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エキスパート添乗員がおすすめするクルーズ旅
憧れのクルーズ旅。エキスパート添乗員がすすめるのは「外国船の日本発着クルーズ」

クルーズ旅に興味はあるけれど、まだ最初の一歩が踏み出せていない方におすすめしたいのが、外国船の日本発着クルーズ。国内で発着する手軽さと、海外旅行の高揚感の両方が味わえる外国船の日本発着クルーズの魅力を、数々のクルーズ旅を企画、添乗してきたエキスパートの2人に語ってもらった。

Photo:Ikuo Kubota
Text:Kiyoshi Shimizu(lefthands)

クルーズ旅の敷居は決して高くない。今狙い目の、外国船の日本発着クルーズへ

今回、外国船の日本発着クルーズの魅力について語ってくれるのは、海外100カ国以上の豊富な添乗経験を持ち、さまざまなツアーを企画運営してきたトヨタファイナンス株式会社 旅行ビジネス企画グループの関根新吾氏と柏木康宏氏。仕事はもちろん、プライベートでもクルーズ旅行を知り尽くした2人に話を聞いた。

左が関根新吾氏、右が柏木康宏氏。クルーズ旅のエキスパートたちだ。

ここ数年、日本でもクルーズ旅行を楽しむ方が増えていますが、人気の理由とは?

関根:クルーズ旅行は、まずアメリカで人気がでて、ヨーロッパに広がり、その後日本でも注目されるようになりました。20年ほど前、私がクルーズ旅行の企画・添乗を始めた頃は、まだ日本での認知度は低く、フェリーのツアーはあっても、豪華客船に乗る旅行企画はほとんどなかったですね。人気が上がってきたのは10年ほど前からです。ここ数年はメディアでも多く紹介され、より身近な存在になってきたのではないでしょうか。

柏木:かつては「クルーズ旅行は高い」というイメージをお持ちのお客さまが多かったですね。でも、コロナ禍の前から超大型客船MSCベリッシマを日本の企業がチャーターして、家族向けにお安く提供できるツアーを企画したことで、比較的気軽に参加できるようになってきました。以降、カジュアルに楽しめるクルーズ旅行も数多く用意されたことで、選択肢も広がってきました。

フランス ポナンクルーズの名船「ル・ジャック・カルティエ」。

最近は、海外の豪華客船が日本発着のクルーズ旅行を実施していますね。

関根:クルーズ旅行で、日本各地の魅力に触れたいという海外のお客さまの要望に応えた豪華客船が、数多く日本に寄航するようになりました。多くの船が東京・大阪を中心に発着するので、乗りやすさもありがたいですね。乗船すれば、寝ている間に次の目的地まで移動してくれるし、船内はバリアフリー化されているので、高齢者でも安心して参加できます。

外国船の日本発着クルーズをおすすめする理由とは?

関根:海外発着のヨーロッパクルーズ、アラスカクルーズなども人気ですが、まず海外まで飛行機で移動しなくてはなりません。でも「外国船の日本発着クルーズ」なら、発着地までの移動も楽ですし、乗船した瞬間から海外旅行気分を味わえます。

柏木:一般的な海外旅行は1泊か2泊で移動なので、都度、パッキングと荷解きをしなくてはならないのが面倒ですよね。でもクルーズ旅行なら、航海中は自分の客室が自分の家になるわけですから、服をクローゼットに収納し、スーツケースや大きなカバンはベッド下に収納したら、あとは航海を思う存分楽しむだけです。

アッパープレミアム客船の代表格として人気のオーシャニア・クルーズ。モダンで快適な客室も魅力。

関根:どの船もランドリーやドライクリーニングがあるので、下着やシャツなど衣類も最低限の枚数で足りるのは便利ですね。

柏木:クルーズ船に乗っていると食事が美味しくて、ついつい食べ過ぎてしまうので、運動用の服とジョギングシューズは持って行かれた方がいいですね。

関根:デッキの上にウォーキングトラックがあるので、海を見ながら歩くだけでも気持ちがいいですよ。朝陽や夕陽の時間は素晴らしい景色に出合えると思います。

柏木:以前、海外発着のクルーズ旅行に添乗したとき、1人で乗船されている日本の女性がいらっしゃいました。その方は、船上でのダンスパーティーを楽しみに、ドレスまで新調されていたのですが、空港でスーツケースがでてこなかったのです。海外発着のツアーには、こうしたロストバゲージのリスクがありますが、日本発着だとその点安心です。クルーズ船によっては荷物を事前に送っておくことも可能なので、手ぶらで乗船することもできます。また、飛行機の乗り継ぎに時間がかかって、出航に間に合わなかったお客さまもいらっしゃいますが、日本発着クルーズならその心配もありません。

数多くのクルーズ旅を企画、添乗してきた関根氏。

関根:海外発着のクルーズツアーだと、余裕を持って2日前に現地に入り、観光してから出航するという日程のツアーもありますが、国内発着のものより費用が高くなります。

クルーズ旅行は敷居が高いという方が多いのは、なぜでしょうか?

関根:クルーズ旅行では乗船中に一度、船長(キャプテン)主催のフォーマルのパーティーがあり、男性はタキシード、またはそれに準じたダークスーツ、女性はイブニングドレス、またはカクテルドレス着用が決まりとなっています。このドレスコードに気後れして、クルーズ旅行を避ける方も多いですね。でも最近は、フォーマルパーティーをなくして、我が家のようにくつろいでほしいというコンセプトのクルーズ船も増えています。

ドレスコードが苦手な日本人は、まだまだ多いのですね。

関根:お客さまには「結婚式で着られるような服でいいですよ」とお伝えしていますが、実際に乗船してみると、欧米の方は皆さんタキシードを持っているので、スーツにネクタイだとやはり気後れされるようで「やっぱりタキシードを用意してくればよかった」と後悔されるお客さまも少なくありません。ドレスコードのないクルーズ船が増えてはいますが、クルーズ旅行は非日常を体験する旅なので、むしろ思い切っておしゃれを楽しむのもよいと思います。

フォーマルの装いに挑戦してみるのも、非日常のクルーズ旅を楽しむ秘訣のひとつに。

船上での長い時間をどのように過ごせばよいのか、心配な方もいらっしゃるようですね。

柏木:航海中、クルーズ船のシアターでは毎晩違ったダンスレビューや歌謡ショーやコメディーなど、さまざまなエンターテイメントを堪能できます。日中はカルチャー教室やギャレーツアーなど、毎日さまざまなイベントが用意されていますし、プールやスパ、サウナ、スポーツジムもあります。でも、日本人のお客さまには、部屋に籠ってでてこない方も多い。言葉の問題を気にされているようですが、もったいないですよね。スタッフの方も積極的に話しかけてくれるし、片言の会話でも、顔見知りができると旅はさらに楽しくなるもの。私はテニスが趣味なので、パドルテニスをほかの乗船客と一緒に楽しんだりしますが、皆さんフレンドリーですよ。

広大なデッキ上には、テニスコートやパットゴルフ場、プールなど、船によってさまざまなスポーツ施設がある。

関根:クルーズ旅を楽しむコツは、いろいろなイベントに積極的に参加することです。いまは翻訳ソフトがあるので、言葉が通じなくても不便はありません。日本発着ツアーなら、日本語を話せるスタッフが乗船していることもあります。

柏木:船では、夫婦別行動でもいいと思います。奥さまはダンス教室、ご主人はゴルフの打ちっ放しやサウナなど、お互い好きな時間を過ごして、食事だけ一緒にするというご夫婦もいらっしゃいます。

関根:先ほど、ダンスを楽しみに1人で参加された女性の話がありましたが、そういうお客さまが意外と多いので、男性のダンスパートナーが数名常駐し、女性のおひとりさま参加でも十分楽しめるようになっています。昼はレッスンしてくれる教室も開催しているので、初心者でも気後れすることはありません。

クルーズ旅には、寄港地での観光も楽しみのひとつとなっていますね。

柏木:今回、moment Summer 2025号の誌面でご紹介しているクルーズ旅は、夜だけ航海して朝には港に着いています。朝食のあとは下船して観光できるので、名物料理を楽しんだり、お土産を購入したりして時間を過ごし、夕方船に戻ってから出航となります。夕食を食べて、寝ている間にまた次の寄港地に到着しますから、とても楽に観光が楽しめます。

moment Summer 2025号の誌面クルーズ旅はこちらからご覧ください。

寄港地での下船の様子(イメージ)。港から街に入るという体験自体が新鮮に映るはずだ。

関根:海からの日本の景色も、船旅だからこそ見られる美しさです。また、寄港地では地元の方や学生が音楽を奏でたり、地元の踊りを披露してくれるなど、その土地ならではのウェルカムセレモニーで出迎えてくれます。小笠原では、何隻もの漁船が船を追いかけてきて、最後は海に飛び込んで海の中から手を振ってくれる。私はあれが見たくて小笠原に行ったことがありますが、普通に国内を旅しても経験できない感動でした。

それと、カボタージュ規制により、日本発着便でも一度は韓国や台湾といった海外に寄港するのも魅力です。グルメや観光、そしてカジノもあるので、楽しんでみてはいかがでしょうか。

船内でも、そして海外の寄港地でも楽しめる本格的なカジノ。

船旅での食事の楽しみについても、教えていただけますか?

関根:団体旅行のように、決められた時間と場所で全員揃って食事をすることはありません。レストランが何軒もあるので、好きな時間に好きな食事を楽しめます。しっかり食べたいなら、メインダイニングでフルコースを頼んでもいい。ドレスコードも厳格ではなく、水着とサンダル以外ならOKというところが多いです。軽食でいいなら、カフェテリアもあります。

外国の方と同席になることを心配される方もいますが、お2人だけの席もたくさん用意されています。ルームサービスも頼めるので、お部屋のデッキで大海原の眺めを楽しみながら朝食を取ることも。お酒の好きな方でしたら、ワインやウイスキーのボトルを滞在中キープすることもできます。

ホテル同様、豊富な食事や飲み物のメニューからルームサービスを楽しむこともできる。

それと以前、グアムから神戸までを寄港無しで航海する5日間のツアーにプライベートで参加したことがありますが、朝からプールサイドでシャンパンを飲みながら、タブレットで動画や映画を観て過ごしました。何もしない贅沢で、命の洗濯ができました。皆さんもクルーズ旅行に慣れたら、無寄港クルーズというものも体験してみてほしいですね。

柏木:1人で参加しても、周りの目を気にしなくていいのがクルーズ旅行のいいところです。ほかに1人で乗られている方たちと知り合いになることのできるイベントなどもあるので、ぜひ気後れせずに検討してみてほしいですね。

クルーズ旅行には、どのくらいのリピーターがいらっしゃるのでしょうか?

関根:今まで数多くのクルーズ旅行に添乗しましたが、ほとんどのお客さまが「思ったより簡単なのね」と喜んでくださいました。私の感覚だと7割くらいがリピーターになっています。クルーズ旅行は、決してハードルが高いものではないと知っていただきたいですね。

そして、船旅はとにかく安全だということも、ぜひお伝えしたい。出港したらパスポートは預けて、船会社が発行するID(会員証)ですべて済ませるから、財布を持ち歩く必要もありません。飛行機や列車で海外を移動するより、よほど安全です。

今回、momentの読者用に、さまざまな外国船の日本発着ツアーをご用意してくださいました。

関根:本当の豪華客船を知っていただきたいという思いで、今回のクルーズ船を選定しました。まず、いずれのクルーズも乗船人数が多くないので、寄港地においての乗船、下船がスムーズにできますし、また、スタッフのホスピタリティが高く、よりきめの細かいサービスができるので、ラグジュアリーな旅を楽しめます。

外国船の地中海クルーズの場合は、日数も長く8日から12日間が多いですね。ラグジュアリークラスのシルバーシー・クルーズは、ホスピタリティも高く、とてもフレンドリーなサービスが魅力です。プレミアムクラスと呼ばれているオーシャニア・クルーズは、食事のレベルも高く、どのレストランでもご満足いただけるはずです。どちらのクルーズも大変おすすめですが、ヨーロッパまでの移動とお部屋のカテゴリーや為替レートによって変動はあるものの、日本からの飛行機代も含めると、ヨーロッパ発着クルーズなら約150万~200万円ほどかかりますが、日本発着ならその半額程度で楽しめます。また、セレブリティクルーズもプレミアムクラスですが、ベランダのないお部屋などカテゴリーによっては20万円台からご提供できます。

セレブリティクルーズのスタイリッシュな船体。

柏木:ぜひ、自分に合ったクルーズを見つけてほしいですね。外国船なら「こんなに豪華なんだ」と驚かれるはずです。アメリカの船は、乗った瞬間から「わぁ!」と声がでるような豪華なつくりですし、フランスの船は洗練された空間が魅力です。値段だけ見ると高そうですが、食事と飲み物代が含まれているオールインクルーシブのクルーズもありますし、ショーを観たり、施設を利用するのも無料ですから、バリュー感が非常に高いのです。

フランスの客船「ル・ジャック・カルティエ」のオーナーズスイート。贅沢なテラススペースも魅力。

関根:日本発着便なら、たいていは日本語を話せるスタッフがいるので、なんでも相談に乗ってもらえるし、救急の際も24時間体制で対応してくれます。

柏木:海外では港のどこに行って、どんな手続きをすればいいのか不安な方も多いようですが、日本発着なので言葉も通じるし、安心してご利用いただけます。

外国船の日本発着便の優位性を語る柏木氏。

関根:今回選定したクルーズ船は、かなりリーズナブルだと思います。さまざまなタイプのクルーズをご紹介しているので、お客さまのご要望に合ったクルーズに乗船してみてはいかがでしょうか。おひとりでの参加でも、追加料金がかからないツアーもあります。

日本各地を船で旅するツアーは海外の方に人気が高いので、インバウンド需要が続く限り、値上がりしていく可能性が高いと思います。気になるツアーがあれば、早めに経験されることをおすすめします。善は急げ、ですね。

柏木:乗りたいと思った船を逃してしまうと、日本に次いつ来るかわかりませんし、ルートが同じとも限りません。船と航路の組み合せが気に入ったなら、絶対に乗るべきです。ただ、国内発着の外国船クルーズ旅は非常に人気が高いので、早めのお申し込みが必須です。オーシャニア クルーズは、2026年分も、もう定員に達しているので、今回は2027年の募集となります。

関根:日本発着の外国船クルーズにご満足いただけたら、次はフライ&クルーズも体験していただきたいですね。ハワイまで飛んで、船で島巡りをするツアーなどは、日本語が比較的通じることもあり大変人気です。クルーズ旅には定年がないといわれるくらい、高齢になっても楽しめるので、ぜひ旅をするワクワク感を持ちつづけていただきたいです。

柏木:ガラパゴス諸島を巡るツアーや、ノルウェー沿岸急行船でオーロラを見に行くツアーなど、貴重な体験ができるクルーズ旅行もあります。まずはデビューをして、それからいろいろなクルーズ旅行を楽しんでみてほしいですね。

左が関根新吾氏、右が柏木康宏氏。

関根新吾氏
トヨタファイナンス株式会社
旅行ビジネス推進室 旅行ビジネス企画グループ 参事

大手旅行会社の海外旅行専属添乗員として、企業や官公庁などの視察旅行や社員旅行、パッケージなどにも添乗し、約20年間で110カ国を訪れる。また、企画から販売、添乗までを一貫して行う旅行会社の企画販売部長として、海外旅行の最前線で陣頭指揮を行ってきた。

柏木康宏氏
トヨタファイナンス株式会社
旅行ビジネス推進室 旅行ビジネス企画グループ グループマネージャー

海外旅行専属添乗員として、修学旅行や語学研修、パッケージツアーなど、あらゆる形態の添乗を経験。その後、海外旅行の企画や販売、受注型企画旅行の手配なども行い、トヨタファイナンス入社前は、大手旅行会社の富裕層向け部門で支配人として旅行の販売に携わってきた。


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