Special Column

田原から世界へ レクサスが生まれる現場

文・サトータケシ 写真・岡村昌宏

愛知県南端の渥美半島にある田原工場では、欧米・オーストラリア・中近東向けレクサスの生産・輸送が行われている。今回特別に取材の許可が下り、エンジン製造ラインを見ることができた。

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  • 写真は、V8エンジンの製造ライン。工場見学も歓迎しているが、今回紹介したエンジン製造ラインは、通常は公開していない場所。「moment」読者のために、特別に許可が下りた。

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エンジンの製造ラインに入る前には、ひとつの“儀式”を通過しなければならない。気密性の高い小部屋に入り、エアシャワーを浴びて衣服に付いた塵や埃を吹き飛ばすのだ。そしてネット状の帽子を被り、髪の毛が落ちるのを防ぐ。外部からの異物の侵入に対して、まるで食品工場のように気を配っているのが印象的だ。

エンジン製造部のみなさんのお話をうかがって納得する。髪の毛1本は、約0.1ミリ。レクサスのエンジン部品は、その半分の50マイクロメートルの誤差も許さないように組み立てられるのだ。そのために、糸くずの出ない特殊な手袋を用い、さらに精密部品へ触れる前には必ず粘着ローラーがかけられる。ハイパワーと省燃費を両立するレクサスの高性能エンジンは、このような過程を経て生まれるのだ。わずかな塵も許さないあたり、精密機械と呼んでも過言ではないだろう。

明るく清潔な雰囲気のエンジン製造ラインで気がついたのは、思ったよりも手作業の工程が多いことだ。ロボットが組み立てているゾーンがある一方で、要所要所ではレクサスのユニフォームを着た熟練工が手を動かしている。

聞けば、粛々と動いているように見える機械にしても、そこには人間のノウハウが注がれているとのこと。たとえば8つ並んだボルトを締める時に、内側から外側に向かう順番で作業をすると精度が上がることなどを、人間が機械に教え込むのだ。

製造ライン内でもうひとつ目を惹いたのは、遠くからも見える高い位置にある電光表示盤だ。これは「アンドン」と呼ばれるもので、稼働状況や異常の発生を知らせる装置。バラバラに作業しているように見えて、いま何が起こっているかを全員が共有しているのだ。

人間の匠の技とハイテクが共存し、働く人すべてに情報が公開されている。レクサスのエンジン製造ラインは、進歩的な社会のようだった。