Lifestyle

Winter 2025号 掲載記事

日本が誇る食を支える職人たち
生産者とシェフの美味リレー

向井酒造「伊根満開」×「都季」浅野哲也シェフ

日本のトップレストランのシェフたちの料理に欠かせないのが、情熱を持った日本各地の生産者から届く食材。感動する食材と出合い、刺激を受ける料理人、そして料理人たちから新たな気づきを得る生産者。そんないい関係性が、さらに美味なる料理を生み出しているのだ。今回取材したのは、京丹後で古代米の日本酒を作る「向井酒造」とその酒からインスピレーションを得て京都ならではのフランス料理を作る「HOTEL THE MITSUI KYOTO」の浅野哲也シェフ。向井酒造の「伊根満開」はどうやって生まれたのか。その誕生秘話と、その酒を活かした料理をつくる浅野シェフに話を聞いた。

Photo:Katsuo Takashima, Tadahiko Nagata
Edit&Text:Misa Yamaji(B.EAT)

女性杜氏の情熱から生まれた
どこにもない赤い酒

京都府の京丹後エリアにある伊根。

古くから漁村として栄えてきたこの村には、1階部分に船を格納する“舟屋”と呼ばれる独特の建物が海沿いに建つ。伊根湾に、まるで浮かぶように約230軒もの舟屋が並ぶ様はまるで「日本のヴェネツィア」だ。その独特の景観は国の重要伝統的建造物群保存地区にも指定され、昨今は国内外からの観光客も多く訪れるようになってきた。

そんな伊根に、デンマークの「noma」のレネ・レゼピ氏や、ノルウェーの「Maaemo」のエスベン・ホルムボイ・バング氏をはじめ、世界のトップシェフたちがこぞって注文をする日本酒がある。
1754年創業の「向井酒造」の「伊根満開」がそれだ。

「伊根満開」は一般的な日本酒とは違う。まず色が赤い。また、古酒のような風味と、赤い果物のような香りと果実味が混じり合ったような独特の味わいがある。従来の日本酒とは一線を画すその酒は、和食のみならず、フレンチや中国料理にもすっと寄り添う懐の深さがある。一度飲んだら忘れられない不思議な魅力に満ちているのだ。

立派な松の木が目印の向井酒造。母屋は築100年を越える。

この酒を造ったのは、現在杜氏を務める向井久仁子氏だ。江戸時代から続く「向井酒造」では、昔から食中に合う純米吟醸酒などを中心に醸していた。そこから、なぜこのような特別な日本酒が誕生したのだろう?そんな疑問を素直に向井氏にぶつけてみると、「実は、『伊根満開』は東京農業大学醸造学科時代の恩師との出会いで生まれた日本酒なんです」と、意外な答えが返ってきた。

向井氏は、大学3年次に兼ねてから憧れていた竹田正久教授のゼミを選択した。竹田氏は「美味しい日本酒を造るのは当たり前の時代だ。これからは、話題性のあるものを造らなければ日本酒の未来はない」と日頃から口にしていた人物。そんな竹田教授とともに、向井氏は通常の日本酒にはない手法で日本酒を醸し、その味わいのバランスなどを研究していた。ある日、竹田教授が新潟には「赤色酵母」を使った日本酒があることを知り、『古代米を使って赤い酒を造るぞ』と向井氏に号令をかけた。卒業までに研究は終わらなかったが、後輩が引き継ぎ、赤い酒は完成。しかし味はお世辞にも“美味しい”といえるものではなかった。けれど、竹田教授から「商品として売れるものにしなければ意味がない」と発破をかけられ、自分なりに古代米と白米をブレンドして味を調整。そして向井氏が24歳のときに「伊根満開」は誕生した。

古代米で醸した日本酒は前例がなく、さらに女性が造ったと話題になり、醸した約5,000本は3カ月で完売という大ヒットとなった。小さな村で誕生した酒は、少しずつ広がり、京都のバーなどで扱われるようになっていく。

杜氏の向井久仁子氏。
現在は十五代目社長の弟とともに「向井酒造」で酒造りをしている。
伊根の土地に合う古代米を探しつづけて、現在の「紫小町」という品種に行き着く。
契約農家さんに醸す分だけ育ててもらっている。
醸した酒はステンレスタンクで寝かせる。
酒の仕込みは11月から始まる。
醸造所の目の前はすぐ海。
その味に魅了された人の縁で「伊根満開」は世界へ

そんな中、転機が訪れた。京都市内で古酒を揃えるバーを経営し、日本酒の輸出を手がけているオフェル・ヨラム氏が蔵を訪ねてきて、「伊根満開」を輸出しないかと申し出てきたのだ。ヨラム氏の情熱をもった説得に向井氏は快諾。こうして海を渡った「伊根満開」が、世界の名だたるシェフたちに“見つかる”のは時間の問題だった。口コミでどんどんと広がり、気づけば「伊根満開」の10%が海外からの注文を占めるまでになったのだ。

「私は家の事情で修業もせずに突然杜氏になりました。『伊根満開』は注目されましたが、正しいことをしているのか自信がなかった。けれどある杜氏さんに『伊根満開は、常識を叩き込まれていたら造れない酒。だから久仁ちゃんは修業に行かなくてよかったよ』と言われて、救われたんです」と語る。

そんな向井氏は、今も自由な発想で酒造りをする。
「最近はからだに優しい酒造りに興味があります。今、伊根の若い子が作る無肥料無農薬の雄町米で酒を醸しているんですよ。」と新作の出来に胸を張る。「面白いと思ったら形にしたいと思うのは昔から」そう豪快に笑う向井氏が造る酒は、どれも彼女の人柄が滲み出る。それこそが世界中の人びとが魅了されてしまう秘密なのかもしれない。

現在無農薬の酒米で造る日本酒に力をいれている。右から無農薬の雄町米で醸した「おべっさん」、無農薬こしひかりで醸した特別純米生原酒生もと仕込み「世屋のひとやすみ」と山廃仕込無濾過原酒の「うらなぎ」。
「伊根満開」の酒粕を2年熟成したもの。酸味のあるチョコレートのような風味が料理人を魅了する。
向井酒造「伊根満開」を都季(HOTEL THE MITSUI KYOTO)で味わう

「伊根満開」の風味がつなぐ京都とフランス

左:スペシャリテのフォアグラには、ペアリングで「伊根満開」のにごり生酒を合わせる。クリーミーな優しい甘さが料理を引き立てる。
中央:「都季」のスペシャリテ「向井酒造の酒粕 フォアグラ」
右上:料理長の浅野哲也氏。
右下:「伊根満開」の酒粕を使ったデザート「リ・オレ」

「HOTEL THE MITSUI KYOTO」のメインダイニング「都季」で供される、「イノヴェーティブ京都フレンチ」。

メニューを考えるうえで発想の源となるのは、やはり京都の食材。「『伊根満開』の熟成させた酒粕に出合ったときに、カカオのような香りを感じました。そのときに頭に浮かんだのが、働いていたオテル・リッツのカカオとフォアグラの料理。そこで酒粕とフォアグラを合わせた料理を考えました」とシェフの浅野哲也氏。

「伊根満開」の熟したフルーツのような香りとかすかな酸味がフォアグラとよく合う。ペアリングで登場する貴重な「伊根満開」のにごりとの相性もぴったりだ。

左:二条城向きの客室は人気。
右:開放感のある「都季」の店内。

HOTEL THE MITSUI KYOTO ラグジュアリーコレクションホテル&スパ

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住所:京都府京都市中京区油小路通二条下る二条油小路町284
アクセス:名神高速道路・京都南I.C.から約25分
駐車場:あり
レクサス充電ステーション:あり
※EV充電ご利用に関する利用条件・制限、利用時間、その他注意事項は施設へご確認ください。



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