Travel

Summer 2024号 関連記事

東京の注目店
東麻布にフランス人シェフ&元デザイナー夫妻がオープンさせた心地よいレストラン「OLINA」

気の置けない友人や夫婦で、ちょっと贅沢に食事をしたい。そんな気分のときにぴったりなフレンチレストランが東麻布にオープン。シェフを務めるのは各国で腕を磨いたフランス人シェフ。元デザイナーだったパートナーの日本人女性がサービスを務める。いい料理といいワインといいサービス。洗練されているけれど、押し付けがましくない。今の時代らしいフランス料理店を取材した。

Text:Misa Yamaji

東麻布に誕生した隠れ家フレンチ

どの国でもそうだが、飲食店が集まる場所は不思議とその土地ごとにはっきりとした個性がある。目的や同伴する人によって、自然と訪れる場所を使い分けている人が多いのではないだろうか。

24時間眠らない新宿などのエネルギッシュな場所もあれば、六本木のように夜のにぎわいと昼間の静けさのコントラストがはっきりしているところもある。麻布十番あたりから東麻布に広がるエリアは、下町ののどかさと都会の洗練された空気が混じり合う都会のエアポケットのような場所だ。

そんな東麻布の雰囲気にしっくりと馴染むのが、ビルの上にひっそりとオープンしたレストラン「OLINA」だ。

ゆったりと配されたテーブル席からはシェフやサービスマンの動きが見える。

腕を振るうのは、フランス人シェフのオリヴィエ・ガルシア氏。そしてサービスを仕切るのは、パートナーの高遠菜都子氏だ。

オリヴィエ氏はスペイン人の父とフランス人の母を持ち、オーストラリア、フランス、スウェーデンなど、ミシュラン星付きレストランを含むさまざまなスタイルのレストランで経験を重ねてきた人物。

一方、高遠氏はファッションデザインを学ぶため 2009年に渡仏後、トップメゾンでのインターンなどをしながらフランスでくらしていた。スウェーデンではAcne Studios(アクネ ストゥディオズ)のデザイナーとして活躍した。

そんな才能あふれる二人が結婚。彼らが自分たちの夢をかたちにしたレストランには、まさに二人が歩んできた道のりが凝縮されている。

シェフのオリヴィエ・ガルシア氏。

数多くの国でのバックボーンを持つオリヴィエ氏は、実に好奇心が旺盛で柔らかい感性の持ち主だ。それは各国の文化が違うさまざまな人とたくさんコミュニケーションをしてきたからだろう。

食材や器探しのために農家や工芸家を訪ね、ひとりひとりの話に耳を傾け、届いた食材や器を見るたびに、無限にインスピレーションが湧いてくるという。

コースの中の一品「大根 - ヤリイカ - 生ハム出汁」。

料理を作るひらめきや工程を楽しそうに話しているオリヴィエ氏の様子は、まるで作曲家のよう。

彼は楽譜に音符を書くかのようにさまざまな食材を自由に組み合わせ、ひとつの調和した世界を作っていくのだ。

たとえ、それが驚くような食材の組み合わせだったとしても、不思議としっくりとくるのが面白い。例えば、「大根 - ヤリイカ - 生ハム出汁」という料理。生の大根の歯応えと、ねっとりとしたヤリイカの身の食感のコントラストは料理にリズムと奥行きをもたらす。そしていりこ出汁と生ハムの出汁という異色の組み合わせのソースが、実にぴったりと味をまとめている。

一皿を構成する小さなピースが欠けただけできっとこの美味しさが崩れてしまうと想像がつく絶妙なバランス。かといってそれは緊張を強いるようなものではない。彼が楽しみながら生み出した料理には、彼のチャーミングで温かな人柄が滲み出ている。

デザートには日本の食文化の中心にある“米”に着目し、フランスで定番のお米のデザート「リ・オレ」をまったく違うかたちに仕立てたものが登場。“露﨑商店”の甘酒をミルクの代わりに使用している。

それらの料理を引き立てるのが、ソムリエ・常盤努氏が選ぶクラフトナチュラルワインのラインアップ。欧州のワイナリーのものが中心だが、あまり聞いたことのないワインも多い。オリヴィエ氏の作る料理同様、従来の型にとらわれない自由な発想から生まれるペアリングの提案はとても魅力的だ。

料理人もサービスもみな同じユニフォームを着用。

また、レストランで印象に残るのが彼らのユニフォームだろう。これは、アクネ ストゥディオズでワークウェアのデザイナーとして活躍していた高遠氏が考えたこだわりの一着だ。

機能性にも優れ、従来の堅苦しい“フレンチレストラン”のイメージを一新させる無駄のないデザインは、レストランで働くすべての人の所作の美しさを引き立てている。

料理からユニフォームまで。彼らの“好き”を磨き上げたレストランで過ごせば、懐かしいような心地よさを感じつつ、小さな驚きを随所に感じることができるだろう。

東麻布の静かな裏通りを見上げれば、ビル上階にほんのりと見える「OLINA」の灯り。そこには思い思いに過ごす人びとの幸せな時間が流れている。都会の中のオアシスのようなレストランで大切な人と過ごしてみてはいかがだろうか。

OLINA

住所:東京都港区東麻布3-6-11 THE CITY 麻布十番 East 5階
電話番号:03-6277-6789
URL:https://olina.tokyo/
営業時間:18時~23時(土曜日のみランチ営業あり。12時~15時)
定休日:日曜日、月曜日
コース料金:Menu Immersion/シェフのおまかせコース7品 17,600円~、クラフトワインペアリング 10,560円~
要予約
駐車場:なし

Autumn 2024

レクサスカード会員のためのハイエンドマガジン「moment」のデジタルブック。
ワンランク上のライフスタイルをお届けします。