶をいただき、無病息災を祈るという習わしがあります。私も毎年、白味噌のお雑煮の前にこのお茶をいただき、清々しくありがたい気持ちになるのですが、うかがうとその歴史は、村上天皇の御代にさかのぼるのだとか。

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951(天暦5年)年、疫病が流行した時に天皇がこのお茶を飲んで平癒されたそうで、以来王服(おおふく)と称して毎年飲まれ、一般の人びとも同様にいただくと一年の疫病邪気を除き、長寿、幸福を得ると伝えられています。大福梅は、京都でお正月の準備が始まる「事始め」の12月13日から、12月25日の「終(しま)い天神」の頃まで北野天満宮にて約3万袋が授与されます(1袋約6粒入り/初穂料700円)。年が明けると、昨年の初天神で約60年ぶりに復活した、厄除の瓢箪が付いた梅の枝「思いのまま」の授与も始まります(初穂料1,000円)。

北野天満宮:http://kitanotenmangu.or.jp/

日本版 “第九”「能楽大連吟」

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終い天神が過ぎると、今年も大詰め。ここ数年、一度は参加したいと興味と憧れをもっている新しい年末行事が「能楽大連吟」です。こちらは10月から12月まで3カ月間、月3回ほどのお稽古をして、能楽「高砂」を謡うというもので、毎年200名ほどの方が参加されます。

老若男女が集まって第九を合唱するコンサートがありますが、京都ならば和、日本の伝統芸能の名曲にみんなで取り組んではと、7年前に始まったそうです。初心者でも参加することができ、能楽師の先生に直接ご指導いただけるので貴重な経験になります。一度お稽古の場にうかがったところ、謡の声の響き、調子が実に心地よく迫力があって、実際に「合唱」されている方はどれほど楽しいだろうと感じました。

お稽古を通じて伝統芸能の魅力を肌で感じたり、仲間との交流が生まれたり、出会いと達成感のある年の瀬になりそうです。毎年公演会場が変わり、平成27年は12月29日火曜日、KBSホールでその成果が披露されます(入場料1,000円)。

能楽大連吟 平成27年版:http://dairengin.com

おおきたあきこ◎京都府生まれ。ライター、コピーライター。京都府立大学文学部卒業。広告代理店勤務を経てフリーとなり、広告制作を行う一方、女性誌、会員誌などでパン、スイーツ等の食や、伝統のものづくりをレポート。京都市在住。著書に『未在 石原仁司の茶懐石』がある。