東京の注目店
あの中国料理の巨匠が目の前で料理をしてくれる!「Ginza脇屋」で特別な一夜を
ヌーベルシノワで中国料理の世界に新風を吹き込み、日本の中国料理界を牽引してきた脇屋友詞シェフが、自身の集大成となるレストランを銀座にオープンさせた。カウンターに座れるのはたった8人のみ。目の前で脇屋シェフ自らが腕を振るい、できたての料理が振る舞われる。シェフとのトークも美味しさのエッセンスだ。ここはぜひ、脇屋シェフの世界を堪能するためにも料理好きな友人や大切な客人と二人で訪れてほしい。
Text:Keiko Moriwaki
Edit:Misa Yamaji (B.EAT)
アイアンシェフが、あなたのために目の前で調理
今やすっかり大皿中華は影を潜め、少数多皿やフレンチスタイルのお洒落なヌーベルシノワが立派な市民権を得ているが、こうした潮流の草分けともいえるのが、脇屋友詞シェフ。ヌーベルシノワの立役者にして、日本の中国料理界を代表する巨匠の1人だ。
その脇屋シェフが、2023年の12月、50年におよぶ料理人人生の節目として新たなスタートを切った。銀座に構えた自社ビルの2階に自らの名を冠した「Ginza脇屋」をオープン。「僕が厨房に立てない日は、店は休むことにしています。」ときっぱり語るひと言に、同店にかける熱意のほどがうかがえる。おくどさんがひときわ目を引く店内は、カウンターが8席と個室1室のみ。
このこぢんまりとした空間の中、脇屋シェフ自らゲストに腕を振るい、料理を提供。臨場感もたっぷりに、レジェンドの繰り出すできたての味を堪能するひとときは、まさに贅沢の極み。脇屋シェフの私房菜ともいうべきプライベートな趣に高揚感もひとしお。特別な日に特別な人と訪れるに相応しい一軒だ。
「大型店ばかりだったこれまでと違い、今回は初めての小型店舗。僅か8人という少人数のお客さまを相手に鍋を振るい、しかもオープンキッチンということもあって最初は緊張しました」と言う脇屋シェフだが、ゲストの反応がダイレクトに伝わるオープンキッチンを今は楽しんでいるそうだ。
客席と厨房の間にガラス戸などの仕切りを設けなかったのも、ゲストとのコミュニケーションを大切に考える脇屋シェフの想いゆえ。とはいえ、炒めたり、揚げたりと油を使う料理が多い中国料理のこと、五徳で中華鍋を振る従来のスタイルでは、客席まで油が飛んでしまうことも。
そこで脇屋シェフ、なんと五徳と中華鍋は使わず、代わりにしつらえたピザ窯のような特注の炉窯で調理することにしたのだとか。常に新境地を開いてきたパイオニアらしいチャレンジだろう。
春は筍、夏は賀茂茄子やじゅんさいと和の旬素材を巧みに取り入れたおまかせのコースは、アミューズからデザートまで全部で11~12皿ほどがお目見え。
叉焼やクリスピーポーク、フカヒレの煮込みといったスタンダードな中華の味から蒸し焼きにした賀茂茄子に黒胡麻芝麻醬ソースをかけ、中華風賀茂茄子田楽の如く仕立てた一 品などなど、和や洋を自在に取り入れたコース運びはさすが。“伝統と創作”を信条とする脇屋シェフの面目躍如といったところだろう。
そこで、活躍しているのがくだんの炉窯。前述の叉焼やクリスピーポーク、賀茂茄子もすべて炉窯で調理。脇屋シェフ曰く「ここでは、魚も煮込んだり蒸したりせず、炉窯で焼いています。高温で一気に焼き上げるので、周りはこんがり香ばしく中はジューシーに仕上がりますね。きんきなんて裏表各2分で焼き上がってしまうんですよ」とのこと。
とはいえ、味の着地点はきちんと中国料理。ぶれない美味しさだ。研究熱心な脇屋シェフのこと、この炉窯中華、まだまだ進化していきそうだ。
また、意表をつかれるのは〆の食事。中国料理ならさしずめ炒飯か麺料理と思いきや、なんと土鍋の炊き立て白飯(時に炊き込みご飯)が登場。脇屋シェフ自ら、カウンターのゲストにデモンストレーションしてくれるのだから、場が盛り上がること必至。
ご飯に続いて、しらす醬や黒胡椒たらこなど、オリジナルの中華版ご飯のお供も続々登場。時には麻婆豆腐がお目見えすることもあり、2杯、3杯とおかわりも進む。心もお腹も満たされたところで、食後の甘味とともに、最後は、脇屋シェフが淹れてくれる中国茶でフィナーレ。エキサイティングな夜の宴は終演となる。
ちなみに料理に合わせ、ワインを中心としたペアリングも当意即妙。伝説のアイアンシェフの手料理とともに満喫したい。
Ginza 脇屋
住所: 東京都中央区銀座5-10-5 スリーY'S & D
電話番号:050-3662-1535
営業時間:17時~ 不定休
コース料金:35,000円~
HP:https://www.wakiya.co.jp/restaurants/ginza/
駐車場:なし