日本が誇る手仕事
「能作」の伝統を進化させ現代のライフスタイルに寄り添う錫製品
継承してきた技術に、時代を反映する感性を添えて。富山県高岡市で100年以上続く「能作」は、高度な鋳物技術を受け継ぎ、磨き上げてきた。素材を真鍮と錫へ、アイテムを茶道具や仏具からインテリア用品や酒器、食器へとシフトすることで現代人のニーズに応え、新たなファンを獲得してきたのだ。くらしに溶け込み、美しく使いやすい製品を取り揃えたブランドは、国内外から注目を集め、伝統を現在、そして未来へとつなぐ担い手となっている。
Text:Tomoko Shimizui
Edit:Misa Yamaji(B.EAT)
鋳物産業の担い手が広げた新たな素材の可能性
高温で溶かした金属を砂などで作った鋳型の空洞部分に流し込んでつくる「鋳物(いもの)」と呼ばれる金属製品。富山県の高岡市は江戸時代初期から鋳物産業の街だ。この地で大正5年(1916年)に創業した「能作」は、長く銅製の茶道具や仏具、花器などを手がけてきた。転機が訪れたのは2000年頃。自社で独自に開発した真鍮製のベルがバイヤーの目に留まり、セレクトショップに置かれたことがきっかけとなり、取り扱う素材をそれまでの銅から真鍮と錫にシフト。生活に身近なアイテムの製品化に次々と取り組んだ。素材の魅力と特性を活かしたシンプルで洗練されたデザインは、海外からも高い評価を得るように。錫という素材同様に柔らかな発想で時代に寄り添い牽引するものづくりは共感を呼び、本社工場は全国から見学客が訪れる産業観光スポットにもなっている。
柔らかな錫の特性を活かしたものづくり
通常の錫製品は硬度をもたせるためにほかの金属を加えて加工するが、能作では錫に何も加えずに製品化している。中でも柔軟性があり自在に曲げることができる錫の特性が最大限に活かされているのが“KAGO”シリーズだ。縦方向に引っ張ったり曲げたりすることでかご状に変形させ、フルーツトレーや菓子器などとして使用できるユニークなアイテムは、自分だけのフォルム、自分だけの用途を生み出すことが可能。
錫の器で“呑み”のシーンを演出
さまざまな形状のどんなアイテムにも変化する可能性を秘めた錫だが、特におすすめしたいのは、酒器だ。古くから「錫の器に入れた水は腐らない」、「お酒の雑味が抜けてまろやかになる」などと言い伝えられてきた素材だけに、その器は日本酒からビールまでもより味わい深くしてくれるはず。能作では酒の甘みやうまみを感じやすい形状にもこだわっており、人気を集めているという。また錫は、熱伝導率が高いため、器を冷蔵庫に1-2分入れることでビールやアイスコーヒー、ソフトドリンクなどを冷えた状態で楽しむこともできる。
結婚10年目の“錫婚式”に
結婚25周年の銀婚式や50周年の金婚式はよく知られているが、結婚10周年のお祝いは“錫婚式(すずこんしき)”と呼ばれることはご存じだろうか。美しさと柔らかさを併せもつ、錫のような夫婦にという願いをこめてこう呼ばれている。家族でのセレモニーで感謝を伝え合い、記念となる錫のアイテムをくらしに取り入れてみるのもよいだろう。
能作
電話番号:0766-63-0556
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