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東京の注目レストラン
美食と夜景と音楽と。五感を刺激する最上級のレストランが虎ノ門に誕生

2023年秋、新規商業施設やレストランが続々オープンし、にわかに注目を集めている虎ノ門界隈。中でも「虎ノ門ヒルズ ステーションタワー」内「TOKYO NODE」の最上階にオープンしたのは界隈きっての二軒のハイエンドレストランだ。そのうちの一軒「アポテオーズ」のシェフに就任したのは、パリでミシュランガイド一ツ星を5年連続獲得してきた北村啓太氏。世界を見据えるシェフが腕を振るう店では、きらめく夜景を見下ろしながら五感が刺激される食事を楽しむことができる。

Text&Edit:Misa Yamaji (B.EAT)

日本が誇る、フラッグシップレストランへ

2023年の後半、美食アドレスが集結し、なにかと話題になった虎ノ門界隈。

遡れば2014年、この虎ノ門開発の先陣を切ったのが「アンダース東京」などが入る「虎ノ門ヒルズ 森タワー」だ。以降「虎ノ門ヒルズ ビジネスタワー」、「虎ノ門ヒルズ レジデンシャルタワー」とビルを増やしその最後のピースを埋めたのが、2023年10月に開業した「虎ノ門ヒルズ ステーションタワー」である。

その「虎ノ門ヒルズ ステーションタワー」の一番の目玉は、日本のショーケースとして“今の東京”を世界に発信する総合文化施設「TOKYO NODE」。中でも最上階49階に入るレストランは、森ビルが“世界に向けた日本のフラッグシップレストラン”として肝煎りで作った特別な場所だ。

絶景を見下ろす、インフィニティプール。実際に入ることはできない。

49階にあるのは二軒のレストランのみ。いずれも45階から各レストランの専用エレベーターで向かう。ドアが開くと水を湛えているインフィニティプールが目に飛び込むが、ここはレストランゲストだけがアクセスできる秘密の場所。エクスクルーシブなアプローチに、この日のディナーへの期待がいやがおうにも高まるだろう。

ガウディ好きの北村氏のリクエストで作った重厚な扉。

二軒のうちの一軒、2023年11月21日にオープンした「アポテオーズ」は、パリでミシュランガイド一ツ星を5年取りつづけている「ERH(エール)」でシェフを務めた北村啓太氏が腕を振るう。

「“ともに世界に誇るフラッグシップレストランを作りましょう”。というオファーに迷いなく日本行きを決めました」と北村氏。パリ時代の同志だったスーシェフ、シェフパティシエ、シェフソムリエを連れて完全に日本へ移住したことからも、並々ならぬ覚悟がうかがえる。

しかし、新しい城をどう魅力的に作り上げていくか。料理人人生の半分以上をパリで過ごしてきた北村氏にとって、そのイメージはすぐには湧かなかったという。そこで、考えをよりヴィヴィッドにするために、まず取りかかったのは日本の生産者を訪ねることだった。

オープンキッチンなので、調理や盛りつけをする様子が見られる。

「パリでは本当にたくさんの食材に触れて料理をすることができました。パリは普段のくらしでも、非常に食材との距離が近い場所なんです。毎週どこかでマルシェが開かれていて、そこでは採れたての野菜や魚や肉が並びます。そんな環境下で食材を見ていると“こんなふうに料理をしたいな”とイメージが湧いて、そこからメニューを決めるのが自然でした。ですから、改めて日本の食材を知ることから始めたいと思ったんです」。

日本の山海の風景を写した料理

さまざまな生産者を訪れる旅は、これからも継続的にしていくそう。

北村氏は帰国前から知り合いのツテなどをたどり、気になる生産者をリサーチ。2023年8月帰国後すぐに、多くの生産者を訪ねた。北海道帯広近郊では羊や鹿、牛肉などの畜産農家を、そして道央では野菜、函館では魚介。静岡の農家のマッシュルームに、小田原の柑橘や米にお茶。久しぶりの日本で出合う食材たちはどれも刺激的で、新鮮に目に映ったという。さまざまな生産者と会うことで、どんどん具体的な料理のビジョンが固まっていった。

「例えば函館の河村水産さんの鮑。生で食べて、うまみがすごいと思いました。聞けば食べている真昆布の質がいいんですよね。東京は流通が発達しているから、新幹線便で朝獲れの鮑が16時には厨房に届くこともある。そんなときは、フランスでは蒸して提供するのが定番の鮑を生で食べてもらう料理に仕立てたりします」。

「鮑のカルパッチョ」。

「鮑のカルパッチョ」はそんな鮮度抜群の鮑を活かした一品だ。鮑を薄くスライスし、トマトのクリアなスープに九条ネギの鮮やかな緑のオイル、フレッシュなハーブなどと合わせた。青い野菜の香りと鮑の磯の香りが調和し、歯応えのある鮑を爽やかな海風のように包んでいる。

「蝦夷鹿」。鹿肉はエレゾ社のもの。

北海道で惚れ込んだエレゾ社の蝦夷鹿はしっとりと焼き上げられ、フランス料理らしいポワブラードソースと岩塩で包み焼きし、藁で燻したビーツが添えられている。イタリアンパセリの根っこをフリットにしたものや、アマランサス、フランス産のジロールキノコが添えられており、一口食べると鹿が住む森の情景が目に浮かぶ。

「野菜」。根菜は当帰バターでエチュベし、フレッシュな葉野菜はドレッシングで和えて。冷たい野菜と温かい野菜のコントラストを楽しむ。

これらの料理に限らず、コースに登場する料理はいずれも北村氏が日本の里山で出合った風景がいきいきと映し出されている。その時に大地を照らしていた太陽も、吹き抜けた風さえも感じられるような臨場感に満ちているのだ。

49階から見下ろす圧倒的な夜景を見られる非常に都会的なレストランで、日本各地の里山の風景を料理から感じる。それはまるで、夜空に浮かびながら旅をしているようだった。

五感を研ぎ澄ませて楽しむレストラン体験

窓からは美しい東京の夜景が。

「アポテオーズ」での体験は、料理以外でもたくさんの驚きがある。すべてを書いてしまうのは、楽しみが半減してしまうので少しだけ種明かしを。

小さな驚きはエレベーターに乗ったところから始まる。扉が開くと、エキゾティックないい香りをほんのりと感じるはずだ。この香りも、「アポテオーズ」チームが作ったものだ。その香りに導かれてウエイティングスペースでウェルカムティーを飲んでいると、心地よい音楽が流れていることに気がつくだろう。これは、北村氏が訪ねた生産現場で採取した自然音を組み合わせて作曲したものだという。

インテリアは世界的なインテリアデザイナー集団、スペース・コペンハーゲン社が担当。

このレストランではぜひ五感を研ぎ澄ませて、レストランに身をゆだねて楽しんでほしい。記憶に残る、最高の時間が待っている。

apothéose(アポテオーズ)

住所:東京都港区虎ノ門2-6-2 虎ノ門ヒルズ ステーションタワー 49階
電話: 03-6811-2573
URL:https://apotheose.jp/
ディナーコース: 25,000円(税込み・サービス料別)
駐車場:虎ノ門ヒルズの駐車場あり

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