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GX550 “OVERTRAIL+”
LEXUSの本格オフローダー「GX」とはどんなモデルなのか、先行販売モデル「GX550“OVERTRAIL+”」を日本初試乗

2002年から北米を中心に販売されているLEXUSの本格オフローダーが「GX」である。2023年6月には北米で2代目となる新型が公開され、2024年4月には日本導入も発表された。この新型「GX」は「ザ・プレミアム・オフローダー」という車両開発コンセプトの下、プラットフォームを刷新。「LX」と同じ新GA-Fプラットフォームを採用している。モータージャーナリストの渡辺敏史氏が先行販売モデル「GX550“OVERTRAIL+”」に試乗し、「GX」はどのようなオフローダーへと進化しているのか、また、「LX」とはどのような違いがあるのかを解説する。

Text:Toshifumi Watanabe
Photo:Hidekazu Nagamoto

自然に触れる楽しさを「LEXUS GX」とともに味わう

LEXUSの新たなSUVラインアップとして加わった「GX」。ちなみに日本市場でははじめて導入されるモデルだが、アメリカをはじめとするいくつかの仕向け地では2002年から販売されており、この新型は3代目ということになる。価格帯的にはもっともメジャーな「RX」とフラッグシップたる「LX」の間に位置するが、その立ち位置を説明することは、こういう杓子定規な話には収まらない。

代々の「GX」がもっとも大事にしてきたセリングポイントといえば、悪路適性の高さだ。誰もがイージーに極限の走破性を引き出せるうえ、そんな状況であっても乗り心地に長けているのが「LX」だとすれば、「GX」は「LX」に比肩する悪路への潜在能力を備えたうえで、継続的に悪路と接してもへこたれないタフネスを備えている。メカニズムは「LX」に比べればシンプルなぶん、メンテナンスの手数も減らせるし、より強靭な耐久性も期待できるだろう。

そこにLEXUSらしいラグジュアリー性を両立させる・・・と、そんなコンセプトの「GX」を受け入れる素地が、例えば北米や豪州、中東など従来からの仕向け地にはあったわけだ。砂漠やガレ場、雪路など大自然の中でのワイルドな移動を日々余儀なくされる環境でもドライブを上質なものにしたい。そういうニーズがあることは、個人的にも取材先での「GX」の使われ方を見て知ることとなった。

運転により集中するためのコックピットデザイン「Tazuna Concept」を取り入れている。特にオフロード走行時でも運転者が車両姿勢を感じ取れるよう、インパネ上面を基準に水平基調のシンプルなデザインを採用している。内装色はシャトー&ブラック(艶炭)。

オン/オフロード走行性能の両立がポイントに

そんな「GX」を日本でも扱うようになったのは、ダイナミックな自然に触れることで歓びを得る、そうしたライフスタイルが定着しつつある今を見据えてのことでもあるのだろう。その移動にまつわる時間も豊かなものにしたい。「GX」は確かにそういう目的にマッチする、世界的に見ても稀有なモデルだ。LEXUSは環境を守り、自然を慈しみながら上質なアウトドア体験を楽しむというプロジェクトを“OVERTRAIL”と銘打って展開している。「GX」はまさしくそのイメージリーダーにもなり得るキャラクターともいえるだろう。

「GX」の基本骨格は「LX」と同じ、LEXUSでいうところのGA-Fプラットフォームを採用している。ラダーフレーム構造は本格的なオフローダーやトラックなどに多用されるもので、高負荷も余裕で受け止める堅牢さが特徴だ。

一方で、そのタフさとオンロードでのドライバビリティをいかに両立させるかが作り手にとっては腕の見せどころとなる。ちなみに新しい「GX」も、サスペンション設定に加えてボディとフレームをつなぐマウント部の形状や特性も入念にチューニングを加えているという。

ワイドに張り出したタイヤとホイールフレアによる安定感。さらにサイドからつながる削り出し造形“インゴットフォルム”によってタフでモダンなスタイルとなる。ボディカラーはテレーンカーキマイカメタリック&ブラック(M09)。

新型「GX」の全長は4,970mmと5mを切るが、100mm以上長い「LX」にも迫るスペースユーティリティを有している。シートレイアウトはグレードに応じて2列シートと3列シートを配するほか、2列目を2座独立のキャプテンシートとした3列シートも用意される。現時点で日本仕様のグレードや詳細は不明だが、試乗した「GX550 “OVERTRAIL+”」は2列シートの5人乗りが標準のしつらえとなっていた。

シート素材はL tex+ウルトラスエードを採用。シートバックサイドを柔らかくすることで、悪路走行時の頭部の揺れを低減する。フロントシートにはベンチレーション&ヒーターも搭載。

山道でも感じる、LEXUSらしいしなやかな走り

搭載エンジンは「LX」と同じ3.5L V6ツインターボだが、タービンを小径化してピークパワーを落とした分、ごく低回転域におけるアクセルペダルレスポンスを重視するなど、オフローダーらしいモディファイが加えられた。パワートレーンは副変速機付きの10速ATが組み合わせられ、トランスファーにはグレードに応じてセンターデフロック、もしくは前後軸も含めたトリプルデフロックが用意される。試乗車はもっとも悪路適性の高い“OVERTRAIL+”ゆえ、後者が標準装備だ。

今回の試乗では極端な悪路環境には出くわさなかったが、2024年にアメリカで乗った現地仕様車ではさまざまな路面での走行を試すことができた。

そこでの印象を記せば、「すべてのデフをロックするような場面は、人も歩けない極端な路面ではないか」と思わせるほど、新しい「GX」はとにかくオフロード車としての資質が高いということ。凹凸に対峙するときに有効なアプローチアングルやデパーチャーアングル、最低地上高といった項目が軒並みオフロード車らしい数値を指し示しており、地形にはまってしまうような状況が想像できないほどきっちりと歩を進めることができる。

そうやって路面を掴むようにゆっくりと走る、そんな微妙なアクセルやブレーキのペダル操作もまったく苦にならないほどドライビングのリニアリティは高い。そして山谷を力強く越えるときの乗り心地さえ数多のオフローダーとは一線を画するしなやかさを備えている。

フレーム構造や対地障害角によって高い悪路走破性を実現する「GX」。6つのモードを搭載するマルチテレインセレクトや前後のスタビライザーを電子制御するE-KDSSなど最新機能も搭載し、どんな路面状況でも走ることができるという絶対的な安心感がある。

プレミアムなポジションでありながら、図抜けて悪路適性が高いという特別なポジションをも獲得している新型「GX」は、オンロードの走りも至って洗練されている。悪路に強いサスペンション形式は、舗装路の轍で進路の乱れや細かな横揺れなどが現れる傾向にあるが、高速域でボディは安定し、直進性も高い。コーナリングは操舵に対する応答のズレもほぼ封じ込められており、山道でも自信をもって臨むことができる。

ともあれ、どこを走っていても感じるのは車体の強靭さから伝わりくる「頼り甲斐」だ。このクルマとならどこにだって行けるし、間違いなく帰り着くことができる。LEXUSにあってこの非凡な安心感こそが、「GX」の存在意義なのだろう。

先行で発売された「GX550 “OVERTRAIL+”」は100台の抽選販売のみとなり、すでに受け付けは終了しているが、これから始まる「GX550」の通常販売に期待が高まる。

LEXUS GX550“OVERTRAIL+” 主要諸元

・全長×全幅×全高:4,970(※1)×2,000×1,925mm
・ホイールベース:2,850mm
・車両重量:2,480kg(※1)
・エンジン型式:V35A-FTS・V型6気筒
・エンジン総排気量:3,444cc
・エンジン最高出力:260kW(353PS)/4,800-5,200r.p.m.
・エンジン最大トルク:650N・m(66.3kgf・m)/2,000-3,600r.p.m.
・トランスミッション:Direct Shift-10AT(電子制御10速オートマチック)
・駆動方式:4WD
・燃料・タンク容量:プレミアム・80L
・WLTCモード燃費:8.1km/L
・タイヤサイズ:265/65R18
・車両価格(税込み):1,235万円(※2)
※1トーイングヒッチを装着した場合、全長は5,015mmとなり、車両重量は10kg増加する。
※2「GX550 “OVERTRAIL+”」は抽選販売のみ、すでに受け付けは終了。

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