滋賀の旅
自然に囲まれた“桃源郷”「MIHO MUSEUM」で「古代ガラス―輝く意匠と技法」展が開催中
パリ・ルーヴル美術館にあるガラスのピラミッドを設計したことで有名なI.M.ペイ氏によって設計された「MIHO MUSEUM(ミホミュージアム)」。滋賀県甲賀市信楽町の山中にて“桃源郷”をテーマに建てられた、自然とアートの調和が美しい美術館だ。ここでは、その魅力に迫るとともに、23年ぶりに公開される貴重な古代ガラス作品の特別展「古代ガラス―輝く意匠と技法」について紹介しよう。
Text: Misa Haioka
Edit: Misa Yamaji(B.EAT)
“桃源郷”をモチーフに、自然豊かな山中にたたずむ「MIHO MUSEUM」
枝垂れ桜のプロムナードを通ってトンネルをくぐると、吊り橋の向こうに美術館棟が現れる、という作りが特徴的な滋賀県甲賀市信楽町にある美術館「MIHO MUSEUM(ミホミュージアム)」。
中国の詩人・陶淵明の『桃花源記』に描かれた理想郷である“桃源郷”をテーマに、世界的建築家I.M.ペイ氏によって、1997年11月に誕生した。
美術館棟へ続く銀色の壁面のトンネルは、春には枝垂れ桜が、秋には紅葉が映り込み、季節ごとにさまざまな表情を楽しむことができる。
建築はとてもユニーク。環境保護のため建設容積の80%を地中に埋設し、建物の上にも自然を復元している。まずエントランスに一歩足を踏み入れると、ガラスの屋根から降り注ぐ光とベージュ色のライムストーンを用いた壁面、美しい緑の山々が連なる大空間に圧倒される。
現在は古代ガラスのコレクションを目にできる春季特別展を開催中
「MIHO MUSEUM」では、重要文化財9件を含む約3,000件ものコレクションを所蔵しており、常時250~300点を公開している。コレクションは主に、茶道具や仏教美術などの日本古美術と、エジプトや西・中央・南アジア、中国などの世界の古代美術の2ジャンル。そのほか春季、夏季、秋季に異なる特別展を開催していて、現在は古代ガラス作品を集めた「古代ガラス―輝く意匠と技法」を開催中だ。
古代、宝石のように尊ばれたガラスを用いた貴重な作品をエジプトやペルシア、中国、ローマなどの文明ごとに紹介している今回の特別展。ビーズやモザイクガラス、カットガラスなどバラエティ豊かな古代ガラスの作品を約200件、目にすることができる。
注目作品のひとつは、この「ファラオ頭部 おそらくアメンホテプ3世」。古代エジプトにガラスが伝わった新王朝時代に作られたツタンカーメン王の祖父アメンホテプ3世のガラス彫刻とみられ、世界で唯一の古代エジプト等身大ガラスとされている。
水晶のように透明なガラスが愛好された2400年ほど前、インドの西側からエジプトまでを支配したアケメネス朝ペルシア帝国では、宴会で透明ガラスの器が使われたとされている。この「獅子頭形杯」は、ほぼ完品で今日まで伝わったとても希少な作品のひとつだ。
ほかにも、古代地中海のコアガラス香油瓶やビーズ、花や神々の顔を描いた精緻なモザイクガラス、古代ガラスならではの「銀化」現象を示した器など、さまざまなガラスの装身具や器が取り揃えられている。
山奥の“桃源郷”で楽しむ自然とアートのコラボレーション
自然とアートを融合させた空間デザインはもちろんのこと、高度な技術を集約した古代ガラス作品の数々は、一見の価値あり。枝垂れ桜や新緑の美しさが楽しめるこれからの季節、ぜひ足を運んでみては。
展覧会情報
2024年春季特別展「古代ガラス-輝く意匠と技法」
会場:MIHO MUSEUM
会期:2024年3月3日(日)~2024年6月9日(日)
住所:滋賀県甲賀市信楽町田代桃谷300
開館時間:10時~17時(入館は16時まで)
休館日:月曜日、4月30日(火)、5月7日(火) ※4月29日(月)、5月6日(月)は開館
入館料:一般 1,300円、高校・大学生 1,000円、中学生以下 無料
※20名以上の団体は各200円割引き
お問い合わせ先
MIHO MUSEUM電話番号:0748-82-3411
URL:https://www.miho.jp