2026年3月いよいよ誕生
帝国ホテル 京都、30年ぶりの新規開業─第3代総料理長が語る“これからの迎賓”【プレゼント付き記事】
1890年、明治政府の要請を受け、海外からの賓客を迎える日本初の本格的西洋式ホテルとして誕生した帝国ホテル。初代会長・渋沢栄一の精神を受け継ぎ、135年にわたり迎賓の歴史を刻んできた。2026年3月、30年ぶりの新規開業となる帝国ホテル 京都が祇園に誕生する。その幕開けを前に、第3代総料理長に就任した杉本 雄氏に、帝国ホテルが表現する食の「今」と「これから」を訊いた。
Photo:Hiroaki Ishii
Edit & Text:Misa Yamaji(B.EAT)
135年、進化し続けている
帝国ホテルの食
1890年11月3日、明治政府の要請を受け、海外からの賓客を迎える本格的西洋式ホテルとして、帝国ホテルは日比谷の地に誕生した。初代会長は、「近代日本経済の父」と謳われた渋沢栄一。以来135年、帝国ホテルは常に時代の先を見据え、独自の解釈で食の歴史を刻んできた。
ざっと、その歴史を振り返ってみよう。開業当初から西洋のプロトコールにならい、フランス料理で賓客をもてなしてきたホテルだ。その系譜は、今もメインダイニング「レ セゾン」に受け継がれている。1958年には北欧の伝統料理「スモーガスボード」を研究し、好きなものを好きなだけ楽しむ「バイキング」スタイルを日本に紹介。1983年には帝国ホテルタワー地下1階に、本場パリのカジュアルな食文化を体現した「ラ ブラスリー」をオープンした(2024年6月末閉店)。1967年には街からふらりと立ち寄れる「コーヒーハウス」(現 パークサイドダイナー)を開店し、ホテルダイニングの敷居を下げることにも挑んだ。
そして2020年、時代の変化を敏感に察知した帝国ホテルは、ミシュランガイド三つ星の「神楽坂 石かわ」を擁する「石かわグループ」と提携し、日本料理「帝国ホテル 寅黒」をオープン。海外からの賓客を自国の料理でもてなすという新たな迎賓のかたちを示した。
2026年3月5日(木)、帝国ホテル 京都が祇園の地に開業する。帝国ホテルブランドとしては30年ぶりの新規開業。その新たな歴史の幕開けを前に、2025年4月、第3代総料理長に就任した杉本 雄氏に、帝国ホテルの食のあり方─その「今」と「これから」を訊いた。
「論語と算盤」の精神を現代に
─2025年に帝国ホテルの第3代総料理長にご就任されました。帝国ホテルは開業から135年。時代とともに「食の役割」も変化してきたと思いますか?
私は総料理長でいうと3代目、帝国ホテル 東京の料理長でいうと14代目にあたりますが、先代の料理長同様、食を取り巻く環境をしっかりキャッチしながら、帝国ホテルの食がどうあるべきかを考えています。
帝国ホテルの初代会長・渋沢栄一は、「論語と算盤」─道徳と経済の両輪がしっかり回ることで、健全な企業、健全な社会、健全な国ができ上がると説きました。そのスピリットは、今も私たちに根付いています。
食を取り巻く環境は、先代たちの頃とは大きく変わりました。その変化を捉えながら、「論語と算盤」の精神を現代に置き換え、サステナブルな考え方にも通じるかたちで食を表現していく─それが今、求められていることだと思っています。
─初代総料理長の村上信夫さん、第2代の田中健一郎さん。先代たちから伝えられたこと、そして先代があったからこそ「自分はこうしていきたい」と思われることはありますか。
村上総料理長は、実は直接一緒にお仕事をしたことがあまりありません。先代の田中総料理長からバトンを受け取ったときは、「自分には自分の時代があった。杉本には杉本の時代がある。だから、自分で考えて自分で決めなさい」と言ってくれました。これとこれをやりなさいという指示は一切なく、すっきりとバトンを渡してくださいました。
もちろん、残されたレシピや、精神は受け継いでいます。けれど、バトンを渡された以上は、今の時代に合った帝国ホテルの食を、自分で考えて発信していく。それが、今私が取り組んでいることです。
─村上信夫料理長は、NHK「きょうの料理」でお茶の間に親しまれ、フランス料理の裾野を大きく広げた方でした。帝国ホテルの料理長は、いつの時代も大胆で自由な精神を感じます。
そうですね。1890年、開業時の初代料理長・吉川兼吉は37歳でした。私が東京料理長になったのは38歳。時代の先を見据えた思い切った人事だと思います。
村上料理長がテレビでお茶の間に、まだあまり知られていないフランス料理を披露すること自体が斬新でしたし、「ぶどう酒が手に入らなければ、お父さんの焼酎かウイスキーでいいです」なんて表現もされていた。フランス料理のハードルをぐっと下げて、裾野を広げた料理長だったと思います。
当時の発信手段はNHKですけれど、私は今YouTubeで発信しています。時代に求められるものと、発信の仕方は変わっていきますが、お客さまに近い存在でありたいという思いは同じかもしれません。
大量消費の時代の先の使命
─今の時代の料理長として、テーマや重きをおいていることはありますか。
やはり3代目として、初代や2代目と違うのは、サステナブルな観点が欠かせないということです。
食材の一生を100としたら、料理として表現する時間はそのうちのわずか数パーセントに過ぎません。残りの99%は、生産現場のたゆまぬ努力や、手元に届くまでの多くの人々の想いが占めています。1~2時間かけて調理したとしても、丸々1日煮込んだとしても、食材の一生から見たらほんのわずかなのです。
にもかかわらず、料理を作って最終的な表現ができるのは私たち料理人ですから、とかく私たちが評価されがち、光が当たりがちだと感じます。そうではなくて、生産者がいるからこそ、私たちはステージに立てる。そのことをしっかり理解したうえで、その思いを込めてお客さまに届ける。大量生産・大量消費から脱却した今、料理の表現だけではなく、食材はできるだけ無駄にしないようなシステムの構築も必要です。それが、この時代の帝国ホテルの食の表現に必要なことだと思います。
─そう感じたきっかけはあったのでしょうか。
やはりコロナ禍でしょうか。コロナ禍で最も衝撃だったのは、賑わいの中心であるはずのホテルに人がいなくなったことです。
食材の需要が途絶えたことで、私たちのために作ってくれていた生産者が、廃業に追い込まれてしまった話も多く聞きました。
今まで当たり前だったことが、当たり前でなくなることを目の当たりにし、目の前にある食材が、ずっとありつづけるとは限らないことに気付きました。その食材がどうやって生まれているか、どういう生産現場で何が起きているのか、その現実にまずは私たちが真摯に向かうべきだと感じています。
食材の生まれた背景やテーマ、生産者の思いも伝えていくことが必要な時代。美味しさの上に、そうした物語をのせることが今の付加価値になるのではないかと思います。
─VIPや要人をお迎えするおもてなしのかたちも、変わってきましたか。
基本的なおもてなしの気持ちや心構えは変わっていません。ただ、「メイドインジャパン」のよさを、日本に滞在される間に味わってもらいたいという気持ちは、年々深まっています。
フランス料理だからといって何万キロも離れたところから食材を取り寄せて一皿を構成するのが果たしていいのか。海外からの要人が来られたとき、日本の食材のよさをお伝えできるのは、日本が誇る山海の恵みを、私たちがずっと守りつづけてきたフランス料理の様式で表現することだと思います。
昔は遠いところからはるばる仕入れた高級品で、料理を作ることがもてなしの象徴でした。でも今は違う。日本のお肉やジビエでも、「ここでしか出合えない」食材の風味や味わいがあれば、世界各地どこでも手に入る高級食材よりも価値がある。そう思っています。
京都でしか生まれないフランス料理を
─帝国ホテルは時代によってさまざまな形式のレストランを取り入れてきました。帝国ホテル 京都のフランス料理は、カウンタースタイルだそうですね。
お客さまとの親密な距離、コンタクト─そういったぬくもりのある空間を、食の領域で表現できるのは、日本ならではのカウンターというスタイルだと考えました。それをフランス料理の領域に取り入れたのです。
帝国ホテル 京都のファインダイニング「練(れん)」は、カウンター10席、個室1室(8席)という構成です。料理長を務める今城浩二は、帝国ホテル 大阪で開業当時からキャリアを積んでおり、関西地方の食材や生産者に強いつながりを持っています。ここでは、できるだけ京都をはじめとした国産の食材を使ったフランス料理を作りたいと考えています。
私はよく言うんですが、「フランス料理」というものの本質は、型にはまった料理ではありません。フランス料理とは、地方料理の集合体。その土地で酪農が盛んであればバターが使われるけれど、オリーブが栽培されている地域ではオリーブオイルが使われる。その土地のワインを料理に合わせる。それを総じて「フランス料理」と呼んでいるのです。
京都も同じ。京都でしか表現できないフランス料理とは、自然とともにある土地の食材を使うことだと思いますね。
帝国ホテルとして伝えていきたいこと
─帝国ホテルの「らしさ」とは、どのようなものだとお考えですか。
時代は変わっても、変わらないのは“お客さまに寄り添ってきた料理”であることです。一方的に「これがフランス料理だ」と押し付けるのではなく、お客さまとともにさまざまな料理を作ってきました。
シャリアピンステーキがいい例です。1936年、帝国ホテルに滞在していたロシア人オペラ歌手シャリアピン氏は歯を痛めながらも、柔らかいステーキが食べたいとおっしゃった。当時は今のような柔らかい和牛はありませんでしたから、薄く叩いて玉葱のジュースでマリネして、酵素で柔らかくする─そうやって料理人が考えて生み出したものです。
一方的に「これがうちのステーキです」と出すのではなく、お客さまに合わせて、お客さまと一緒に作っていった。そういう料理が「帝国ホテルらしい」料理なのだと思います。
─世界的な視点で、日本のホテルの食をどう発信していきたいですか。
フランス料理は「非日常の代表」だと思っています。その非日常に、未来を考えた道徳的なメッセージや、日本の情景を込めて表現していきたい。もちろん、食べて「美味しい」という本質は大前提です。
帝国ホテルが持つ発信力は大きいと実感しています。ホテル業界をリードできるような食を通じた発信を、これからも積極的にしていきたいですね。
杉本 雄(すぎもと・ゆう)
株式会社帝国ホテル 常務執行役員 第3代総料理長
1980年、千葉県銚子市生まれ。1999年、帝国ホテルに入社。メインダイニング「レ セゾン」に配属後、2004年に渡仏。ブルターニュのビストロに始まり、ミシュランガイド三つ星レストラン パリのホテル「ホテル・ル・ムーリス」でヤニック・アレノ氏、アラン・デュカス氏のもとシェフを務める。2012年、「プロスペール・モンタニエ料理コンクール」で日本人初優勝、「ル・テタンジェ・国際料理コンクール フランス大会」でも優勝。2017年、帝国ホテルに再入社。2019年、38歳で第14代東京料理長に就任。2025年4月、帝国ホテル 第3代総料理長に就任。同年6月、フランス共和国より「フランス農事功労章シュヴァリエ」を受章。
帝国ホテル 京都 2026年3月5日(木)開業
京都府京都市東山区祇園町南側570-289
祇園甲部歌舞練場敷地内の国登録有形文化財「弥栄会館」の一部を保存・活用。客室55室、レストラン・バー4店舗を備えるスモールラグジュアリーホテル。
フランス料理「練(れん)」:カウンター10席、個室8席、オールデイダイニング「弥栄(やさか)」:54席、オールドインペリアルバー、ザ ルーフトップ(宿泊者専用)
https://www.imperialhotel.co.jp/kyoto
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