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堀越良和の「クラブ選び、もう迷わせません」Vol.6
~クラブフィッティングのススメ~

スウィング向上とともに、スコアアップに欠かせない「自分に合ったクラブ選び」。とはいえ、巷には新製品があふれていて、正解にたどり着くのが難しい。また、各メーカーが特長に挙げるクラブ用語についても、一般アマチュアは知っているようで実はあまり知らなかったりする。クラブに精通する堀越良和プロにわかりやすく解説してもらい、「自分に合ったクラブ選び」をマスターしよう。

撮影協力/クレアゴルフフィールド

性能を確認したうえで購入できる

最近のクラブ選びは昔と大きく変わってきました。YouTuberがクラブの試打を行う動画をインターネットで観て影響を受けて、そのままネットで購入される方も増えていると思います。

ただ、中には数ラウンドしても好結果が出ずに中古ショップ行き…という悲しい結果に終わってしまう方もいるのではないでしょうか。

その点、量販店で購入する場合には、試打して性能を確かめたうえでクラブを手に入れることができます。さらに一歩進んで、もしほしいクラブのメーカーやブランドを決めている方であれば、そのメーカーのフィッティングを受けることをお勧めします。

もちろん、私は量販店のフィッティングを否定しているわけではありません。高いレベルでベストなクラブセッティングを提案してくれることは間違いないです。ただ、「このメーカーのクラブがほしい」と明確な意思を持っているのでしたら、そのメーカーのスペシャリストの卓越した知識に頼るのも1つの方法だと思います。多くのメーカーは有料で行っていますが、ドライバー1本の価格が10万円前後するのですから、スペシャリストにアドバイスを仰ぐことで選択ミスを回避できる可能性は高くなります。

メーカーのフィッティングなら、多彩な試打ヘッドを含めた豊富なシャフトバリエーションを活用したフィッティングが可能だ(写真:タイトリスト フットジョイ フィッティングスタジオより)

フィッターの機転で飛距離がアップした事例も

メーカーのフィッティングをお勧めするのは、身近で以下のような体験をしたことも理由の1つにあります。

私のスクールのある生徒(女性)は、長年大ヒットを続ける某メーカーのドライバー(仮にAとします)を使っていました。データを取ると、打点、ボールスピード、打ち出し角の高さ、バックスピン量、ヘッドスピード、ミート率いずれも申し分なく、キャリー160ヤード。トータルでは180ヤードくらい飛んでいました。

それでも、「もうちょっと飛ばしたい」という希望もあって、別のメーカーのフィッティングを受けに行ったのです。

Aは軽量で振りやすい特徴があるので、フィッターはそのメーカーの最新モデル(仮にBとします)の中から、軽量のものを推奨しました。
ところが、全然当たらないのです。シャフトを替えてもヘッドスピードは出ない、ボールスピードも出ない、バックスピン量もバラバラ。フィッターも頭を抱えてしまいました。

ところが最終的には、キャリーを167ヤードに伸ばすことができました。ミート率も1.48というすばらしい数値を記録します。

フィッターが何をしたかというと、ヘッドを上級者向けモデルに替えたのです。
というのも、Aはやさしさを謳ったドライバーですが、意外とヘッドが重めで、なおかつ重心距離はそれほど長くありません。シャフトの特性も相まって、フェースローテーションをしやすいモデルでした。

対してBの軽量モデルは、重心距離や重心深度の数値はAと似ているのですが、それほどフェースローテーションが容易ではないモデルでした。なので、振るとどうしても手が先に行ってフェースがスクェアに戻り切らず、ヒール側に当たっていたのでした。

そこでフィッターは、Bの上級者向けモデルを選択。こちらは軽量モデルに比べて重心距離が短いため、フェースローテーションもしやすくなる。あとはロフトを多めにすることで、打ち出し角を確保して飛距離アップを達成できました。

フィッターの深い知識がなければ、この女性は何の成果も得られないまま帰っていたかもしれません。

1発の飛びより平均値が高いクラブを

フィッティングを受ける際に大事なのは、まず何を求めているかをはっきりさせておくことです。ドライバーであれば距離を出したいのか、方向性を出したいのか。

ただし、欲を出して2つ求めるのはダメ。どちらか1つに絞ることで、クラブ選びの目的が明確になります。

もっと飛距離がほしい方であれば、計測データの中でも「打ち出し角」に注目してください。
「ボール初速」「バックスピン量」とともに、飛距離を決める「飛ばしの3要素」ですが、はっきり言うと「スピン量」はそれほど気にする必要はありません。
というのも、ボールスピードがおよそ60m/s以下だとスピン量に関係なく、打ち出し角が高ければ高いほど飛ぶというデータがあるのです。

「バックスピン量が増えると飛距離が落ちる」のは、ボールスピードが速い人に当てはまる現象です。例えば55m/sだと、スピン量が2,000回転/分でも2,800回転/分でも、210ヤード前後でほとんど変わりません。

フィッティングでは基本的に、ミスショットはカウントしません。ナイスショットを集めて中央値(平均値)を取ります。ミート率でいうと最低でも1.39〜1.40くらいで、1.2台とかのデータは削除します。そして、比較的いい数値が出やすいクラブを見つけていきます。

もし、試打のデータで、もっとも飛んだクラブと、もっとも中央値が高かったクラブが違った場合はどうするか。私の考えは「1発の飛びよりも、平均して中央値が高いほうがベター」です。
どうしても飛ばそうとすると力むので、力んで打点が芯を外れたときでも中央値に近い、ある程度の結果を担保してくれるクラブがベターだと思います。

フィッティングでのコツは、「振りにくい」「振りやすい」「ヘッドが走る感覚がある」など、自分の感想や意見をしっかりフィッターに伝えること。
「数値的にはこれがよかったが、自分の感覚としてはこっちのほうが振りやすい」と伝えれば、重めや先が動くシャフトに替えたり、ライ角や長さを変えたり。専門家であるフィッターが、数値と振りやすさができるだけ合致するようにチューンしてくれるはずです。

フィッティングを受ければ、7〜8割くらいの方が恩恵を受けると思います。残り2〜3割の方にとっても、元のクラブに戻せばいいのですから、現状より悪くなることはありません。なので、クラブ選びにはフィッティングを活用することをおすすめします。

数値と同様に重要なのが振り心地。各種データを理解したうえで盲信するのではなく、フィッターに意見を伝えて数値と振りやすさを合致させたい

堀越良和(ほりこしよしかず)

某ゴルフ雑誌社で四半世紀にわたり試打企画を行っており、「キング・オブ・試打」のニックネームを持つ。ゴルフスウィングと人体に関する研究に特化した世界有数の教育機関である「TPI(タイトリスト・パフォーマンス研究所)」の最高位「ゴルフレベル3」を取得。クラブメーカーの開発に携わった経験もある。(公社)日本プロゴルフ協会会員。クレアゴルフフィールド所属。

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